magica 16
「・・・そうか・・・この物語の主人公は、貴方だったのですネ・・・鈴守クン。」
「俺が・・・主人公?」
「物語には必ず、主人公が存在します。主人公が動かなければ、物語は進まない。」
「・・・誰が主人公だっていい。それよりエドワード。アンタ、一体何をたくらんでいる?」
鈴守が聞くと、エドワードは黙りこくってしまった。
しかし、少ししてから口を開いた。
「エドワードなんて存在するわけいだろう?」
「え?」
カトコト言葉が突然、日本人らしい喋り方になった。
エドワードは俯いているので、こちらからは表情は分からない。
「あははは!おっかしいなぁ・・・何で人ってそこまで本気になって火を消そうとするのかな?僕は火事が大好きなのに・・・」
徐々にエドワードの姿が変化していく。
短い金髪は少し長めの白髪に近い色に変化し、洋服は和服の着物に変わっていった。
そして、そこには一人の男性が現れた。
年齢は鈴守と同じくらい。
鈴守と同じ日本人とみれる。
「初めまして・・・僕は朱雀翔。」
朱雀翔と名乗った彼は、赤い瞳をレイスに見せた。
白髪に赤目というところをみると、外国人と日本人の間に生まれたのだろうと思われる。
「何だか明治時代の人みたいな格好してるな・・・」
「おや・・・僕は明治時代の人ですが?」
「えぇ?!」
それを聞いた鈴守は驚いた。
何故こんなところにそんな昔の人がいるのだろうか・・・。
「驚いているようだね?それも無理はない。普通、もう明治時代の人がこんなに若々しく生きてるわけないもんね?」そりゃそうだ。
ましてや、生きてるとしたら大正時代の人くらいだ。
「何でだろう?君を見ていると、僕と同じ気配を感じる…」
朱雀は、ゆっくりと一歩一歩、鈴守に近づいてきた。
鈴守は何故か足が動かないようで、一歩も引こうとしない。
むしろ、朱雀が近づいてくると、鈴守の瞼が重たくなり始めている。
そして、朱雀が鈴守の頬に触れると、鈴守は完全に瞼を閉じてしまい、足から力が抜けていき倒れこんでしまった。
ホーリィがすぐさま駆け寄る。その後に続いて二人もやってくる。
意識確認をしてみるが、反応はない。
「…鈴守…君は…――」
朱雀が何かを言いかけていたが、朱雀は消えてしまった。
「レイス!しっかりしろ!!」
三人の声は、鈴守には届かない。
『ここは…?』
はっきりしない意識の中、鈴守は今、自分がいる場所を確認した。
だんだんはっきりしてくる視界に飛び込んで来たのは、ルインの街の風景ではなかった。
それは、鈴守の住んでいた現実世界に似ている。
レンガ造りの家。
今は通らない列車。
着物を着た人と、洋服を着た人。
少々不似合いだ。
『…教科書で見たことがあるような。』「走れー!!あいつ、廃刀令を無視した流浪人だ!!!」
突如、鈴守の隣で警察の制服に似た服を着た男性たちが走り過ぎていった。
『…剣客警官隊?』
一瞬、昔放送されていたアニメを思いだした。
『まさか…明治?』