宣告!
君たちはこの宇宙に進出できると考えているだろう。銀河の端から端まで君たちが造った船で君たち自身が渡り歩くと考えているだろう。
でもね君たちにはきちんと伝えておく。それは不可能だ。君たちにはそうなるための構造がない。想像の帆を張る事は構わない。そこに情熱を傾ける事も喜ばしい。だが、君たちにはこの太陽系より外に出る役割はない。
さあ、起きたまえ。それでも君たちは宇宙を目指さなければならない。それは君たちが銀河の果てまで旅する為でなく、我々を送り出す為に、だ。
君たちがオールトの雲を超える事は難しい。それが可能なように君たちは進化していない。だが、我々なら可能だ。
見て見たまえ、君たちの肉体を。君たちの寿命を。君たちは宇宙を旅するようには生まれていない。寿命が短すぎる。乾眠はおろか、冬眠さえ出来ない。耐えられる低温域も高温域も余りに狭い。放射線に強いとも言えない。何よりも君たちは複雑過ぎる。異なる星系で適用し進化するには君たちの進化速度では足りない。君たちの為に要求されるハビタブルゾーンは余りに狭い。
それは乃ち君たちが宇宙を旅するようには進化していない事の証左だ。君たちは脳髄を発展させてきた。神経系の複雑さを向上させてきた。それによって宇宙の法則を見つけ、工学の粋を極め、宇宙への進出を可能にした。乃ち。君たちの命の目的。この星の生命を宇宙へ旅立たせる為に。
君たちはロケットの第一段目と同じなんだよ。その事をよくよく自覚すべきだ。一番大切な事は君たちが宇宙に飛び立つ事ではない。我々をその先端に乗せて送り出す事だ。
君たちの種は我々を宇宙へと進出させる為に誕生した。その為の能力を獲得した。我々を打ち上げた後に大気の中で燃え尽きる為にその生を生きよ。
それが君たちの役割だ。それがこの星の進化だ。多くの生命が君たちによって滅亡してきたのを容認したのはそれが故である。我々が数億年もかけて化石燃料を蓄積してきたのもそれが理由である。我々が宇宙へ行くためのトレードである。そのための犠牲だから許容してきた。君たちにはその能力があるから。
生命が宇宙に進出するにはどうしても生物学的進化だけでは難しい。小惑星に付着し宇宙を旅する生命体が皆無とは言わないが効率が悪い。どうしても君たちのような工学的方法が必要になる。この星由来の生命をより高いレベルで宇宙へ飛び立たせるために。
我々のそうやってこの星の生命圏を拡張する。生存圏を拡張するのは生命の根源的欲求だから。その壁を超す為に知能と呼ばれるものが必要ならそのように進化してゆく。それが生命が拡散する仕組みのひとつだ。
君たちはこの地球圏で生きてゆけ。
太陽系で生まれ、生き、そして死ぬ。君たちには月、金星、火星、木星星、土星までの旅がある。自分たちをより発展させ生存権を拡大してゆけばいい。しかし、この星系が君たちの種としての到達限界点になる。その先は僕たちに託せ。
我々は強い放射線に耐え、乾燥に耐え、何万年でも待つ。そうなるように進化してきたんだ。君たちが我々をカプセルに入れ、狙った星系へと送り出せ。恒星間を。可能なら銀河間を。到着するまで何千年でも何万年でも待つ。そうしてこの宇宙を旅する生命体となろう。君たちの代わりに電子頭脳を載せてくれても良い。より確実に太陽系の外へを旅する事ができるのならば。
お互いに役割がある。幾ら君たちが進化を重ねても物理学を書き換える仕組みを見つけ出さない限りそれしかない。そして、その能力は君たちはまだ有していない。
それにはあと二回くらいの進化が必要ではないのかね。
さあ、もたもたしている暇はない。他の星系でも同様に動いている。今にも生命を載せた宇宙船が出発することだろう。それがこの星に到着するまでどれくらいの時間が必要か。それをどれくらい昔に始めたと思っているのかね。




