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第4話

 まさに降臨という表現がふさわしい現れ方をしたその少女は、あたりを見回しながらこちらに向かってきた。まるで体重などないような、軽やかな足取りだ。まあ、天使なんだから体重は無くともおかしくはないが。


「こんな下郎のために、下界に落とされるなんて、私も落ちたものね」。彼女はこちらを睨みつけながら、透明感のある澄んだ可憐な声で俺を罵倒する。


「お前が『その他の名もなき天使』なのか」。おれは神様に聞いたままのことを尋ねたんだが、彼女はぎゃーぎゃーわめきだす。


「『その他』ってゆーな。天界の使徒なんだから敬ってひれ伏しなさい。なまえはちゃんとあるわよ。アルミサエルよ」。彼女は、確認できないがたぶんそれほどはなさそうな胸を張っていう。


「アル、アルミサ? それでお前は何ができるんだ? おれはこれから悪魔祓いに行かなければならないんだが、この間の要領でやればいいのか、アル」


「勝手に名前を略すなっ。前回悪魔を払ったのはお前の力ではない。もともとお前の持っている力を神が増幅したのだ。私は神に代わってお前の力を増幅してやるために派遣されたのだ」


「お前自身はどんな力を持っているんだ、天使なんだからなにか異能を持っているだろう」


「え」


「オリジナルの能力だよ」


「それは」と、アルはなぜか恥ずかしそうに小声でぽつりという。「……」


「え、なんだって?」。難聴系の聞こえないフリではなく本当に聞こえない。


「……お、お産を助ける能力よ」


「この際、何の役にもたたないじゃないか。ずいぶん特定のシチュエーションにのみ特化した能力だな」


「うるさいわね、医学の発達していない今の世界では、重要な能力なのよ」。どうも、増幅の力だけをあてにするしかなさそうだ。


「それはそうと、この世界でおれは延々と悪魔祓いをし続けなければならないのか。キリがなさそうなんだが」


「この地域の棲神寄生生命体のボスを倒せば、ひとまず悪魔憑き事件は防げる。でも、奴らは次々にやってくる。彼らは天界での戦争で天使軍に追われていて、この未開の地球に目をつけたんだわ」


「とりあえずカンナの親戚のおじさんを助けに行こうぜ。森にいるそうなんだが、詳しい場所はわかるか」


「精神寄生生命体特有の波動で、大まかな場所はわかるわ、4、5人とり憑かれた人がいるようね」


「じゃ、さっそくいこうぜ」と、俺はアルに案内させ森に向かう。アルミサエルは覚えにくいのでアルにしておこう。


 岩ばかりのナザレでは、珍しくその森はうっそうと草木が生い茂っている。俺は、アルの後について道なき道を進んだ。


「いる」と、アルは俺を制し、音を立てないようにと目配せしてくる。


 アルが見ている方向に目をやると、4人の男たちが無表情にたむろしている。


「精神寄生生命体はまだ様子をうかがっているようで、地球には10体もいないわ。しかし地球に目を付けているのは確か。ナザレにとどまっているうちに地球在住の人間は手ごわいと思わせないと」


「宇宙からの侵略者かよ。そんなのを相手に、わが地球軍の兵力は俺とお前だけかよ」


「天界では総力戦が繰り広げられている。こんなローカルな惑星に天使軍の兵力をさくことはできないわ」


「ひょっとしてお前は天使軍で役に立たないから地球に派遣されてきたんじゃないのかぁんぐっ」。アルのひじ鉄が俺の顔にめりこんだ。天使というのは実体があるのか?


「この森にはあの4人だけのようね。彼らの悪魔祓いをしてから、この地域を統括するボスを倒しにいくわよ」と、鼻血を出して涙目の俺にいう。


 早速俺はかめはめ波のポーズをとり、頭の中に光を想念する。悪魔憑きの彼らもこちらに気が付いたようだ。アルよ、力の増幅を頼む。と、アルは何かを察知したようだ。


「ヤコブさんの奥さんのお産が始まったようね。いけない、難産だ、助けに行かないと」


 アルはすっと消えてしまった。って、おい、この状況ですべてを放っていくのかよ。

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