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62 苦戦?

 超重力砲とはその名の通り、超重力にて空間ごと歪ませ、引き裂くという強力無比なスティングレイ最強の装備である。

 これまであらゆる敵を一撃のもとに倒してきた。

 しかし今。

 その直撃を喰らってなお原形をとどめている艦が目の前にいた。


 砲身が歪み、装甲に亀裂が走り、あちこちから煙を上げているが、それでも纐纈城はまだ健在である。


「あの戦艦、どういうシールドしてるんだ!?」


「まあ……帝國の威信をかけて建造した戦艦ですから」


「レイ。お前、なんでちょっと嬉しそうなんだよ!」


「え、だって私、一応、帝國の人間ですから……」


「裏切り者めぇ!」


「ち、違いますよ、うひゃぁ、なんで胸を揉むんですか!」


 などとミュウレアとレイは遊び始めた。

 だが、最年少なのに一番しっかり者の琥珀はそれに加わらず、クライヴに近づき、戦況を心配する。


「クライヴさん。超重力砲は最強の装備なんですよね? 防がれちゃいましたけど、大丈夫なんですか? なんならもっと血を舐めますか!?」


「いや、まだ血は大丈夫だ。コルベット、超重力砲、二発目用意」


「心得タ」


「ええっ? 超重力砲って連射できるんですか!?」


「ああ。出港時は無理だったが、暇を見つけて調整したんだ」


「相変わらずクライヴってますね!」


 琥珀は目を輝かせて拳を握りしめる。

 連射がそんなに嬉しいのだろうか。

 まあ、とにかく纐纈城は、二発目の超重力砲を喰らい、跡形もなく消滅した。

 すぐ隣のピラミッドも若干抉れてしまったが、ほんの少しなので大丈夫だろう。

 むしろ、あそこに眠るアークの最終兵器を破壊することが目的なのだから、三発目の超重力砲を撃ち込んで、完全に消してしまうべきかもしれない。

 調査できないのが残念だが、最終兵器が動き出すと人類が滅ぶらしいのだ。

 流石に好奇心を優先するわけにもいかない。


「主様。ピラミッドにシールド発生。纐纈城のものより強力ダ。スティングレイとほぼ互角」


「なに?」


 クライヴはつい聞き返すが、しかしすぐに納得した。

 センサーなどで計測するまでもなく、正面スクリーンに映っているのだ。

 漆黒のドーム状の壁が、ピラミッド全体を覆い隠している。

 目視できるほど密度の高いシールドだ。


「超重力砲、発射しろ」


「……しかし主様。流石に三連射は主様に負担ガかかるゾ」


「問題ない。それに、スティングレイと互角のシールドなら、超重力砲以外に破る手段がない。やれ」


「……心得タ」


 コルベットは最後まで不安げな声だったが、己の役目をまっとうし、超重力砲をピラミッドのシールドへと撃ち込んだ。

 着弾し、無事にシールドが消し飛ぶ。

 が、ここで問題が発生する。


「主様、シールドが再生シタ!」


「ほう」


 一度完全に剥ぎ取った黒い壁であるが、それは瞬く間に再生し、一秒もしないうちに元に戻ってしまった。


「え、なに、クライヴ、もしかして苦戦してるの?」


「お前にしては珍しいなぁ。いや、たまにはそういうのも必要だぞ。横で見ていて面白い」


 レイとミュウレアはすっかり他人事のように言ってくる。

 実際、スティングレイの戦闘で、彼女らの仕事はないに等しい。

 他人事なのは確かだし、呑気な態度もクライヴに対する信頼だと思えば腹も立たない――いや、少し癪に障る。

 仕事がないのなら、せめて大人しくしていて欲しいものだ。


「どうする主様。向こうから攻撃してくる気配は……いや待テ! 地中から何かが出てくル!」


 コルベットが言い終わらないうちに、雪に覆われた白い大地が爆ぜた。

 それも複数箇所が同時に。

 飛び出してきたのは、先程の巨大人型ロボットだ。

 その数、何と十五機。全てが一斉にスティングレイへとレーザーを放ってきた。


 纐纈城の一斉砲撃よりも強力なエネルギーが防御シールドを削っていく。

 もちろん、削られるより早く再生させているのだが、その消費が激しく、神滅兵装に多大な負担がかかっていた。

 いや、神滅兵装そのものにはまだ余裕がある。

 しかし、これ以上の灮輝力を送り込むと、スティングレイのほうがオーバーヒートしてしまう。


「……レーザーが止まる気配がない。流石にシールドと超重力砲の同時使用は無理だな。こちらの船体がもたない」


「あ、あのクライヴさん。血は必要ですか?」


「済まない、頼む」


 琥珀は状況を察したらしく、いつもより深く指を傷つけ、差し出してきた。

 いつもクライヴが琥珀の指を舐めると大声を上げるミュウレアとレイだが、今ばかりは騒がない。


「で、クライヴ。真面目にどうするのだ? スティングレイが身動きが取れない以上、生身で戦うしかないぞ。妾とレイで外のロボットを倒してこようか?」


「いえ。姫様とレイでは、ちょっと無理ですね。あのロボットは強いです。俺以外では勝てないでしょう」


「はっきり言う奴だなぁ。じゃあお前がまた外に出て戦うのか? なんだかクライヴ一人に任せてばかりで申し訳ないぞ。まあ、妾たちが戦うとしても神滅兵装から灮輝力をもらうわけだから、結局はクライヴを頼っていることに違いはないのだが」


 ミュウレアが珍しく殊勝なことを言い始めた。

 それだけ状況が切迫して見えるということだろう。

 事実、クライヴは考え込んでいる。

 負けない方法ならいくらでもあるが、勝つ方法。

 つまりピラミッドのシールドを突破し、内部に侵入し、アークの最終兵器を破壊する方法だ。無論、全員が無事に生還するのが前提条件。


「……仕方がない。スティングレイのリミッターを外すか」

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