表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ec経済観察雑記  作者:
56/66

42 通称ゴルフペン

1512年6月28日


「ゴルフペンってありますよね」

「あの、アンケートとかに答えるための鉛筆ですか」

 平凡な一日が、今日も始まる。


 さて、今日はいつも通り、本棟1階執務室からお届けしている。ゴルフペンについて話を振ってきたのは、第二秘書班の牧野さんである。


 ゴルフペンといえば、クリップのついた小さい使い捨て鉛筆の事である。僕自身、ゴルフペンを使ったことはあっても、文具店で買ったことも、いや見かけた事もない。そうすると業務用なのだろうか。

「ゴルフペン、使い方によっては、色々活用できそうな気がするんですよね」と牧野さんが言った。

 確かに、使い捨て可能な鉛筆というだけで、かなり幅広い用途がありそうな気がする。


「ところで、日本ではどんな用途で使われていましたっけ。アンケート記入時には見たことありますし、『ゴルフペン』というからにはゴルフのスコアの記入にも使われていたんでしょうけど、他の用途があまり思い浮かばないです」

「例えば、ボウリングのスコア記入とかにも使われますね。後はマークシートの記入のためですか。競馬場まで行けば、馬券売り場で見かけることが出来ます」

 馬券売り場か。確かに、大量の紙を書いてもらうことを処理したい時は、普通の鉛筆より優れているだろう。


「ところで、普通の鉛筆と比べた時の、ゴルフペンの長所って何でしょうね?」と、これは同じく秘書班である小池さんの発言。

 そう言われてみると、何だろう?経済性は間違いなく悪いと思う。

 鉛筆が削れば何度でも使えるのとは対照的に、ゴルフペンは一回使ってしまったら、次からは満足に書くことが出来ない。同様に、一回使ってしまったら大量のプラスチックごみを発生させてしまう事から、環境にも良くない。その上で、何がメリットになりうるのだろうか?


「とにかく使い捨てに便利、という事でしょうね。一人が継続して筆記しようとしたら、当然ゴルフペンより鉛筆の方が経済的だと思います。でも、多くの人が一度に筆記用具を必要としている状況だと、一人ひとりに鉛筆を配布するより、ゴルフペンを配布したほうが、安く全員に筆記用具を行き渡らせる事が出来ます」と、同じく第二秘書班の篠井さんが答えた。


 なるほど、確かにそれはあるだろう。ゴルフのスコアカード記入はともかく、少なくともアンケート記入の時に一斉配布されるゴルフペンに関して言えば、そうしたメリットは最大限生かされているだろう。1本あたりのコスト的な意味ではね。


「鉛筆だと、使いまわす時に一々削り直さないといけないですからね。あとは長さも不揃いになってしまうので、見栄えもあまり良くないです」と、こちらは牧野さん。

 コストの問題以外だと、そうか見栄えの面があるのか。確かにアンケート記入とかの時には、見栄えは回答率に顕著に関係してくるだろう。アンケート記入環境が良くなければ、それだけでアンケートにも目を通して貰えない事は十分ありうる。


「後は清潔感の問題もあるかもしれませんね」と、これは第二秘書班の福山さんの発言。

 清潔感、か。使い捨て特有の清潔感は何事にも代えがたいものは確かにある。例えば、注射器なんかはそうだろうか。


 注射器は、かつて洗って繰り返し使われていた。でも、それだと血液感染するタイプの病原菌にめっぽう弱い。そのために考案されたのが、使い捨て注射器である。一見無駄なように見えるが、病原菌を完全に除去するためにかかる資源、例えばそのための薬剤や水、洗うためのエネルギー量を考えれば、むしろ使い捨てた方が環境にも優しいらしい。

 もちろんそうして使い捨てられた使い捨て注射器は、適切に処理しないと汚染が広がり大変な事になってしまうのだが。で、ゴルフペンにも同様の事が期待できる…のかもしれない。


「そういう訳で、ゴルフペン、かなり活用の方法がありそうな気がするんですよ。ここは増産をご検討してはいかがでしょう」と、牧野さんが言った。

「うーん、でも、環境負荷を見過ごす事は出来ませんね。さすがにもったいなすぎると言いますか」

 そう言ったのは小池さんである。確かに彼女の言う事ももっともだ。

 いくら使い捨てのほうが環境負荷が少なくなる時がある、といってもそれは医療廃棄物などの特殊な例だ。こと文房具に関しては省資源にはならないのでは無いか、と考えるのは自然である。


「じゃあ、例えばこんなゴルフペンはどうでしょうか」

一つの思いつきが、新たなゴルフペンへの創作へと向かわせる。


[ゴルフペン Lv10

 先端が短くなると芯を足すことが出来るゴルフペン。実は、プラスチックの中に鉛筆の芯が仕込まれており、その芯を使って、従来のゴルフペンの約5倍長持ちする。]


