やらかしてくれたな来世の俺
勢い
来世と言うものを御存知だろうか。
死んだ後、魂が別の人格として別の人生を歩むアレである。
そして俺はそれを体験している。
別の人格で記憶もないのに来世を体験するなんて訳がわからないと思うが実際そう言うしか無い。
分かりやすく言おう。
どうやら俺が来世の俺を乗っ取ってしまったらしい。
まだ分かりにくい。しかしボキャブラリー貧困な俺ではこれ以上説明しても余計にややこしくなりそうなので状況確認だけしてみよう。
高校生の俺が気付いたら魔術師になっていた。
なんと俺の来世は魔術師らしいのだ。
何故か存在している魔術師としての知識と記憶が頭の中にあるのだ。
どうもこの現象は魔術師の俺がやらかして起きた状況らしい。
魔術師として成功していなかった魔術師の俺が何を思ったか前世の記憶を呼び起こしてその時に培った知識を利用しようとした結果、こうなったみたいだ。
前世に有益な知識があるとも限らずそれを実行する辺り俺っぽいのだが間抜けにも程がある。
しかも失敗して前世に当たる俺に乗っ取られてる所なんて涙が出てくる。大丈夫かな来世の俺。
取り合えず魔術なんてあるようなファンタジーな世界で現代日本人の俺が生きていくなど到底無理そうなので元の世界に戻りたい。
しかし偶然の、しかも失敗してこの結果なのだから当然戻る方法など無い。
地道に帰還する方法を見つけていきたいと思う。
さて、今後の方向性も決まった所で早速だが魔術を使ってみる事にする。
何故かって? 魔術だぞ? やったみたいじゃないか。
先ず初級の火の魔術を使ってみよう。
「えっと、呪文は……え、嘘、長い」
魔術はその術者の技術によって呪文が長くなったりするのだが俺のスペックは低いらしく呪文が凄く長い。
良く前世の知識とか呼び出そうとしたな。
「──フレイム」
結論だけ言おう。部屋が一つ無くなった。
初級だと思ったら中級魔術だったらしく部屋は炎上。水の初級魔術で消そうにも技術の問題で呪文が三十秒程かかるので意味もなく結局、近くにあった川からバケツで水を汲んでぶっかけることで何とか事なきを得たのだが残念ながら部屋一つ消し飛んだ。
魔術恐ろしい。もう出来心で発動なんてしない。
それに中級魔術を使ったせいか凄くダルい。その状態で動いたからさらに疲れた。
どうやら体内魔力も少ないらしい。低スペック過ぎるぞ来世の俺。
いや、まぁ元々俺のスペックも低かったから多分魂レベルで低いのだろう。泣けてきた。
果たして俺は帰れるのだろうか。
低スペック