42.5 売店開店当日譚(別視点)
今回は、商務係の片倉さん視点です。
1512年7月1日(別視点)
「今日はいよいよ開店日です」
「そうですね、頑張りましょう」
私は片倉。公務班商務係に在籍する、マスターを愛するごく普通の旗ヶ野領使用人です。今は仲間とともに、水谷村の直営売店で待機しています。
「片倉さん、時刻は今いかほどですか?」と、川口さんが聞いてきました。
「そうですね…午前8時、明けの5つ半です。開店は午前9時からなので、あと1時間といったところですかね」
右の胸ポケットから懐中時計を出して答えます。この懐中時計が結構便利で、和時計と洋時計を折衷させた和洋折衷時計となります。以前から細々と出回ってはいたのですが、本格的に屋敷内の売店に並び始めたのは、4月の下旬頃からです。特に商務係という立場から、外に出向く事も多いので、この和洋折衷時計はとても重宝しています。
といっても、もしかしたらこの和洋折衷時計、比較的早い段階であまり使わなくなるのかもしれません。というのも、この店が洋式時間で営業時間を管理しているからです。
つまり、夏であろうと冬であろうと、全く同じ時刻に店が開き、全く同じ時刻に店が閉まり、結果として全く同じ時間店が開いている、という事です。朝9時開店で、夜の7時には閉まるので、10時間営業でしょうか。勿論、このような開店スタイルにしたのには、理由があります。
不定時法は、実際の生活リズムと時刻の感覚を合わせられるので、とても便利な時刻基準です。冬はスローに始まり、夏は暗くなるまで働ける、という労務管理方法は確かに魅力的です。しかし、その労務管理方法は、かなり危険を孕んでいます。
というのは、『夏と冬では時間の長さが異なる』という事です。今は使用人の中だけで回っているので良いのですが、これからアルバイトさんやパートさんを雇った時、同じ(洋風)時間でも、夏の方が時給が安くなってしまうという事になってしまいます。
これを解決する手段としては、夏と冬で給料を微妙に変える事も考えられますが、それでも、不定時法では毎日時刻が変動してしまうので、そうするとまた微妙に給料が変わってしまいます。かといって、毎日微妙に違う給与制度を導入するのは非現実的です。それを考えると、定時法で管理したほうが良い、という結論となりました。
といっても、私としては不定時法でも十分だと思いますけどね。そんな一分一秒の労働に、細かく考える必要が無いです……少なくとも神造人間に関してだけ言えば。そして、商務班としては今のところ外部の方を雇う計画は全く立てていません。
さて、そんな事を考えている間にも、刻々と時は流れています。といっても、それまでにする仕事というのは、実はあまり多くありません。一応、午前6時に行った商品数のチェックをもう一週分だけやってしまおうかと思います。
「わかば、ひびき、のぞみ……」
新幹線か、もしかするとたばこかと思うような名詞の羅列でしたが、これは石鹸です。ec産品というのは、レベルや番号によって機能がだいぶ異なりますが、その番号をそのまま商品棚に載せてしまうと、あまりに無機質といいますか…ともかく、そういう訳で少しでも有機的な印象を持ってもらおうと、銘柄を付ける事にした訳です。あと、銘柄を付ける事で、それぞれの銘柄にファンをつけようという戦略でもあります。
「そろそろ開店しまーす」
川口さんの声で、意識を引き戻されてしまいます。時計を見ると、確かにもう開店3分前です。急いで持ち場に戻り…
「いらっしゃいませ」
開店しました。さて、お客さんは果たしていかほど来るのでしょうか。
次回更新日は未定です。申し訳ありません。




