第4話 秘められた一夜
いよいよ女王様と一夜を過ごす・・・
信二は部屋に案内された。客室だろうが、やはり老朽化して壁にひびが入っている。
「ベッドは・・・」
信二はベッドの状態をみてみた。ギーギーと音がするが程よい弾力がある。
「さあ、いざ!」
灯りを消して裸になってベッドにもぐりこんだ。レースクイーンやらタレントやら女優の卵やらは相手にしたことはあるが、高貴な方とは初めてだ。それも女王様ときている。さらに初めてだという・・・期待がいやがおうにも高まる。まずはどうやって・・・頭の中でシミュレーションしてみる。すると、
「トントントン」
ドアがノックされた。いよいよのようだ。
「入って来ていいぜ。部屋は真っ暗にしてあるから」
信二がそう言うとドアが開く音がして入ってきた気配がした。そしてそのままベッドにもぐりこんできた。
「女王様・・・」
信二が話そうとすると指で唇を抑えてきた。
(言葉を交わさずにしたいということか・・・よほど恥ずかしいんだな・・・)
信二はその意図をくみ取ってさっと抱きしめた。長身と思っていたがそれほどでもない。やせ型に見えたが肉付きもほどほどある。
(では楽しませてもらうか・・・)
信二は興奮を抑えきれなかった。
◇
気がつくと朝になっていた。昨夜は激しかったから深く眠ってしまったようだ。隣にはもう誰もいない。信二は起き出して窓を開けた。ここの朝日も清々しくて気持ちがいい。
「トントントン」
ノックされてドアが開いた。
「朝食のご案内に・・・女王様もご一緒です」
サキがドアから顔を半分出しながらそう言った。なにかもじもじして恥ずかしそうだ。
「わかった。すぐに行く!」
信二はそう返事をしておいた。
(そういえば食事をしていなかった。あのことで興奮してすっかり忘れていた。今頃になって腹の虫がぐうぐう鳴っている)
信二は急いで服を着た。
「さて。女王様とご対面だ。どんな顔をして俺を迎えるかな」
あれから信二はコトを行った。顔も見えない真っ暗な中、いつものようにテクニックを駆使して・・・。確かに初めてのようだった。だがその乱れっぷりといきっぷりはすごかった。ベッドが激しく揺れてギーギーと大きな音を立てていた。清楚だと思っていたが、あそこまで激しいとは・・・
(人は見かけによらないものだ)
信二はそう思わざるを得なかった。
食堂ではすでにアドレア女王が席に着いていた。長机で何人も座れそうだが、朝食が用意してあるのは2人分。アドレア女王と信二の分だけだ。それも机の端と端で距離を開けて向かい合っている。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
アドレア女王様はそうあいさつした。その表情に恥ずかしさなど一片もない。昨日のことなどなかったかのように信二に普通に接している。
(昨夜はあんなことがあったのに平然としている。相当なタマだ。あのことはなかったことになっているのか? よく眠れたも何も・・・一番わかっているじゃないか)
そう信二はそう思いながらあいさつを返した。
「おはようございます。おかげさまで・・・」
「では朝食にしましょう。何もありませんが・・・」
豪華な朝食が出ると思い込んでいたが、実際に出てくるのはホテルの朝食と同じだった。パンにミルク、そしてソーセージにチーズ、野菜が少し・・・そんなところだ。だが腹が減っていた信二は瞬く間に平らげた。
「シンジ。今日はコースに行きましょう。そこで練習走行をしていますから」
「わかりました」
約束だからレースには出なければならない。いや、優勝しなければならないだろう。
(この世界ではどんなものかはわからないが、一つやってやろう!)
信二は少しやる気が出てきた。
◇
王宮から馬車でしばらく行ったところにレース場がある。1周約12キロ、多彩なコーナーがあり、長い直線もあり、きちんと舗装されている。ピットもあるし、観客席もきちんと整備されている。前の世界のレース場とあまり変わらない。
そこではすでにホバーバイクが数台、練習走行をしていた。エンジン音を響かせてコースを疾走している。信二のいた世界のバイクとは違う。空気を吐き出して浮力を得て進んで行くようだ。
しばらく信二はその走りを観客席から眺めていた。
「走りが甘いな。全くできていない」
まずコース取りがなっていないのである。基本はアウトインアウトだ。コーナーの外側から侵入して内側を通り、外側に抜けるという走行方法だ。それができていない。しかもコーナーで速度を落とさず侵入していくため、そのスピードにふりまわされている。
それにコーナーの曲がり方だ。体は立てたままマシンだけを無理に寝かそうとしている。
「リーンインすらできていない」
リーンインとはコーナーを曲がる時、マシンよりコーナーのイン側に体を傾けるテクニックだ。それで安定して早くコーナーを抜けることができる。だが走っている者はほとんど強引なリーンアウトで曲がっている。
走りをじっと見ている信二にアドレア女王様が尋ねた。
「どうですか?」
「基本すらできていない。これでは勝てるわけがない」
信二は率直な感想を言った。それにはアドレア女王は表情を曇らせた。
「やはりそうですか」
「まあ、俺ならなんとかなる。ぐっとタイムを縮められるだろう。まかせておいてくれ」
「まあ、それならよかった」
アドレア女王の表情は少し明るくなった。
信二はこの世界のホバーバイクに触れたことがない。その走りを見ているうちにマシンを見たくなった。どんなふうになっているのか。できれば乗って試したかった。彼はアドレア女王に言ってみた。
「今度はマシンを見てみたい」
「それならピットに行ってみましょう」
アドレア女王が先に立って歩き出した。
異世界でのホバーバイクとは?




