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衣桁の神様

ひらりひらりと風が踊る神々の集う庭。

花々がきらきらと輝いている。

「見て! 見てぇ~!」

ふわりと舞った光の渦に、鮮やかな色彩が広がっていく。

満面の笑みと共に訪れた神様は、まだ新しい着物を纏いくるくると嬉しそうに回っていた。

「なんだ。衣桁いこうの神ではないか。どうしたんだ、その振袖は」

優雅にお茶を飲んでいた別の神様が、目を細めて衣桁の神を見る。

「今度、うちのお嬢様が成人の儀を迎えるのよ。これはその時に着る振袖」

「成人の儀か。ほぉ。今は着物を仕立てる人間は少ないというに、衣桁の神の家ではちゃんと仕立ててたのか」

「そうよ。なんたって私がこうして健在してるくらいの家の人間だもの」

嬉しそうに胸を張る衣桁の神に、別の神様たちも嬉しそうに笑う。

かの国で着物がまだ日常だった頃、着物を掛けるのに用いる衣桁は当たり前のように存在していた。

しかし着物が日常ではなくなるにつれ、衣桁をはじめ多くの和家具が姿を隠し、それとは逆に和家具を知らぬ人間が増えていく。

それでも大切にされていれば、この衣桁の神のようにいつまでも元気だ。

「それにこの振袖、お嬢様が自分のお金で仕立ててもらったのよ。頑張って働いてたもん」

「ほぉ。しかし、よいのか。勝手に持ち出したりして」

「いいの、いいの。大丈夫」

そう言って衣桁の神は、けらけらと笑う。

「だって、この振袖まだ生まれたばかりで魂も入ってないんだもん。だから私たちの祝福をいっぱい詰め込んであげるのよ」

「なるほどな。それでは衣桁の神の家の娘が幸せであるよう、しっかりと祝ってやらんとな」

「うん。祝って! 祝って! それでね、それで・・・いつの日か絶対、この振袖にも霊魂が宿って私たちの仲間入りをすると思うんだ」

うちの古い着物はみんな神様になってるもん

誇らしげに笑う衣桁の神の姿を、別の神様たちは微笑ましく思う。

この衣桁の神を見ていれば、その家に住まう人間の真の姿が見えてくる。

着物を、物を大切にし、神を、先祖をきちんと敬っているのだろう。

そうでなけでば、ただの衣桁がここまで素直で元気のよい神になどなろうはずがない。



きらきらと輝く神々の集う庭。

鮮やかな振袖も纏った衣桁の神が、嬉しそうにくるくる舞い踊る。

大好きな人間の娘の行く末に祝福あれと。



今日の神々の集う庭はいつになく華やかで、そしてたくさんの優しさに満ちています。



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