25 盤上の戦闘
1512年4月27日
「行きますか、大橋城」
「そうしましょうか」
平凡な一日が始まる。
さて、今日は一週間前に交わした約束を忘れないように、大橋城まで行くことにする。
『大橋城』という単語は、何も天守閣だけをさして言うのでは無く、その近辺の役所一切を合わせて「大橋城」という。なので、立ち位置としては、皇居よりも霞が関に近い概念だと思う。もちろん双田さんとか有木さん等の大橋城サイドは大橋城で寝泊まりしているので、一概に霞が関の機能だけを持っているわけではないが。
「とりあえずお茶菓子ですね。何が良いでしょうか」
実際大橋城に、業務以外の用事で出向くとなると、お茶菓子の一つや二つは持っていく必要があるだろう。といっても、お茶菓子を持っていく経験など数えるほどしかした事が無かったので、女中の貝塚さんに聞いてみる事とする。
「そうですね…和菓子に関しては、避けたほうが無難かもしれません。領主という立場上、和菓子は結構な頻度で食べているでしょうし。それなら寧ろ、洋菓子の方が良いかもしれません」
なるほど。それは理に適っている。とりあえず簡単な洋菓子を持っていこう。いや、もっと凝った洋菓子の方が喜ばれるのかな。簡単だけど、凝ったような洋菓子…となると、これしかあるまい。
[マカロン Lv28
良い小麦粉やクルミを使ったパリ風のマカロン。日本で『マカロン』といった場合、大半はこれをさす。サクサクした食感が美味しい]
「これを持っていくのはいかがでしょう」
日本のお菓子屋さんで見たマカロンが、とても印象に残っている。その色鮮やかな外観は、雨の繁華街を明るく照らしていた。今回作ったマカロンは、その繁華街で見たマカロンをモデルにしている。
「マカロン、ですか。悪くないと思います。お洒落ですし、何より食べやすいです。製法はあまり簡単とは言えませんが、この世界での洋菓子のファーストコンタクトとして上々でしょう」と、貝塚さんが答えた。
あまり簡単な洋菓子にしなかったのには理由がある。
まず一点目は、簡単な洋菓子なら、すでに双田さん達がある程度再現しているのではないか、という事だ。
既に作成しているのであれば、あえてそれを持っていく必要はない。勿論再現度はどう高くないだろうから、ちゃんと美味しいものを持っていけば喜ばれるだろうが…それよりももっと意外性があるかな、と思い選択した。
二点目は、菓子職人への刺激のためだ。
恐らく、双田さんはこのマカロンの味を知ってしまったら、領内の菓子職人に、似たような菓子の製作を提案、もしくは指示するだろう。そうなれば大橋領の新たな名物にもなるだろうし、それで砂糖や卵、その他素材を大量に必要とするようになれば、こちら側の利益にも適う。
「では、持っていきましょうか」
お茶菓子としては、12個もあれば大丈夫だろう。2でも3でも4でも割れるから、手土産の数は12の倍数が一番都合が良かったりする。
「それでは、出発しても宜しいでしょうか?」
公務隊の鵜飼さんが、報告用のレポートを持って聞いてきた。
「ええ、お待たせしました。出発しましょう」
こうして、駕籠場に向かっていった。
「暖ちゃん、久しぶり」
大橋城に到着して、しばらく歩いたら、最初会った部屋…そこそこ広めの和室で、品の良い庭園、屋上庭園というか中庭がある、すっきりした応接間に、双田さんがいた。
「お久しぶりです。あ、これ後で皆さんでどうぞ」
そういってマカロンの入った紙袋を渡した。紙袋は、ecで作成した、防水性があるだけのごくごくシンプルなデザインのものだ。
そして、双田さんは中身をちらっと確認すると、すぐに袋を綴じ直した。
「有難う、じゃあこれは後で頂きましょう。お持たせで悪いけど」と、双田さんがそう言った。
お持たせとは、お客さんが土産として持ってきた果物やお菓子を、お茶の席でお茶菓子として使う事だ。元々その目的で持ってきたのもあるので、無問題だ。
そして、雑談に花をさかせる事とする。
「最近、大橋ではどんな娯楽が流行っているんですか?」
