magica 11
ヴェクセルは詳しく話しをしてくれた。
「この街には大昔に封印された魔物がいるんです。」
大昔がどれほどのものか解らないが、ヴェクセルたちが生まれるずっと前にこの街には魔物が当たり前のように存在していたという。
当時生きていたルインの住人の中で、スウィーパーと呼ばれる魔物退治屋稼業の者がこの魔物を退治していたらしいが、ある時代からか魔物が増殖し始めて来て、手がつけられなくなったために、魔物を何箇所かに分けて封印したらしい。
今、ヴェクセルが知っている限り、4つはただの魔物が封印されているだけだが、数は半端ないらしい。
しかし、一箇所だけ一番凶悪な魔物がいるらしく、その封印が解けてしまうのが一番危険らしい。
「そう・・・なの。この街には・・・そんな秘密があったんだ。」
「このことは街の住人は知らないんです。一部の種族と、ルーン一族、そして国家の犬しか知らないことだから。だから、できるだけ内密に、災いの蕾が花開く前に阻止したいと思っています。」
珍しく真剣に物言うヴェクセルに圧倒されつつも、もちろん鈴守とホーリィも頷いた。
「なるほど・・・だから子供達の前から俺たちを拉致ったんだね。」
「すみません、少々手荒になってしまいました。子供達にも後で謝らなくては・・・」
「ふむ・・・となると・・・後は調査だね・・・。とりあえず今持っている手がかりはクレイバー・リーヴ大聖堂とエドワード司祭・・・まぁ、何処に大聖堂があって、司祭がいるのかはまだ全然はっきりしないけど」
「えっ?クレイバー・リーヴ大聖堂?」
鈴守の口から出てきた言葉にヴェクセルはピクリと反応した。
「ヴェクセル知ってるの?」
「・・・知ってるけど・・・大聖堂は確か・・・廃墟になりましたよ?」
「廃墟でもいいから!何処にあったの、その大聖堂!」
鈴守はヴェクセルの肩を掴んで、詰め寄った。
流石のヴェクセルも焦っている。
「えと・・・中層の第0番区 ミスリアルガレッジ 闇ゲート裏回路 X29854L2 エリア零」
「・・・・・・名前長くない?」
と、言うか・・・ヴェクセルもよくそんな長ったらしい名前の地区を覚えていたものだと鈴守は突っ込みたくなったが、気力はないのであえて突っ込まなかった。
「えと・・・でも、第0番区って・・・何処に」
「あぁ、闇のゲートを使わないといけません。何しろ、『忘却の聖域』ですから。」
「忘却?」
「あの・・・セシルさんこれは一体どう対処するべきなんですか?」
硬直しながら、セシルの服を掴んでいる崎守。
隣にはロッドを構えて、少し焦りが見え隠れしているセシル。
「うーん・・・どうもこうも・・・まさかこんなことになるなんて・・・」
二人の周りを囲んでいるのは、物凄い数の黒い人影。
直立して立っているわけでなく、ユラユラとゆれながら、セシルと崎守を狙っている。
「怒れ 黒き天使よ 今ここに 最強と呼ばれたお前の 雷を振り散らせ!!」
セシルが呪文を唱え、ロッドを振り下ろすのと同時に雷が辺りに降り落ちてくる。
しかし、どんなに黒い人影にあたっても数はなかなか減らない。
むしろ、増えている。
「あっはは・・・これは困りました。」
「セシルさん!この状況笑う状況じゃないですよーッ!!しっかりーッ!!」
「だっ・・・て・・・どうにも一人じゃぁ・・・うぅっ。レイスー・・・」
べそをかいてしまう始末のセシルに崎守も困り果ててどうしようもなかったとき、背後から足音が近づいてきた。
ゆっくりと、優しい足音で。
「助太刀いたしましょう。」
そう声が二人の耳に届いた。
一体その声が誰のものかはわからないが、二人は近づいてくる誰かを待った。
徐々に近づいてくる足音と共に二人が見ている視線の先にいた人影が吹き飛ぶように消えていっている。
そして、誰かの影が見えてきた。
「大丈夫ですか?」
「あっ!貴方は・・・シオンさん!」
「紫苑さん?」
二人を助けに来たのは、以前ヴェクセルとレイスの争いを食い止めたシオンだった。
「細かい挨拶は後ですね。こんなに人形が溢れ出てきているとは思わなかったです・・・はぁっ・・・小賢しい!!!」
何処からかともなく細長いシンプルなロッドを取り出すと、シオンは近づいてきていた黒い人影を殴り飛ばした。
そしてロッドの姿を剣・銃・チェーンソーと、物騒なものに変えていきながら黒い人影を吹き飛ばしていく。
そして、あっという間に黒い人影は消えてしまった。
「ちっ・・・またややこしいことをしてくれたな・・・」
「シオンさんは・・・このことについて何か知っているのですか?」
「・・・実は・・・この街の封印が少しだけ解け始めて・・・同時に・・・『センター』が再起動してしまったようなんです・・・。」
「センター?」