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僕らの才能競争

作者: 紗夜時雨
掲載日:2026/10/05

才能豊かな優星と地道な悠磨。対照的な二人の部員が、部活の挫折や熱い本音の衝突を通して「努力と才能」「周囲の期待」に悩みながら自分だけの答えを探す青春劇。

僕らの才能競争



顧問「明日は卓球の県大会だ。それぞれのパフォーマンスをしっかり発揮できるように、今日はしっかりと休むように。レギュラー組は試合数も多いから特に気を付けるんだぞ。お前たちはこの学校の顔なんだからな。では、今日はこれで練習を終わろうと思う。」



顧問、はける


悠磨「明日が大会かー。緊張するなー。」

優星「そうだなー。ま、なんとかなるだろ」

悠磨「さすがエースは心持ちが違うな」

優星「まあな。」

悠磨「自己肯定感高すぎて気持ち悪いな」

優星「レギュラー上位を取ればお前もそうなるよ」

悠磨「うるせえよ!」

優星「悪い悪い」

悠磨「俺だって一応一生懸命練習してるんだからな」

優星「まあ、努力量でお前にかなうやつは、ここにはいないだろうな」

悠磨「ああ。練習ノートも人一倍メモってるからな」

優星「プロの動画を何回も見てるんだっけか?」

悠磨「ああ。常に新しいサーブとレシーブを練習してるよ」

優星「対戦するたびに引き出しが増えるから悠磨とは戦いづらいんだよなー」

悠磨「それが持ち味だからな」

優星「俺は昔からやってたからそれにとらわれてるなー」

悠磨「お前は引き出しは少ないけど、個々の技の精度が高いよな」

優星「ああ。俺はこれしかできねえからな。それとさ」

悠磨「うん」

優星「今日の顧問、ハゲてなかった?」

悠磨「やめろよ!いわなかったのに!」

優星「でも、お前もラケットで口を覆ってたよな」

悠磨「それはそうだけど」

優星「お前たちはこの学校の顔なんだからな(顧問の声真似をしながら髪をかき上げる)」

悠磨「ははは。もういいって」

優星「やっぱ、あの顧問は厳しいけどいじりたくなるよな」

悠磨「そうだな。厳しいからこそかもな」

優星「そうかもな。じゃあ、そろそろ帰るわ」

悠磨「おう、また明日な」


暗転

~県大会にて~


顧問「それでは、対戦カードを発表する。第一カードは県立桜ケ丘高校だ。各自、自分勝手な行動を慎むように。後悔しないように頑張ってくれ」


悠磨「県立桜ケ丘ってあの県内屈指の強豪じゃないか?」

優星「しっ。今は静かにしておけ」


顧問「続いてオーダーを渡しておく。各自目を通しておくように」


悠磨「うわっ。俺の相手、桜ケ丘の下位じゃん」

優星「お?なら勝てるかもしれないな」

悠磨「ああ。お前は誰とやるんだ」

優星「相手のエースとだな」

悠磨「お。エース対決ってやつか。いいオーダーだな。」

優星「ああ。どっちが本物かを思い知らせてやるか」

悠磨「かっこいいな。俺もチームに貢献できるように勝ちたいなー」

顧問「…失敗だ」

悠磨「え?」

顧問「悠磨はエースと当てて、優星は相手の中堅と当てるべきだった」

悠磨「どうしたんですか、いきなり」

顧問「強豪校のエースは必ず一勝をつかんでくる。ならばお前に負けてもらうしかない」

A「…どういうことですか?」