神造人間製レポートも当然あるが、ここでは生の声が聞きたかった。直接聞く事に勝るものは、直接見る事以外にありえない。そして、ここは大橋の文化の中心(物理)。庶民文化も武士文化も集まってくる、絶好の地だ。
「娯楽、か。庶民の間では、歌舞伎は大人気だね。チケットを取るのも難しいくらいで、普通の庶民には高嶺の花と言っても過言ではないくらい。もう少し庶民向けだと、最近落語が出始めたかな。歌舞伎のパロディとかもやっているみたいで、あまりお金のない町人にも人気があるみたい。
後は武士の間で流行っている、というより流行らせたのは、将棋だね」
「将棋、ですか」
将棋というと、武士よりもむしろ町人の間で親しまれているイメージがある。何でまた武士に将棋を流行らせたのだろうか。自然発生的に広まったなら、まだ話は分からなくもないが、あえて流行らせたと言う事は、何らかの思惑があるはずだ。
「そう、将棋。ところで暖ちゃんは、将棋のもととなったゲームは知ってる?」と、双田さんが問うた。
「将棋のもととなったゲームですか?確か、インドの方にそのルーツがあったような…」
それが発展して、東では将棋、西ではチェスになった、という話を聞いたことがある。
「そう、インドのチャトランガ。これの由来が問題なんだよ。ある時…」
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「…つまらぬ」
一人の男が、大儀そうに座っていた。ここは、中古インド。ここでは統一的な国家はまだ無く、小さな国が複数、インド亜大陸の中にあった。そして、大儀そうに座っているのは、そうした小国の国王。この国王が、秘書に向かって愚痴を吐いた。
「最近、戦がなくてつまらぬ」
「戦がなくて結構な事ではありませんか。民も安心して暮らせますし、何よりこの国の財布にも優しいです」
秘書は、何をそんなふざけた事を、と言わんばかりに、作業する手を止めること無く言った。しかし、その態度はどうやら王様の不興を買ったようだ。
「戦が無いと、余は輝けぬ!戦のない世の中など、あっても意味がない!」
そう言うと、王様はすっくと立ち上がり、別の部屋へと去っていった。そうなると困るのは、おつきの人である。秘書は、自分の発言に少し後悔しつつ、王様の召使と顔を見合わせた。
「一国の王がこれだけ戦争好きだと困りものです」
「でも、王様は戦争をくり返す事でこの国を国たらしめた訳ですし、王様の言うことはもっともかと。あの方、軍事においては確かに天才的な技能を発揮しますし」
そう、この戦争大好き国王、戦争が好きなだけでなく、上手なのだ。先陣切って戦えば全戦全勝、相手の補給路の断絶など、かなりの腕利き戦術家なのだ。その事は召使は勿論のこと、秘書も身にしみて分かっていた。
「そうは言ってもですよ。さすがに今のペースのまま戦争を続けられたら、この国はパンクしてしまいます。民にかける税金も、一時期と比べてかなり高くなっていますし…市中では反乱の兆候も見え始めています」
秘書の言うことももっともである。この王様は、戦争を継続するために、総力戦体制といっても過言ではないくらい、物資も人も使っていた。
本人は国のため、といって憚らないし、実際そういった面は確かにあるのだが、それにしたって一個人の道楽としては、使う資源の量が度を越していた。
「うーん、困り物ですね…っとおや?」
召使と秘書が頭を抱えていたら、いつの間にか一人の女中が入室していた。
「どうしたんですか?そんなに頭を抱えて」
「実は…」秘書は今までの話をかいつまんで説明した。
女中はその話を、うなずきを挟みながら注意深く聞いた。そして、その話が終わった頃、女中もまた、彼らと同様に頭を抱えていた。
「それは難儀ですね…。王様が、お金を使わずに、ついでに民も使わずに戦争を行う方法があれば良いのですが…」
女中は解決策を求めるための道標を探すように、慎重に整理をしながら発言した。女中は今、まさしく霧のかかる山の登山道を探す方法を探していた。
