magica 18
立ち並ぶ高層ビル。
行きかう人の密度が高い十字路。
空気は汚れている。
「次は、俺の夢?」
鈴守は現実の世界の夢をみていると認識した。
辺りには自動車や信号機。
鈴守を見下ろす建築物。
そんな風景の中心に一人立っていた。
「夢じゃない。僕たちは現実に戻ってきたんだ。」
「朱雀・・・」
振り返ると、朱雀がそこにいた。
「夢じゃない?」
「あぁ、夢じゃない。ここは本当の世界。magicaの世界じゃない」
まさか・・・
そんな思いがよぎったときだった。
「鈴守?!お前、病院に搬送されて意識不明になっているはずじゃ・・?!」
学校の友達が数名、鈴守の近くにいた。
何故か、崎守もその場にいた。
「・・・うそ・・・だろ?これは、本当に現実なのか?」
「そう。僕たちは確かにここに存在している。」
「肉体、意識、総ては偽りだったんだ。」
「・・・朱雀、お前はなんでここにいる?何か目的があるのか?」
「・・・世界の破滅さ。」
「破滅だと?」
「そう、こんなカラクリばかり存在して、訳のわからない世界なんて、僕の知っている世界じゃない。ここはもう現実とは呼べないほど進化した世界だ。」
「それは・・・勝手というのじゃないのか?」
「黙れ小僧!お前に俺の何が分かるって言うんだ!!」
朱雀は、式神を召喚させて、鈴守を捉えた。
「鈴守!」
友達が、通行人が・・・連鎖で鈴守のことを呼んでいる。
「・・・認めて。」
「何?」
「認めなよ、朱雀。ここは確かに現実だ。時代はもう平成なんだ。明治じゃない。」
鈴守はロッドを出して、式神を振り払い、風の魔法で朱雀より上空へ飛び上がった。
「この世界は化け物だ・・・なんて恐ろしい・・・。人は核を作り、この世界自体を破壊しようとしてる・・・。お前もそうなんだろう!黒羽!!!」
「うわっ?!」
朱雀は印を結び、妖怪退治用の九字で鈴守を仕留めた。
流石に人間用じゃないため、鈴守にはかなり効いているようだ。
声にならないようだ。
「本の中でも・・・現実でも・・・総てが奇怪すぎて・・・」
「・・朱雀は、寂しかった・・・それとも、・・・恐かった?」
「!」
落ちてしまいそうな意識の中、鈴守は優しく問いかけた。
「君は、magica=On Line=を開いて、本の中に吸い込まれてしまった・・・同様に、俺も吸い込まれた・・・つまり、僕らは連鎖していたんだ・・・」
「連鎖・・・」
「事の始まりは総て、想像されし人間にあった。」
声がしたほうへ二人が振り向くと、そこにはセシル一行がいた。
突然現れた一行に辺りはざわつき始める。
「皆、どうしてここに?」
「魔法回路なら何処へでもいける。たとえ行き先が、非現実世界でも、夢の中でも、死の世界でも、記憶の中でも・・・」
セシルはゆっくりと二人へ歩み寄ってきた。
「朱雀翔・・・貴方はイリーガルですね」
セシルがそう問いただすと、朱雀は同様したように目を泳がせた。
「イリーガル?」
「そう・・・私はイリーガルの存在を、私と同様に作られた存在だと思っていました。ヘルさんの話でもそのようにしか教えられていませんでした。しかし、魔法回路は嘘をつかない。」
「どうゆうことなの?」
「・・・私は、魔法回路を通じてイリーガル誕生の日へ飛び立ちました。しかし、そこで見たのは研究所内で私のように試験管受精だとか、遺伝子改造だとかそうゆうものではなかった。廃墟になった研究所内で一人の男の子が、邪気に取り付かれていた。それが、貴方、朱雀さんだったんです。そうですよね?」
そうセシルが問うと、朱雀は微笑した。
「・・・フフッ・・・あはははははは!!!そうさ!僕はイリーガルさ!!」
狂いだしたように朱雀は高笑いしだした。
それを見ていて鈴守は心が痛くなる。
「そして朱雀、貴方は未来の黒羽鈴守と同一です。元は黒羽も朱雀という苗字のようですし・・・。鈴守も朱雀の記憶の一部を持っているはずだ。鈴守は生まれ変わりなのだから。だけど、貴方ほどネガティブではないですがね。」