母親は能天気
大津克巳は女性的な容姿にコンプレックスを持ち、家が貧乏でゲーマーな父親が居る以外は普通の少年だった。
しかし貧乏であるという事実が不幸な境遇とされたのか、
魔女ヤヒュニアによって女の子へと変えられてしまったのだ。
「行っちゃった……服とか買うお金無いんだけどね」
すると克巳は箱に気づく。
「そういや、宅配便に見せるための箱がそのままだ。もしかして」
そうして箱を開くと、光がぱっとどこへともかく散っていく。
「何の光!それより、中身は?」
中身を見ると、彼もとい彼女の通う学校の制服があった。
夏服や冬服はもちろん、学校指定の水着に体操服まであった。
さらに私服として青の夏用ワンピースと、
ピンクが基調となっている冬服のセット。
そして黄色いスカートと赤い服がセットになった夏服、
白で統一された冬服のセットが入っていた。
「ご丁寧に私服まで用意するなんて、手が込んでるね」
そういって克己が衣装をどかすと今度は下着類が三セットくらいあった。
「下着まであるんだ……」
さらにそれをどかすと選べるタイプのギフトカタログがあり、
それにはさまざまな服の写真が貼ってあった。
「後は自分で選べっていうの?それとも親が……」
「まあ、私服は二着あるし困らないとおもうけど」
そして克巳は持ち物を見る。すると……
「大津克美?克までは一緒で読みもかつみだけど最後が美しいになってる」
「しかも、性別欄は女になってる!?」
すると、そこに彼女の母親がやってくる。
「大変だったね。超常現象で女の子になるなんて」
「僕が男だったって分かるの?」
「分かるけど、女の子になったのに僕はやめなさいって」
克巳もとい克美は思った。
どうやら過程をすっとばして男性が女性になった事実が受け入れられた、
という結果だけをあの魔女の魔法がもたらしたらしい。
「どこかの漫画の能力みたいだね……」
「ともかく、カタログが届いているはずよ」
「そこまで知っていたなんて……」
克美はそういいつつ母親にカタログを渡した。
「どうせだし、使えるものは使うわ。それと、女の子の入浴法を教えないと」
「男の時とはやっぱり違うの?」
「当然よ。髪もきれいに整えないといけないし、大変よ」
「だけどお洒落ができる、っていいたいの?それには乗らないよ」
克美がそういうと、母親は取り繕うことなくこういう。
「ばれちゃったら仕方ないわね。私、女の子が欲しかったの」
「ええっ!?まあ、もう一人養うお金も無いし妥当なラインかな」
克美はふっきれるようにそういったのだった。