「お金も使わず、民も使わない戦争、といっても、そんなのあるんですかね?それこそ、王様の戦争がこの部屋の中で完結してしまえば、それに越したことは無いんですけど…。そんな都合のいい話はないですよね」と、召使が自嘲しながら言った。
彼には、その山が果てしなく高い事が、朧げながら見えていた。そんな都合の良い話はあるはずが無い、兵士の演舞などを見て満足するような王様ではない…そう感じたからである。
しかし、その召使の発言に意外にも反応したのは、秘書である。
「いや、それいけるかもしれません。室内で、金も民も使わずに戦争を行う方法」
そう発言した秘書の眼は、一筋の活路を見出していた。まるで、あたかも登山道の近道を、言うなればトンネルを発見したかのように。
「そんな事が出来るんですか?」
にわかに信じがたい、といったニュアンスでそう発言したのは、女中である。しかし、彼女は、あまりに自信ありげな秘書の顔を見て、もしかしたら、と薄々感じていた。
「簡単な話です。サイコロ遊びにしてしまえば良いのです。駒も用意して、王や兵士、馬などをこの駒を代用して再現する事にしましょう」
「なるほど、それならいけそうな気もします。しかしすごいですね、秘書さん。自分じゃ絶対にそんな事思いつかないです」
「いえ、私も一人では思いつきませんよ。召使さんの一言が無ければ、私はまだこの部屋で呻っていた事でしょう」
褒め称えられた秘書は、そう照れ隠しすると共に、召使を讃えた。
「いや、具体的なアイデアは秘書さんの明晰な頭脳あってこそです。…しかし、このアイデア、成功しますかね?王様が実際食いついてくれれば、それで大成功といって差し支えないのですが…」
召使はまだ悩むままだ。自分の出したアイデアが通り、それを秘書が具体的な構想に纏めこむ。そこまでは良い。
でも、それより先の展望…つまり、王様が食いついてくれるのかについて、召使は未だ何の道筋も立てられていなかった。
「そうですね…実際作ってみて、やって貰わない事にはどうしようもないですね。女中さん、木工さんを呼んで頂けます?」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
三時間後の事である。
木工の努力の甲斐あって、やっとゲームボードと駒が完成した。基本デザインは女中が担当。そして召使と秘書は協働してルールブックを書き上げた。といっても実際の紙にではなく、あくまで比喩的にであるが。
「では、後は王様に遊んでもらうだけですね」
こうして、召使、秘書、女中の三人は、ゲームボードと駒を木工から受け取り、王様が引きこもる部屋に向かった。
「王様」
「何だ?余に戦争するための予算を割く決心がついたか?」
「いえ、その事なんですが…」
結論から言うと、秘書の企みは大成功だった。
はじめこそ王様は渋っていたものの、秘書との対戦ですっかり白熱。途中から女中や召使も加わり、暗くなるまでこのボードゲームが興じられた。
このボードゲームは、後に「チャトランガ」と言われることとなる。
なお、王様はこの後戦争から足を洗ったはいいものの、その後政治への興味もなくし、この国が衰退へ向かっていったのはまた別のお話。
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「って話」
ここで双田さんが話を止めた。結構ボリュームのある話だった気がするが、とりあえず、戦争を止めるためにチャトランガが作られた、というのは分かった。
「つまり、チャトランガが戦争の代替として開発されたのなら…」
「ん、察しが良いね。そう。チャトランガの進化系である将棋もまた、戦争の代替になるのではないか、と考えたわけ。ただし、今回は戦争を止める為ではなく、戦争を有利に運ぶための判断力を養うため」
そう双田さんが笑った。
「確かに、将棋は頭を使いますものね。私も少し将棋が打ってみたくなりました。どうでしょう、一局」
そういって佐間さんが腰を上げた。
「いいですね。といっても、私自身は弱いので、ちょっと代理のものを建てても良いですか?」
「…?構いませんが」
その言葉を聞くと、双田さんは廊下の奥に消えていった。
