ガラスの靴は突然に
シンデレラ。
それは不幸な境遇の少女が魔女の手助けにより舞踏会に出て、
その後残したガラスの靴がぴったり嵌ったことで王子様にそれと認められた。
そして少女は王子様と幸せに暮らしました、というだけの話とされている。
この御伽噺は結構改変されている部分も多い。
ガラスの靴は原典では金の靴だし、シンデレラは意地悪な姉に焼けた靴を履かせている。
しかし人づてに物語が伝わる過程で物語は変化し、
このような話へと生まれ変わったのだ。
シンデレラは王子様と幸せを掴んだという結末に疑問を持つものも居ないわけではないが、
不幸な境遇から一転幸せを掴む物語はそんな事情はともかく万人に受け入れられ今も愛されている。
著作権にうるさい会社が映画の題材にし、最近リメイクが作られたくらいだ。
「なあ、たかひこ」
「何?」
「使い終わったゲームがあるんだが」
大津克巳は伊賀啓介にこういわれた 。
すると、飯塚琴美はこういう。
「大塚のとこは金がないけどゲーマーっていうけど、人に渡されるほど落ちぶれちゃ無いわよね?」
「まあね……食費は切り詰めているけど給食があるし、施しを受けるほどじゃないよ」
琴美には克巳をいびる意図はないだろうが、意地悪な義母といえばそうなるかもしれない。
ともかく、これは放課後のことであった。
いつものように克巳はこういって別れを切り出した。
「それじゃあ、また今度」
そうして家に帰ると、訪問者が現れた。
チャイムが鳴ったので宅配便だと思った克己は外に出る。
実際荷物を持っていたし、しわがある老女だが年齢を鑑みれば美しい容姿で制服も着ていたからだ。
しかしその50代であろう訪問者は唐突に姿を変え、ロープ姿になった。
「私はヤヒュニア。あんたはかなり厳しい境遇みたいだね」
「あなたは?」
克巳はそういいつつとっさに鍵を閉めようと思ったが、何故か扉が閉められない。
「怪しいものじゃありませんよ。シンデレラの魔女、といえば分かるかい?」
「僕がシンデレラだっていうの?確かに僕はこんな見た目だけど男の子だよ?」
「あんたは女の子になれば幸せになれるかもしれんのう」
「何を適当なことをいってるの?僕には夢があるってのに!」
「その夢を確かめるにも、女の子にしてみるさ」
「うわっ、ちょっと!?」
すると克巳は自分にガラスの靴が履かされた、気がした。
「気のせいか、ならいいけど……」
しかし彼は光に包まれる。
「えっ!?」
光の中で彼は姿を変えていく。ただでさえ女性的な彼であったがそれがより鮮麗されていく。
胸も膨らみ、それなりに角ばっていた部分すら脂肪が付くことで丸みを帯びる。
そして彼は股間に喪失感を覚える。
「僕のあれがなくなって!?」
そして、彼の身体は変化を終えた。
「はい、鏡じゃよ。これにはトリックは無いぞ」
その鏡に映る女性は服装が男のそれであったため上はきつく下はゆるくなっていた。
「嘘だよね。これが、僕?」
克巳の反応は、あまりにもスタンダートな物であった。
「それで、何のつもりなの?」
「それは明日学校で分かる」
「学校って……今の僕がみんなに分かるの?」
「心配はいらん。手は打っておる」
続く