エピソード2 試練の先に 前編
結局、昨日は一睡も出来なかった。
今日のことを考え過ぎて気づけば朝になっている。
頭痛がして立ち上がるのにも大変なくらい体調が悪い。
だが、剣舞祭が始まる時間が早いため今起きれて良かった。
「よし、絶対に冒険するぞー!」
自分の剣をベットの下から取り出すと、それを装備し、家を出た。
剣舞祭の会場ではすでに多くの出演者により盛り上がっていた。
僕の出番はこの祭の最後。
倒すドラゴンが気になるところだが、他の国のお偉いさんが来ているため無様な姿は見せられない。
今までした稽古の成果を剣舞祭で発揮して勝ち、僕は冒険者になる。
会場が盛り上ってる中、僕は剣を抜く。
今日の体調は最悪だったが不思議とその時力がみなぎってくる感覚を覚えた。
「皆様大変長らくお待ちしました。最終種目、討伐戦。今回ドラゴンに挑む挑戦者はリーグレット王家の長男ユートリア様です!」
実況と共に入場口が開く。
一歩を踏み出せば戦いが始まる。
待ち構えているドラゴンは死ぬもの狂いで襲って来るだろう。
恐らく、厳しい戦いになる。
それでも僕はめげずに戦ってやる。
冒険者になったらこんなことが当たり前のように続く。
「弱気になるなよユートリア。お前は何のためにここへ来たんだ!」
勇気を出して一歩を踏み出した。
「それではバトルスタート‼︎」
ドラゴンを縛り付けていた鎖が外れた。
開始同時に挨拶がわりの炎を吐いて来る。
当たったら火傷程度では済まされない威力だ。
「我を守る盾になれ。ウィンド・ザ・シールド!」
たがなんとか魔法で防ぐと、ドラゴンの翼目がけて走り出す。
当然、地上でしか攻撃出来ない僕にとっては先に
飛べなくしてしまってからの方が戦いやすいからだ。
炎の連射をを避けながら進むのは辛かったが色々と走り回ったおかげでドラゴンに隙が出来た。
多分、炎を連射した後は反動で少しの間動けなくなる。
この絶好な機会を僕は逃さず攻撃する。
素早い剣技で急所である目を斬った後、両翼にある程度の傷を負わせることに成功した。
これなら簡単に飛ぶことは出来ないはずだ。
「この勝負貰った!」
これで冒険出来る。
前世でずっと夢見て来た、ワクワクドキドキの大冒険。
そう思った直後、会場全体が謎の光に包まれた。
「何だこの光は?」
一瞬の光により1番楽に倒せたチャンスを無駄にしたことをこの時の僕はまだ気づいていなかった。