36.5 鶯屋でのプレゼンテーション(別視点)
今回は鶯屋事務方の宮助と鯛郎視点です。
1512年6月4日(別視点)
「…という原因が考えられます」
「…それは看過出来んな」
ここは鶯屋、中央会議室。
さて、ここで見知った顔は誰か、といえば、宮助と鯛郎であろう。二人は、この中央会議室で、鶯屋の幹部たちを前にプレゼンテーションを行っていた。
宮助と鯛郎は、以前の聞き取り調査によって、鶯屋の売上急降下の原因が、単純に同業他社の出現によるものだけでは無いことを発見した。実はその後、鶯屋以外の店舗…例えば茶屋などにも聞き込み調査をはじめて、そこで危機感を確信へと変えた次第である。
そして、その危機感を共有すべく、早急に会議…社内ミーティングとでも言おうか…を開いた次第である。幹部という幹部は皆、この会議室であぐらを…比喩的にでは無く、物理的にあぐらをかいていた。
「…つまり、島木屋の販売攻勢ではなく、我々の販売手法に問題が有る、と」
そう言ったのは、今の中島皇国では珍しい、眼鏡をかけた神経質そうな男であった。
この男、事務しかやらないような線の細い見た目に反して、この大橋店での営業計画を一手に担ってきた、実力派の営業畑である。奥で十露盤をはじくよりも、現場に出て指示をする方が好きな人間であるが、持ち前の完璧主義故に、ビジネス倫理が見えなくなる。
「いえ。勿論、島木屋の販売攻勢が激しいのは確かであり、最近の売上高急降下の直接的な原因は、島木屋とみて間違いありません。しかし、我々の販売手法の問題も一定程度あると見るべきでしょう」
宮助は、その神経質そうな男に臆することなく、自らの見立てを発表した。この見立ての肝は、あえて全ての責任を内部体質に求めなかったところだ。これで、敵を外部に作りつつ、幹部を内部改革に向かわせる事が出来る。
「…なるほど。まずやる事は内部改革、と」
「そういう事になります」
その言葉に、神経質そうな男は、重く頷いた。そしてその反応に宮助は手応えを得る。
しかし、彼は一つ大きな勘違いをしていた。彼が思っている以上に、この問題は深刻である、という事を。
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