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ec経済観察雑記  作者:
16/66

10.5 茶取引の裏側(別視点)

今回は、紺原視点でお届けします。

別視点


 色々あったが、今回の商談はかなり良かったものといって良い。

 豊富な生鮮食品とそれを簡単に流通させる手段、具体的に言えば物品の半永久的保存を可能とする外付けアイボを手に入れたのは勿論だけど、それよりも、


「茶…製茶業界と茶の卸売・小売業界は異常な縦社会で、生産業者から小売店まで殆ど余所者の入るすきが無かったために今までは全く手に入らなかったのに…」


 この国では茶はその生産から加工、販売に至るまで、一社(一族と言った方が適切かもしれない)が独占している。

 まずは直河のうが碓前うすぜんの茶農家と独占的に契約を結ぶ。収穫した茶葉は現地の作業所で「鶯屋うぐいすや」が緑茶(+抹茶)に加工。

 その後旧宮の旧宮鶯屋ふるのみやうぐいすや束中たばなかの束中鶯屋、大橋の大橋鶯屋に迅速に運ばれ、独占販売。

 地方の商人は小売店から小売価格で仕入れ、転売。こうする事で、鶯屋は巨額の利を得ることが出来た、という訳だ。茶業界のカルテルといってもほぼ一族内でのカルテルでその内情はほぼ独占と言ってもらっても差し支えない。

 帯後たいごに茶を独自に生産、販売をした業者が複数いるが、それらは代替わりと共にカルテルの枠に入ってしまった。そういう訳で現在、茶の価格は異常と言って差し支えない程高い。


 特に地方や農村では顕著で、百姓は勿論のこと庄屋ですら毎日のように茶にありつくのは難しい。地主の中には茶飲みたさに小作料を独断で引き上げる者もいるという。

 大橋領内では双田ちゃんが徹底的に小作料を調べて刑を下したというけど、それでも他領では問題が深刻化しているし、最近では庶民にも茶を売りだそうと「番茶」と称して本来廃棄する予定だった、といっても差し支えないくらいの茶葉を売り出している。

 その鶯屋で出している「番茶」を一度飲んだが、かなりえぐ味が強かったので島木屋では置いていない。別の日に買った番茶は、一回しか出していないというのに出が悪かったので、品質が悪いといっても袋によってそのベクトルは様々で、品質管理も十分に出来ていない。というか戦国時代の番茶でもこんなに品質が悪くはないぞ。


 因みにこの鶯屋(無印の方ではなく地名が付いている方の鶯屋だ)は茶の販売だけでなく呉服や海苔の販売もしている。ここ美流に「大橋鶯屋」として店舗を構えているが、それは大橋領内最大の商会と言っても差し支えない。

 茶の異常な高値とは対照的に塩は比較的安く入手できる。その安さと安定した品質からこちらも儲かっているようだ。どうやら海塩を昔ながらの塩田方式で大量生産しているようだ。さすがにイオン交換膜等はまだ登場しないようだが。まあひとことで言うと「食えない相手」と思ってもらって良い。


 その「食えない相手」が独占している茶を10t程購入できた、というのは商売上大きなプラスだ。すぐにでもこれを棚に出したいけど…

「問題は鶯屋のブランド力だね」

 どんなに品質の悪いものを出していても、どんなに高くても、鶯屋は鶯屋なのだ。

 腐っても鯛。猫に鐚銭、豚に硝子球。大型百貨店の隣にディスカウントショップ。


「仮に島木屋が茶を商品棚に出した所で、『鶯屋のでさえ最近あんまり美味しくないのに島木屋のが美味しいわけ無いでしょう?あるいはもっと高くなるのでしょう?』と思われることは確実…」

 それを考えると迂闊にいきなり棚には出したくない。そのために、要するに茶のシェアを鶯屋から掠め取るために必要なことは…

「やはり事前マーケティングやそれに伴う商品の展開戦略が不可欠…」

 焦る必要はない。少しずつ、しかし確実に牙城を崩していけば良い。幸いなことに私は過去に培った膨大な営業データを持っているので、事前マーケティングの時間は極限まで短縮出来るだろう。

 そう思いつつほくそ笑んだ。

いつもお読み頂き有難うございます。

今回は比較的短いので、次話は2/19に投稿します。

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