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プロローグ

 俺が2000年の代日本に生きていた日本人だった、という記憶を取り戻しはじめたのは12歳の時だった。今は14。ほぼ記憶は戻り、むこうにいた時と同じ年になっている。当時は記憶の混乱で周囲におかしくなったと思われていたが、やっと最近落ち着いてきた。12までの自分と記憶を取り戻してからの自分。なんとか折り合いをつけて今はほぼ元の世界の人格だ。そそっかしく落ち着きのない性格も向こうにいた時のままだ。女になっていたらもっと混乱していただろうが、幸いこちらでも男として生まれた。


 なんでこんなことになったんだろうな。元いた世界で俺はわりかし小説を読む方だったんで、異世界ファンタジーも結講よんでいた。俺はトラックかなんかに衝突したんだろうか。その辺のところはあいまいだ。でもWEB小説の異世界ファンタジーはなんでお決まりのようにトラックなんだろうな。

 思考言語は日本語。12歳まではこちらの言葉で考えていたが、元の世界のことを考えるにはこの世界の言葉では言い表せないことが多いので、自然と日本語で考えるようになった。


 今いる世界は農業を基本としているようで、こっちのとーちゃんは畑を耕しつつ鋤や鍬などを作って生計を立てている。この地の人々はこの地ををナザレと呼ぶ。なぜかこの世界は聖書の記述とあちこち符合する。文明度は低く、それこそ聖書の時代のようだ。12歳まではこちらの世界の人間として生きてきたので、生活の不自由さはあまり感じていなかったが、記憶を取り戻してからはテレビやスマホがない喪失感に悩まされている。ゲームもしたいしとーちゃんかーちゃんにも会いたい。文明が恋しい。元の世界に帰りたい。が、12歳までの記憶がなくなったわけではなく、こっちのとーちゃんかーちゃんへの愛着もあるので複雑だ。


「おい、ヨシュア、ぼうっとしてないで、仕事に行くぞ」。とーちゃんの声がが俺を現実に引き戻す。ヨシュアとはこちらでの俺の名だ。かーちゃんのことがあったからひょっとして俺はこの世界でキリストに生まれ変わったんじゃないかとも妄想したが名前からいうと違うようだ。かーちゃんはマリャームという名だしとうちゃんはイオシフだから偶然だろう。


「お前は頭はいいのか知らんが、時々どこか別な世界に行っているような目をしてる。しゃきっとしろ。今日は裏手の家から寝台づくりを頼まれたから、そこの板を2枚もってついてこい」


 この世界では大人も子供もなくみな働いている。ブラック企業ならぬブラック異世界だ。おれはあわてて板を持って、道具を担いで出かけようとするとーちゃんについていった。

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