3分後。双田さんが人を引き連れて戻ってきた。引き連れてきたのは…楠木さんである。
「では、お願い致します」
「お願い致します」
厳粛な雰囲気のまま戦いが始まる。あ、この作品の中では非常に珍しい戦闘描写、始まるよ。
まずはお互いの戦力を確認する。平手なので、両方共20枚の駒が全て無傷で揃っている。与えられた持ち時間は、1手1分。
アマ将棋なら、比較的長い方といって差し支えないだろう。そして楠木さんは自らの陣地中央から歩兵を5枚抜き取ると、それを振った。表が3枚。先手は楠木さんだ。
先手の楠木さんはまず角道を開けた。佐間さんはそれを気にせず飛車先をつく。そして楠木さんは、再び角道を閉じた。
そして、お互いが攻め方を確認しつつ、陣形を囲っていった。佐間さんは…どうやらこれは金矢倉。一方楠木さんは…既に棒銀によっての攻めを始めていた。
馬鹿な、早すぎる。急いで視線を王の方に移す。見ると、王は既にしっかりと囲いがしてあった。これは…
「カニ囲い…ですね。そして急戦に持ち込む気ですね、そうはさせません」
こうして、序盤の準備段階は終わり、まさしく戦いの幕が切って落とされた。
余談だが、『戦いの幕が切って落とされた』という表現は誤用ではない。よく問題になるのは、『火蓋が切って落とされた』ではないだろうか。まあ火蓋の役割を考えれば、それが誤用である事はすぐに分かるのだが。
そうこうしている間に、中央部を中心に、激戦が勃発していた。取っては取られ、取れるところはとらず、そのために仕掛けていた罠を大急ぎで回収しつつ別の所に利かせたり…まさに激戦というべき駒の配置だった。
大駒の動きは見逃しやすい…特に角行はななめなので見逃しやすいし、また見逃されやすい…ので、そこに十分な気を使いつつ、それでいて小駒の動きにも注意を払わなければならない。多くの駒得、駒損が繰り返され、戦局は混迷を極めていく。そして、
「王手」
最初に王手をしかけたのは、楠木さんである。楠木さんは、香車を自陣深くに打ち込み、結果的にそれが王手となった。
この角度だと、佐間さんはどの方向に逃げても厳しい戦いを強いられるだろう。しかし、楠木さん側の玉にも、次の手で…
「王手」
王手がかかってしまう。この王手は銀将によるものだ。
香車を結果的に塞ぐ形となって、受け攻め両用となっている。しかもタチの悪いことに、この形は、詰めろとなってしまっている。
詰めろについて、ごくごく簡潔に説明してしまおう。
簡単に言えば、次に相手が適切な手をとらないと、詰みとなってしまうような手の事だ。
この場合、香車で銀将を取ることで簡単に王を回避する事ができるので、そんなに回避は難しくないとは思うが…
しかし、その予想に反し、楠木さんはそれをしなかった。楠木さんは一旦逃げ、また体勢を立て直し始めた。
一瞬の間があき、佐間さんは自陣の矢倉を再構成する。そしてそこから、攻めては受け、受けたかと思えば結果的に攻めているような、いつ刺し違えが起こってもおかしくなくなった。そしてついに。
「…負けました」
楠木さんの投了で決着がとりあえずついた。
「しかし、とんでもなく強いね。さすが、神様の作った叡智というか。そりゃ、いくらいっちょまえに軍事に目覚めても、勝てるわけないよね。いやはや、佐間さんと仰いましたっけ、良い対局を有難うございました」
楠木さんが僕に向かって感想を言うとともに、佐間さんに礼を言った。しかし、楠木さんは使用人の皆さんに敬語を使うようだ。立場的には楠木さんの方が上でもおかしくないのだが、佐間さんの見た目が高校生なのが大きく左右しているのだろう。同じことは双田さんにも言える。
「いやいや、かなりヒヤッとさせられる場面の連続でした。銀将を香車で取られなかった時は、どうやって次の手を打とうか一瞬頭が真っ白になりました」
佐間さんがそういって笑った。ああ、その動きは僕も気になっていた。何であんな事をしたんだろう。逃げるよりは、まともな結果になっていたような。
「いや、私も反射的に取ろうとしていたんですけどね。メニューガイドによる状況分析が、その手は悪手だと教えてくれたんです」