顧問「桜ケ丘のエースにうちの優星をぶつけても共倒れになるリスクが高い。確実に勝てる枠を拾っていくのがうちの戦術だ」

A「……それって、僕は相手のエースに負ける前提ってことですか?」

顧問「勝ち目がないと言っているんじゃない。チーム全体で3枠取って勝ち上がるためのオーダーだ。悠磨、割り切ってくれ」

A「……でも、僕だって勝つために毎日練習してきたんです!」

顧問「感情論を言うな。お前が一番わかっているはずだ、うちのレギュラーで誰が一番実力下か。チームのために自分の役割を果たせ」

A「だからと言って、そんな言い方は」

顧問「A,自分の身の程をわきまえたほうがいいぞ」

A「…はい」

顧問、去る


B「あの言い方は少しひどいよな」

A「絶対あのエースに一矢報いてやる。そしたら、あの顧問も評価が上がるだろう」

B「応援してるぞ。頑張れ」


相手のエース、出てくる


A「よろしくお願いします!」

エース「よろしくお願いします!」


二人とも頭を下げた後、握手をする

ラリーを始める


暗転


A「結局、1セットも取れなかったな」

B「よく頑張ったな。お疲れさん」

A「ありがとう。でも、あいつはサーブもフォロースルーがきれいで、レシーブもコースが鋭かった。あれはエースの器だよ。」

B「萎縮すんなよ。お前が負けた分は俺が取り返す」

A「ああ、頼んだ」

優星「任せとけ」


B,ラリーを始める

暗転


B「ああ、楽しかった。いい勝負だった」

A「やっぱりお前はすごいな。」

B「なんとなく相手の返球に対応できたんだよな。悠磨も応援ありがとな」

A「ああ。でも、ほかのチームメイトも黒星続きだったから、結局負けてしまったな。」

B「強豪校だから仕方ない。あ、そうだ。他のチームメイトも試合終わったみたいだし、顧問に試合結果報告してくるな」

A「ああ。ありがとう。」


悠磨「結局、俺は努力はできても才能があるやつには勝てないんだな。昔からやってるとかなんとなくできるだなんてずるいな。俺は何も持ってないのに」


優星,報告する道中でエースと出会う。


優星「いや、敵ながらお前はつよいな」

エース「お前も十分強いだろ」

優星「お前は1年からレギュラーをとって、いつも朝早くから夜遅くまで練習してるんだろ?」

エース「一応な。ノートも毎回丁寧に書いてる。今はもう4冊目だな。」

優星「4冊目?おれはまだ1冊目の途中だぞ?」

エース「それはお前が手を抜きすぎなんだよ」

優星「そうか。そうだな」


エース、優星去る

悠磨「……なんだよそれ。才能がある奴が、俺より努力してたら……俺のこのノート、なんの意味があるんだよ……。」


暗転


顧問「今日はみんなよく頑張ったな。一人一人全力を尽くしていたと思う。では今日は解散だ。後日反省会を行うので必ず参加するように」


悠磨「はあ、結局初戦敗退か」

優星「仕方ない。でも、みんな全力を尽くしたはずだ」

悠磨「そうだな。でも、やっぱり思うんだ。俺はどれだけ努力してもレギュラーの下位なのかなって」

優星「・・・」

悠磨「いつまでたっても勝利を期待されなくて、誰かに負けることを望まれている。それが悔しくてたまらない。たとえそれがチームのためになるとしても、俺はやっぱり勝ちたいよ。」