 ゴルフペンの経済性の悪さは、ひとえにプラスチックと黒鉛のバランスの問題に還元されると思う。つまり、同じ大きさのゴルフペンで、もう少し芯の量さえ多くなれば、環境負荷の問題はかなり改善されるのではないか。この改良型ゴルフペンでは、いわゆるゴルフペンの軸部分にたっぷり芯を詰めているので、かなり持ちは良くなっているはずだ。


「なるほど、その手がありましたか。ところで、芯を出す時にはどうすれば良いのですか?」

 納得しながらも質問を挟んだのは、牧野さんである。

「実は、この軸、ひねる事が出来るようになっていまして」

 そういって、僕は右手を上げ、先程錬成したゴルフペンの軸をひねった。逆ネジの方向にひねると、見る見るうちに鉛筆の芯がせり上がっていく。


「なるほど、口紅の要領ですね」

 福山さんが唇に口紅を塗る仕草をした。実際その通りで、このゴルフペン、口紅やリップクリームを取り出す時の仕組みを大いに参考にしている。

 縦方向に少しだけ動かすのは難しいが、そこにネジのギミックを入れてやることで、横方向に少しアバウトに動かしても、軽い力で簡単に微調整する事が出来る。結局、便利に使うためにはある程度のアバウトさが必要だったりするものだ。


「これで、少しだけゴルフペンが長持ちすると思います。今まで2cmほどしかなかった芯が、最長で5,6cmも持つわけですから」

 単純計算で3倍、持ちが良くなっている。長期的な使用では、十分にその効用を発揮できるようになっている事だろう。


「あるいは、こんなものはどうでしょうか」

 そういって秘書班の峰栄さんが取り出したのは、短いペンのようなものだった。

「これ、クリップはそのままに、鉛筆では無く、ボールペンにしたものとなります」

 ボールペン、か。その発想は無かった。確かに、クリップさえついてれば何も鉛筆である事にこだわる必要は無いわけだ。峰栄さんが出したそれは、どうやら僕が黒鉛を仕込んだ所にインクを仕込んでいるらしい。


「そして、インクがなくなった時にはこれを詰め替えれば良い訳です」といって彼女が取り出したのは、普通のボールペンの詰め替えインクよりはいくらか短いものだった。

「これをここに入れてやる事で、使い捨てる事なく継続的に、一本のゴルフペンを使い続ける事が出来る訳です」

 なるほど、それは確かに便利だ。足りなくなったインクの交換が手間なだけで、他に関してはもう解決されたといっても過言ではない。見た目が変わらない、というのは、再使用の事を考えれば、かなり便利な事だ。従来のゴルフペンでは出来なかったような使い方も、このインク式ゴルフペンで可能になるかもしれない。



「良いですね、これ。早速作ってみます」

 そう言ってゴルフペンを受け取り、急ぎ錬成した。


[ゴルフペン Lv50-3

 クリップのついた、使い捨てや持ち運びに便利なペン。従来のゴルフペンは、『ゴルフペンシル』とも呼ぶべき、鉛筆を改良したものだったが、インク式にすることで、名実ともにゴルフペンとする事を実現。インクは、和紙洋紙いずれにもよく発色する、お肌に優しい成分が使われている。]


「そうです、こんな感じです」

 新たに錬成されたゴルフペンを見て、峰栄さんが感嘆した。そして手に取り、洋紙に書いて書き味を確かめていた。

「…ええ。紙が良いのもありますけど、書き味は良いですね。使い捨てにするには勿体無いくらいです」

「それでは、なおの事インクを交換して使い続けないといけませんね」

 これは、次回の島木屋さんの訪問の時、有力な商材となりそうだ。

 そんな事を考えつつ、平凡な一日が終わっていった。




 ところで。


 今回は、ゴルフペンの他に、シャーペンを作った。シャープペンシルは、本体も名称も日本生まれらしい。今回作ったゴルフペンが、インクの交換という形で使い捨て問題を解決したとするならば、シャープペンシルは、芯の交換で使い捨て問題を解決している。もちろん、シャープペンシルを作ったという事は、これも作ってある。


[シャープペンシルの芯 LV12-108

 書き味抜群のシャープペンシルの芯。Bと2Bの間を3:7に内分したくらいの硬さで、書き味はバランス良く、少し濃いめ。ただし、書き味とは無関係に折れにくいようになっている。色は黒。]


 いままで、Lv数の方を増やす事はあっても、その後のマイナーチェンジ数をこれだけ増やしたのは久しぶりな気がする。Lv数がタテへの進化を表すとするならば、マイナーチェンジはヨコへの進化を表す。Lv数が大きければ、それだけ単純に優秀である事を示すが、マイナーチェンジの数は、今までの多様なec産品を暗示させるわけだ。

 Lv12-108のシャープペンシルの芯を作るまでには、他の107種のシャープペンシルがある、という事である。まあ実際問題、例えばこの108なんて、完全に僕の好みの書き味を追求した結果なだけで、これを全部流通させる事はしない。種類を増やせば増やすほど、規格化が面倒くさいからね。

いつもお読み頂き有難うございます。


20170804追記 一身上の都合により、一旦ここで中途半端ですが切らせていただきます。大変申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