5(最終話)
「高橋、サイテー!!」
「今のはないよ!!」
「言葉、選べ!!」
俺の友人、高橋は今主に女子から非難をあびている。
っていうか、サユは誰にあげるつもりなんだろうか。
何となく、腹がたった。
サユ、じゃなくて、その相手に。
素直にサユを追いかけられない自分に。
「あー…!!」
俺が声をあげながら髪をくしゃくしゃ、とかくと、何だか教室が静かになった。
高橋がサユにちょっと好意を持ってるのは知っていた。だからサユだけ、名前呼びなのも。でも。
「わりぃな高橋」
ボソリと高橋に告げた。
なんかムシャクシャして、サユが俺じゃないやつと親しくしてるのが腹がたって、気が付いたら足が動いていた。
サユはきっと、今傷付いているから。
きっと、一人で泣いているから。
そんなことをさせたくないと思ったんだ。
「サユ!!」
「サユ!!」
「え?ユズルくん?」
少し出ていた涙を擦って彼の名を呼んだ。
「やっぱり、泣いてる……」
「ユズルくんも、思うよね」
「ん?」
ユズルくんは隣に座って頭を撫でてくれた。優しくされると余計に泣きそうになる。
「あたしがチョコあげるなんて……」
「俺は、サユがあげたいならあげればいいと思う」
でも、とユズルくんは言った。
「サユとそいつがうまくいっても、俺は祝福できないかな」
「え?」
「は?」
思わず聞き返した。そしたらユズルくんも聞き返した。
「あたしがあげるの、ユズルくんだけど……」
あたしの携帯に入ってる男の子はユズルくんだけだ。
彼の拍子抜けた表情に笑みがこぼれる。
「お、れ?」
「うん……」
頷いたあたしにユズルくんは何度も不思議そうに見た。
「くれんの?」
「うん」
ユズルくんは何度目かの確認のあと、綺麗にわらった。
「ありがとう」
あたしは綺麗にラッピングしたそれをユズルくんに渡した。
「あの、ね。受けとってくれてありがとう」
「いや、こっちこそ」
ユズルくんは数回呼吸を繰り返して決意したように笑った。
「今度、二人で、どこか行こうか」
その言葉にあたしは恥ずかしさを隠すように笑った。
End
ハッピーバレンタインです^^
皆様に幸せがふってきますように★