25.5 盤上の将軍と領内の将軍(別視点)
今回は、前話を楠木文視点で補足します。
1512年4月27日(別視点)
「…それでだね」
私、楠木文は、久しぶりに充実した時間を過ごしていた。ちゃんと一日中話し込むのは10年振りの旧友と、何気ない話をだらだらと続けていた。
10年前、ここに飛ばされた時、ここはまさに戦国の世といって良かった。まあ、戦国時代であるのは今でも全く変わっていないのだが、そこに違うと言わしめる要素があるとすれば、それはこの大橋城の情勢だろう。
当時、ここ大橋一体を統治していたのは、小師岡氏の尚文であった。しかし、公家出身という事もあってか、政治上の失策は数えられない程であった。そして、この領地はそんな状況であるにも関わらず、半島の付け根という事もあり多数の方面からまさに攻められようとしていた。
その時、クーデターの動きが勃発。それを聞きつけた私達は、その戦力を目論む事にしたわけだ。そして、そこからの描写は多分もの凄く長くなるから割愛するけど、とにかく私はその業績と能力が認められ、軍の方で将軍を務めている。そして、10年経った頃、暖ちゃんが飛ばされたわけだ。
そして、海ちゃんから呼び出されて、暖ちゃんところの使用人さんと将棋を打つことになった。
専用インターフェースを操るには慣れが必要だったが、最近は本当に手足のように使えるようになった。そして、そのインターフェースは将棋においても遺憾なく発揮されていた。
自分の駒の配置がどうで、相手の配置がどうで、利きがどうで、とかが手に取るように分かる。だが、中盤以降厳しい戦いを強いられ、終盤までその劣勢がついえる事はなかった。
これは強敵だ、と強く感じた。オーラだけでなく、データ上でもそれが物語られている。そして、私はついに投了した。見た目上接戦に見えるが、実質的に私の完敗だ。
…とりあえず、暖ちゃんを…暖ちゃんの使用人さん達を、敵に回さない事を決めた。出来るだけこの二者間でのいざこざは起こしたくない。ついでに能力も研磨しないといけない事を再認識した。
「それで、湯島聖堂というところがね…っと、おや?」
「…zzz」
「ああ、すみません。これは完全に寝ていますね」
そんな事を考えつつ、ついつい遅くまで話し込んでいたら、いつの間にか暖ちゃんが寝ていた。まあ、子供はもう寝る時間か。
しかし、寝顔が可愛い。この顔で中々えげつない事言うんだよね、暖ちゃん。
「では、我々はお暇します。ありがとうございました」
「有難うございましたー」
「また来てくださいね」
私と海ちゃんで、お姫様抱っこされた暖ちゃんを見送った。…本当様になってるな。
いつもお読み頂き有難うございます。
今回は若干短いので、次回更新は6/10に致します。




