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6.22  作者: 和菓子屋
3/6

入道雲


No.5

昼休みは毎日、放課後は時々、僕は図書室へ行く。これは一日のサイクルに過ぎない。もはや僕の生きてる日課なのだ。

ここは僕にとって優一安らげる空間だった。

それなのに、一体僕はこの人に何をしたのだろう。何の恨みを買ってしまったのだろう。何でこの人は僕の顔を覗いているんだろう。

はあ、僕は数日前の事なんぞ勿論、昨日の記憶だってろくに覚えていないやつだ。そんなやつにこの人との記憶なんてあるものか。たとえ何処かで挨拶を交わした事のある相手だとしても、僕は覚えていない。



No.6

さっきまで僕の顔に何か付いているかの様見ていた人が、隣の席に座って来た。

ああ、まただ。たまたまこの席に座った人だったなら僕だって何も文句は言わない、だけれどこう毎日僕の邪魔をしてくるんだったなら話が違う。今日はその人に何故僕の邪魔をするのか、聞きに来たんだ。だからーー、息を吸い込んだその時だった。

「あの。」

それは綺麗な声だった。視線を変えて見るとそこには胸のあたりまである黒髪を二つに結んだ女が真っ直ぐに此方を見ていた。僕の方から話しかけるつもりでいたからか、突然の出来事に冷静さを失ってしまい、咄嗟に出た言葉が

「なっなな何だね君は。ぼ、僕に何の用かね??」

あああ...大失態だ。久しぶりに人と話すとこんなにも間抜けな返事をしてしまうものなのか。僕は恥ずかしさのあまり、伸びていた前髪で顔を隠した。

「私は隣のクラスの二階堂よ。君と話してみたくてつい声をかけてしまったわ。」

お嬢様みたいな口調で軽く自己紹介をされてしまった。僕とは違って実にエレガントに。

「僕に話って何だ?用なら手短にしてくれないか。」

冷静になった僕はようやくいつもの口調になった。すると、女はちょっと可愛い笑顔を見せて口に手を当てながら、

「ふふ、だから話があるんじゃなくて、話してみたかったの貴方と。ただそれだけよ?」

そんな事を言うもんだから僕は迷わずに

「無理だ。」

と言ってやった。

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