優星「…お前は大事な点を見落としてる」

悠磨「は?何も見落としてない。」

優星「いや、見落としてる。お前は自分を大切にしていなさすぎる」

悠磨「…どういうことだ?」

優星「お前的にはこの試合はどう思ったんだ」

悠磨「俺は…この試合のために全力で努力したし、自分の力を発揮できた。でも、、、」

優星「でも?」

悠磨「試合に大敗したし、チームに迷惑をかけて」

優星「それは関係ない。」

悠磨「は?関係あるだろ!チームが負けたらもう次はないんだぞ?大事に決まってる!」

優星「お前がどんだけやってきたかは俺が一番見ていた。それで十分だろ」

悠磨「十分なわけないだろ! 負けたら終わりなんだよ!スポーツの世界では、結果しか見られない!」

優星「結果だけじゃなくて過程も大事だろ」

悠磨「そんなわけない! 認められたいんだよ! お前みたいに勝って、すげえって思われたいんだよ!」

優星「(一瞬言葉に詰まり、大声を出す)俺だって必死なんだよ!」

悠磨「……は?」

優星「エースだから勝って当たり前とか言われてさ。負けたら俺の価値なんてないんだよ。俺だって、誰かに認めてほしいんだよ! お前だけが苦しいと思うなよ!」

悠磨「……優星」

優星「…認めてほしいのは、お前だけじゃない」

悠磨「でも、俺は一番になれたことがない。勉強も部活もなにもかも。いつもいいところまではいくんだ。俺は頂点にたてたことはない」

優星「だから、はなっから間違えてんだよ。一番だからどうって話じゃない。お前はどう思ったんだ?」

悠磨「俺は頑張った。だけど、認められない自分が許せないんだ」


優星、逃げようとする悠磨を止めようとするも振りほどかれる。

B「A!」

悠磨「…ごめん」


暗転


悠磨「結局、何が欲しいんだろうな。俺。」

顧問「お、悠磨。こんなところでなにをしてるんだ?」

A「あ、お疲れ様です」

顧問「Bから聞いたぞ。お前たち喧嘩したんだってな」

悠磨「…はい。」

顧問「一人で帰るつもりか?試合前に言っただろう?自分勝手な真似をするなと」

悠磨「はい。」

顧問「悠磨,お前はすこし傷ついたふりをしすぎているな」

悠磨「・・・」

顧問「才能がないものは、苦しみとずっと隣り合わせになることとなる。」

悠磨「やっぱり僕は才能がないんですか?」

顧問「ああ。お前には卓球の才能がない」

悠磨「…わかってました。初めから動きが遅かったですし、周りよりも上達が遅かったのは実感していました。」

顧問「ああ。」

悠磨「女子との交流戦でも黒星がつきましたし。」

顧問「そうだな。」

悠磨「これからどうしたらいいんでしょうか?もう、卓球をしたくありません」

顧問「好きにすればいい」

悠磨「…はい」

顧問「やめるときは一声をかけるように」

悠磨「はい」

顧問「それと、悠磨」

悠磨「はい」

顧問「苦しいなら苦しいと言うことを忘れずにしろ」

悠磨「あ、、、はい」


悠磨,去る


家

悠磨「…」

母「今日は元気がないわね。」

悠磨「うん」

母「これだけ努力しているんだもの。次はきっと勝てるわよ」

悠磨「もう、卓球はやめるよ」

母「…え?なんで?あんなに卓球が好きだったじゃない」

悠磨「なんか、もう疲れたんだ」

母「…そう。どうしてやめようと思ったのか教えてくれる?」

悠磨「僕には才能がなかった」

母「でも、悠磨はレギュラーを取ってるじゃない。才能がないとレギュラーはとれないと私は思うわ」

悠磨「結局は才能が有って努力してるやつらには勝てないよ。ずっと後ろを追いかけるのは疲れたんだ」

母「ねえ、悠磨」

悠磨「なに?」

母「あなたは本当はどうしたいの?」

悠磨「え?」

母「あなたはもしかしたら才能がないのかもしれない。でもね、悠磨にはまだしたいことがあるんじゃない。」

悠磨「…あった。でも、もうあきらめたんだ。こんなに苦しいくらいならもう、やめてしまったほうがいい」

母「でもね、私はあなたには才能があると思うわ」

悠磨「慰めならいらないよ、母さん」

母「そうじゃないわ。あなたには卓球を愛すことができている」

悠磨「そんなのだれだってできる。卓球が嫌いな人間なんて卓球部にはいないよ」

母「そうかしら。好きだからそれほどまで努力できるんじゃないかしら」

悠磨「努力なんて誰でもできるよ」

母「好きだと思えることも、努力できることも才能と言えるんじゃないかしら」

悠磨「…努力できることが才能?」

母「ええ。努力できるだけでもうらやましがる人はいるんじゃないかしら」

悠磨「…確かに」

母「私には卓球のことは詳しくわからないけど、悠磨が後悔しない選択をしてね」

悠磨「うん。ありがとう。母さん」

母、「じゃあ、私は寝に行くわね」

悠磨「うん。おやすみ」

母「お休み」

悠磨「…努力と才能は何が違うんだろうな。わかんないや」




暗転

優星がいるのを悠磨が後ろから声をかける


悠磨「なあ、優星。」

優星「悠磨!お前心配させやがって!」

悠磨「…。昨日は言い過ぎた。ごめん。」

優星「何も気にしてない。別にいいよ。」

悠磨「実は顧問と母さんと話したんだ」

優星「なんて話したんだ?」

悠磨「いろいろだよ。」

優星「それの中身を知りたいんだよ」

悠磨「また、気が向いたら話すよ」

優星「少し、顔色が明るくなったな」

悠磨「そうか?あんまり自覚ないけど」

優星「気持ちが晴れたんじゃないか?」

悠磨「晴れたわけではないけどな。少しは自信が出てきたってとこだな。」

」

優星「ははは。まだまだ葛藤中ってわけだ」

悠磨「まあ、そうだな。・・・なあ、才能と努力って違うと思うか?」

優星「才能ごり押しの俺に聞くなよ。」

悠磨「それもそっか」

優星「失礼な。俺だって努力はしてるよ」

悠磨「そっか。そうだな。」

優星「ああ。」

悠磨「俺ももう少しだけ頑張ろうかな」


悠磨,優星たわいもない会話をしながらフェードアウト



悠磨(悠磨) 由来 ゆっくりとだが自らの力を磨く努力ができる人間であることから。

優星(優星) 由来 生まれた時から優秀であり、才能がある人間を表している。流れ星のように誰かから期待を背負わされる宿命を暗示していることから。



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