そう思い通りにはならない
基本、塩味
食の文化レベルは低いようだ
さて、ファンタジー世界の俺に憑依してから二日目。初日は色々あってすぐに寝てしまったがいくら魔術師とは言え人間だ。腹が減った。
と言うわけで何か食べようと思ったのだが生憎と料理なんて作れない。
ここの俺は料理をしていたようだがその知識は無かった。ある知識と無い知識の斑が凄い。やはり偶然による憑依だから不完全なのだろうか。
いや、そもそも憑依の魔術じゃなかったのだから当たり前か。
しかし困った。このままだと飢え死にしてしまう。最悪生で食べれば良いのだが生で食べて良いものかダメなものか区別がつかない。
「外食するか」
何故か家が森の中にあり少し遠いが仕方ない。餅は餅屋。プロに任せよう。金が尽きたら……その時に考えよう。
それから四日、三食全て街に出掛け外食したがもう、何と言うか……
「味が……同じなんだよな」
殆どが塩味でありもう正直飽きてしまった。改善しようと露店やアイテムショップ的な所に言って調味料を探してみたが胡椒も無い醤油も味噌もスパイスもマヨネーズもソースもケチャップも全て無かった。胡椒とスパイス以外は存在すらしなかった。
ファンタジー世界で有りがちなスパイスは手に入りづらい的な要素があるようだ。
店主によるとスパイスは貴族様が独占して街には滅多に出回らない上に高価でとても手が出せないみたいだ。
おのれ貴族め。許さん。
だが忘れてはいけない。俺も他の異世界行っちゃった系主人公と同じく地球の日本出身である。
現代の知識は欠落することなく持ち合わせている。
なめるなよ……! 調味料くらい作ったらぁ!
…………オーケー、俺が悪かった。
全然駄目だった。醤油も味噌もソースも作り方を知らない。
マヨネーズとケチャップはいけなくもないが細かい事は覚えていないので結局、微妙な物が出来上がった。
異世界恐い。もう帰りたい。
「こうなったら現代日本の技術を活かして何か開発して特許取って貴族に成り上がってやろうか……無理か」
日本の技術なんて僕にはありませんでした。
しかし本格的にやばい。金も有限だから何時までも外食って訳にもいかないし。そもそもここの俺はどうやって金を稼いでいたのだろうか。
そこの記憶が欠落している。
と、悩んでいると五メートルくらいの大きな鷲が荷物を運んできた。
食われるかと思ったがそんなことは無く、鷲さんはこの世界の配達屋だった。
運ばれてきたのは一ヶ月は暮らせるであろう金と手紙だった。
中身は田舎からの両親の手紙だった。どうやら俺は都会に出た癖に森に引きこもって更に仕送りを貰いニートをしているようだ。良いご身分だ。
そして手紙の最後には『最近学校はどうなの?』と書かれていた。
……え? 学校とか聞いてない。
次回、学校へ