メニューガイドによる状況分析。少し気になる単語が出てきたが、そんな事は気にせずに佐間さんが驚いたそぶりで返答する。
「なるほど、良い性能のようですね。実際その通りで、あの盤面、あの銀将を取ってしまうと35手詰めになってしまうんです。取る合理性もありますし、まず100%詰める事が出来ると考えたのですが…認識不足でした」
どうやら佐間さんには楠木さんの言わんとする事が分かっていたようだ。…駄目だ、さっぱり分からない。
「会話中すみません、『メニューガイドによる状況分析』とは、一体どういう事ですか?」
僕のその言葉に、楠木さんはいたずらっぽく舌を出し、すぐに引っ込めてこちらに視線を向けた。
「ああ、その話は暖ちゃんにしていなかったね。暖ちゃんはアクションゲームとか、戦争シミュレーションゲームとかってやった事はある?」
「いえ、無いですね。…でも、友人がやったのは見たことがあります。友人って貴方の事ですけど」
あれは、文芸部員で楠木さんの家に泊まりにいった時の話だ。
急な掲載ページ数の増加による、締め切りまでのスケジュールの大きな変更を強いられた僕達は、楠木さんの家で缶詰になる事…合宿と言い換えても良いかもしれない…を決行したのだ。その時、何とか原稿を終わらせた楠木さんが、そういったゲームソフトに興じていた思い出がよみがえる。
あれは、冷戦後世界を再現した戦争シミュレーションゲームだっけな。
戦争シミュレーションといっても、実際に戦車や戦闘機、歩兵などがグラフィックとして出るわけではない。
彼らはあくまで数字上の情報として、その役目を全うしていたはずだ。後は、もっとミクロな視点から…一人の戦士として遊ぶタイプのゲームも遊んでいた記憶がある。あれは、銃を持って戦場を生き残り、作戦を全うするのが目的だったような。
「そうか、そういえばそうだったね。それなら話が早い。
あの時、ゲームウィンドウには、実際の描写の他に、例えば自分のライフゲージや敵の位置、弾薬量などの持ち物、あるいは戦争シミュレーションゲームの方だと色々な国との外交関係や兵器の開発状況なんかを示すウィンドウがあるわけじゃない。
それが、『戦闘中の場合、実際の視界にもそれと似たウィンドウを表示させる』っていうのが、私の能力の一つ。将棋を戦闘として援用する事で、戦況を俯瞰的に、それでいて精密に見ることが出来る、って事。まあ結果負けちゃったけど」と、ここで楠木さんが一旦話を切った。
つまり、楠木さんが戦闘をしたり、戦争を仕切ったりする時には、さながらゲームのように、視界に情報が入り続けるのか。しかも、それはある程度自律的に判断をしてくれる、と。何それすごい。
「では、もしかして最近の大橋領が勝ち戦続きなのは…」
「…まあ、そういう事だね」
楠木さんは言葉を濁しこそしたが、少し察した。
まあ、それで勝てているならその能力の活用は別に構わないだろう。というか、その事についてとやかく言える立場ではない。
「…まあ、あれもありますよね。将棋による判断力のアップ」
別に楠木さんも、チート能力だけで将棋を打っているわけではあるまい。当然、それに頼らず多くの盤面を処理しているのだろう。
その影響で、少し危ない盤面に自ら向かっているようにも見受けられたが。
「確かにそうかも。今までよりも メニューガイドによる状況分析を頼る事はかなり少なくなってきたかな。そういう意味では、将棋は本当効果的だね」
「とまあ、そういう理由で、文ちゃんだけでなく、武士のみんなに嗜みとして将棋を打ってもらってる。判断力のアップは勿論、地形の処理、というより情報の処理能力の向上を期待しているわけ。皆が文ちゃんみたいな能力を持っている訳じゃないからね。特に将来士官になる子には、そういう能力を養ってほしくて」
その双田さんの言葉に、僕は深く納得するのだった。
その後、色々な雑談をしつつ、充実した一日は、いつの間にか終わっていた。
いつもお読み頂き有難うございます。
次回更新は6/7を予定しています。




