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第6話 メアリー

 メアリーはエースライダーの座をかけて信二に挑戦しようとしていた。もちろん信二は受けて立つつもりだ。


「わかった。ちなみに俺が勝ったら?」

「私を好きなようにしていいわ。それでどう?」


 レーシングスーツの上からもそのグラマラスな体がわかる。


「いいのか?」

「ふふん。後悔するのはそっちよ!」


 メアリーは負ける気などないようだった。ヘルメットをかぶりながら信二に言った。


「コースを3周。いいわね!」


 彼女はマシンを走らせて先にピットを出て行った。


(生意気な女だな。ちょっと目に物見せてやるか)


 信二もヘルメットをかぶってマシンを走らせた。前方にはメアリーのマシンが見える。信二のマシンが後ろから来たのを見てスピードを上げる。いよいよ勝負の開始だ。


(まずは彼女の走りでも観察してやるか・・・)


 1周目はぴったりとメアリーのあとについた。一応、アウトインアウトの基本はできているようだ。まだ甘いものの・・・。あれほどのことを言うくらいだからまずまず走れるようだ。信二は無理に抜こうともせず、そのままの状態を維持した。このままメアリーに先を行かせて2周目に突入する。


(直線では向こうの方が速いな・・・)


 メアリーのマシンは本年型だから信二の昨年型よりパワーは大きい。直線では差がつけられる。しかし信二はコーナーを攻めてその差を縮めていく。それでまたメアリーの後ろにぴったりついた。

 メアリーはそれで少し焦っているようだ。スピードを上げて何とかシンジを引き離そうとする。だがコーナーの侵入速度が速すぎてスピードに振り回されている。メアリーがいくらあがいても信二には余裕だ。ただぶつからないようにだけ注意する。


(いよいよ3周目だ。ここで見せてやろう。俺のテクニックを)


 相変わらず直線で差をつけられる。だがそれはコーナーで取り戻せる。そして深くリーンインしてメアリーを抜いていく。こうなったら信二に追いつけない。みるみる差がついていく。

 最終コーナーを曲がって最後の直線となる。信二はアクセル全開にしてスピードを上げていく。そしてゴールした。メアリーは全く追いつけないままだった。


 信二はピットに戻った。そこにはアドレア女王が待っていた。


「シンジ。見事だったわ。あなたならやれるわ!」

「ありがとう。君が昨夜、俺に元気をくれたおかげだ」


 信二は意味ありげにそう言っておく。それに対してアドレア女王はふっと微笑を残して行ってしまった。


「相変わらずあっさりしているな」


 信二はふっと息を吐いた。それに対して侍女のサキの方が信二に色目を使っていた。


 ピットに遅れてメアリーが戻ってきた。ヘルメットを叩きつけるように置くと信二のそばに来た。


「完敗だわ。あなたには敵わない」

「君もいい走りをしていた。きっともっと速くなる」


 信二は笑顔でそう言ってやった。するとメアリーはやっと笑顔を見せた。



 今日の練習はそれで終わりとなった。シンジは王宮に戻らず、チームの宿舎に泊まることになった。その方がサーキットに近くて便利だからだ。

 宿舎は古くなったホテルを買い上げて、それに当てていた。そこでチームのみんなと共同生活をすることになる。

 信二は2階の角部屋をあてがわれた。広くはないが、ダブルベッドにトイレやシャワー完備。ちょっとしたテーブルセットもついている。


(まあ、ワンルームマンションよりはいいか。ちょっと古いが・・・)


 そして食堂で信二の歓迎会が開かれた。そこにはボウラン監督やスタッフなど、もちろんメアリーたちライダーもいる。

 皆がワインを酌み交わし、大いに飲んでかなり酔っぱらっている。信二は酒に強いのであまり酔わない。その彼にメカニックのブライアンが絡んでくる。


「シンジ! 今日の走りはよかったぞ ヒクッ!」

「それはどうも・・・」

「あれなら優勝できるだろう・・・って思ってないか? ヒクッ」

「まだこれからですから・・・」

「そんなに甘くないぞ。ヒクッ。でもな俺たちがいいマシンに乗せてやる」

「それはどうも・・・」

「おまえには俺たちがついている。ヒクッ」


 酔っ払いの相手に辟易していた。それで宴会を抜け出してベランダに出た。そこは前の世界と同様、美しく星がきらめいている。


「前世では果たせなかった夢をこの世界で果たせるのか?」


 シェラドンレースはこの世界の最高峰のホバーバイクのレースのようだ。これに勝つということは世界MotoGPで勝つことと同じなのだろうか・・・そんなことを考えていた。


「シンジ。ここにいたの?」


 後ろから声をかけてきたのはメアリーだった。


「ちょっと風に当たりたくてね」

「私もそうよ」


 メアリーが信二の横に来た。


「星がきれいね」

「ああ、そうだ。俺がいた世界では星をつなげて人物や動物や物に見立てたんだ。そこで物語を作った」

「そうなの。どんな話があるの?」

「あの3つが並んだ星なんかはオリオン座っぽいな。オリオンという男がいろんな女性と恋に落ちるんだ・・・」


 信二はオリオンのことをよくは知らない。半分でまかせだったが、メアリーに面白く聞かせた。


「・・・星座にはこんな伝説がたくさんある」

「おもしろいわね。ねえ、私たちも伝説を作らない?」

「どんな伝説?」

「世界を席巻するの。でもその前に・・・」

「その前に?」

「約束を果たさないとね」


 メアリーは信二に抱きついていきなりキスをした。信二はそれを受け止めた。星空の下で何度もキスを交わし、そのまま信二の部屋になだれ込んだ。その夜、信二とメアリーは2人だけの熱い夜を過ごした。




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