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小児の神と小さき命



人の世では数々の集落が孤立するほどの雪が降ったとかで、上を下への大騒ぎをしていた頃。

小児の神は積もる雪など物ともせずに白銀にそまった大地を歩いていた。

その後ろを、これまた真っ白な兎が耳をひくひくさせながら着いて行く。


「これはなんと、まぁ・・・。必死で我を呼ぶ声がすると思い来てみれば、痩せ細ってはおるが可愛らしい子ではないか」


雪に埋もれるようにして、その小さな命はあった。

そっと抱き上げた命は既に事切れていたが、小児の神はそっと抱き上げると優しく愛おしそうに頬を寄せる。


「こうして我を呼び寄せたのも何かの縁。もう何の心配もいらぬぞ」


そう言って小児の神は小さな命を抱きしめたまま、静かに歩き始めた。











一面に広がる花々を揺らす穏やかな風が、きらきらと煌めく小川が上をそっと過ぎていく。

優雅な仕草でお茶を飲む神々は、楽しげに話を弾ませている。

何処からともなく現れた今日の茶菓子は可愛らしい花の形をした上品な和菓子。


「おお。これは美味いな」

「白餡が絶品じゃ」


和菓子を頬張る神々にほっこりとした笑顔が広がると、まるでそれに答えるかのようにふわりと風が踊った。


「ほっほっほ。可愛いのぉ」


踊る風を見て神々が笑う。

中には手を差し出し、風に姿があるかのように優しく撫ぜる神もいる。

温かな雰囲気が辺りを包んでいた。


「あ。かかさまだ!」


ふいに聞こえた鈴の音のような子供の声。

神に撫ぜられていた風が大きく揺れたかと思うと、声に似合った可愛らしい子供が姿を現す。

短く切られた黒髪にくりっとした大きな目、そして春を思わせる明るく淡い色の着物。

両手を広げ勢い駆け出した子供の先には小児の神が立っていた。


「元気にしていたか」

「うん。元気だよ!」

「そうか。そうか」


嬉しそうに抱きついてきた子供をそっと抱き上げ、小児の神は嬉しそうに頷く。


「おお。小児の神、久しいな」

「そなたが拾うてきた子は、良い子じゃぞ」

「優しい子じゃぞ」


子供を抱いて近付いてくる小児の神に、他の神々が口々に子供を誉める。

どの神々も子供が愛おしくてたまらないという顔をしている。


「お茶、淹れてくるね」


するりと小児の神の腕の中から降りた子供は、ぱたぱたとお茶を淹れるため風に戻っていく。


「あれは人の姿より風のほうが心地よいとみえる」

「いやいや、小児の神よ。それは違うぞ」

「そうじゃ、そうじゃ。人の姿になるは小児の神に甘えておるからじゃよ」

「我らには恥ずかしがって、なかなか姿を見せてはくれんのだよ」


カラカラ笑う神々に、小児の神は「困ったものよ」と言いながらも、どこか嬉しそうに笑う。

そんな小児の神を見て神々はまた笑う。

笑い合う神々の目には、風になった子供が一生懸命にお茶を運んでくる可愛らしい姿が見えていた。


今日も神々の集う庭には穏やかで優しい温もりが満ちています。








1年ぶりの更新。そんなに長いこと更新していなかったんですね。ちょっとビックリ。


いつかは登場させていたいと思っていた子供の話。

子供に名前はありません。最初はあったんですが、名前をつけてしまったら現実感が出てしまい、なんとなく生々しい感じがしたので子供は「子供」だけにしました。

同じ理由から性別もあえて明確にはしませんでした。


重い話にはしたくなかったので、微笑ましいシーンだけを思い浮かべて書いてみました。

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