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救命戦隊タスケルンジャー  作者: 救命戦隊タスケルンジャー 記録課
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「うっ…!」

「おいおい。まだ生きてるよ、こいつ。」

相方の三下が汚いものを見るような目で、眼下に倒れてうずくまる小男に唾を吐きかける。

「本当、勘弁してくんねーかな…。さっさと死んでくれよ…。」

もう、日が傾いてきている。

夜は温度がなくなるから早く帰って飯にありつきたいと考えた男は、そろそろ遊ぶのをやめてカタをつけようと構えた。

「ちょーーーい待ちィ!!」

腕を降り下ろしとどめを刺そうとした瞬間、大きい声が聞こえ男の動きが止まる。

「…何だ、テメーら。」

気だるそうに男が問うと、声の主は待ってましたと言わんばかりの威勢で見栄を切り始めた。

「善も悪もない交ぜにただ不殺のみを貫く五人組、その名も救命戦隊ツヨインジャーだッ!!」

「はぁ?おふざけなら、今のうちに帰った方が良いぜ?俺は優しいからよ、今なら見逃してやらんこともない。」

こんな面倒臭そうな奴等を相手にするより、今はターゲットの抹殺を計りたい。

殺し屋稼業も、楽ではない。

今日明日の食糧も命も、保証されてはいないのだから。

第一、殺しても金にならないような奴を殺す趣味はない。

そう思った男は、さっさと怪しい五人組を追い払おうとした。

「何を言う!失われる危険のある命を前に、俺達は絶対に退かない!燃え盛る炎の命、ツヨレッド!!」

「そうだ。僕達はたとえ無理強いしてでも、生かすことが使命なんだからな。流れ行く水の命、ツヨブルー!」

「てかやっぱ、この名乗り口上やらなあかんのん?…はぁ、しゃーないなぁ。唸り猛る土の命、ツヨイエロー!」

「…吹き荒れる風の命、ツヨグリーン…。」

「フッハハハハ!!怪しく忍ぶ雷の命、ツヨパープル!!」

「もう一度言う!俺達が、救命戦隊ツヨインジャーだッ!!」

頼まれてもいないのに一人ずつ名乗ってポーズを決める五人組は、男の思惑とは裏腹に戦う意思を表した。

見た目はそれぞれの担当カラー(?)のおかしな覆面とボディスーツで、完全に文字通りの色物だ。

横で呆気にとられている三下を他所に、「…仕方ない、特別強そうな訳でもないしさっさと始末するか」と男は呟き、渋々戦うことを決断した。

「…三下、ターゲットを見てろ。」

男は溜め息をつき指示を出すと、三下は我に返って頷き再び小男に視線を移す。

「…フン、中々の個性派揃いじゃねーか。良いぜ、やれるもんならやってみな。」

「挑むところだッ!!行くぞ、みんな!」

男の挑発に乗って、レッドが皆を鼓舞する。

「じゃあ、まずは僕から。押し流せ、『津波』!」

ブルーが両手を大きく振り上げると、巨大な波が出現した。

「良し今だ、グリーン!」

レッドが横からよく通る声で指示を出し、それを聞いたグリーンが何かを仕掛けようと構えているのを男は確認した。

「チィ、なめてもらっては困るな。そんな牽制技では、俺達は倒せないぞ。こんなふうに、しないとな。」

男が掌底を繰り出すと波は一瞬動きを止め、逆方向へと押し寄せる。

「任せとき、俺がやるわ。『畳返し』!どや!?」

イエローが足元を叩くと地面がひっくり返った。

それは壁のように立ち塞がり、波は砕けて消えた。

「防いだか。ならば、これはどうだ!」

男が手で銃の形を作ると、無数の弾丸が五人に襲い掛かる。

「…『風雲』。」

「何…!?」

グリーンの呟きと共に出現した風の塊が弾丸を吹き飛ばし、グリーンは宙に浮き上がった。

侮っていたが意外とやるようだという認識を、持ち始める男。

「フッハハハハ!!『雷の裁きイィ』!!」

強い風に視界を塞がれた一瞬に、パープルが目の前に接近していた。

バチバチと音がする視認可能な程の光を両手から放ち、それを組んで大きい拳を作り振り上げる。

両腕でガードしたものの威力は凄まじく、男はよろけて息を荒げた。

「くっ…中々やるな。だが、残念だったな。これで終わる俺じゃねーぜ!」

「いや、お前との戦いはこれで終わる。なぜなら…失われる危険のある命は、もうないからな。」

ダメージを隠して強がる男だったが、レッドは戦う意思を失った様子で言い切った。

「何…ッ!?三下、お前…ッ。」

「わりぃ…。動きが読めねぇんだ、こいつ。それで…。」

見ると相方はグリーンに拘束されており、最早ターゲットは自由と言っても差し支えない状態だった。

「チィ、役立たずが。」

「あれ、お前も同じなんちゃうん?」

吐き捨てる男に、イエローが容赦ない言葉を浴びせる。

先程まで何とか強がっていた心にとどめを刺すには、充分な威力だ。

「俺は…!!」

「よせ、事実を軽々しく言うことはこいつに致命傷を与えることになりかねない。もしお前の言葉が元でこいつが自殺でもはかったら、どうするんだ?」

「せやな、悪かった。わざとちゃうねん、許してや。」

何でも良いから何か言い返そうとした男の言葉を遮りブルーがイエローを諌めたが、それがだめ押しにしかなっていないことにブルーは気付いていない。

それを分かった上で反省の色もなく謝るイエローに、男はプライドを傷付けられて腸が煮え繰り返った。

「お前ェ…!!」

「さあ、もう行くぞ。」

最後の力を振り絞り殴りかかろうとする男をイエローが事も無げに躱すと、小男を保護したレッドに呼ばれて二人は男に背を向けた。

「お前らも明日からは、人殺し以外の何かをして生きろよ。そうすれば、俺達はこれからお前らが何をしても干渉することはないから。」

レッドは男にそう言うと、自分達が救った命を解放しようと小男の方を向いた。

「君も、もう大丈夫だ。立てるか?…よし、立てるな。では、もう行くと良い。」

小男は無愛想に一礼すると一目散に走りだした。

それを見送ると、五人も夕日へ向かって歩きだし見えなくなった。

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