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第12話 難コース

 シェラドンレースの第2戦はホバーレースの伝統があるイリアで行われる。街は年1回の大レースにお祭り騒ぎだ。

 このイリアGPは専用コースでなく、街中の道路をコースとする。舗装をレース用にしているが、道幅は狭く、曲がりくねって、テクニカルなコースとなっている。

 信二はまず歩いてみた。1周6キロ。他のコースの半分ほどしかないから20周で争う。コースなどにフェンスが設けられているが、うっかりコースから飛び出すと 民家に激突するかもしれない。


「前の世界でもこんなコースは走ったことはない。カーブは多いが道幅が狭いから抜けるポイントは限られている」


 それに今度は各チームが信二をマークしてくるだろう。特にボンド国のマイケルだ。初戦では逃げ切りを許してしまったのだから・・・。しかもまたショウとデッドヒートを繰り広げることになるかもしれない。


 そんな風に考えながら歩いていると、


「シンジさんですよね。前回のレースで勝った」


 と街の人たちに声をかけられる。前の世界でもこんなことはよくあった。そんな時はいつも信二は気さくに接する。


「ええ、そうです。信二です」

「やったあ! 見に行ったのですよ。マービーGP。速かったなあ」

「それはありがとう。今回のGPもがんばるよ」


 話していると人が集まってきた。みんながシェラドンレースのファンだった。その中には若い娘もいる。化粧っ気はないが可憐な女性だ。そうなると信二は声をかけざるを得ない。この国では女性を誘わないとマナーに反するそうだから・・・


「レースで勝ったらデートしようか?」

「本当?」

「ああ。本当だ。その晩にここに来る。だから俺が勝つように応援してくれよ」 


 軽口を叩きながら彼女と笑顔で別れる。そんなことをしているうちにコースを回ることができた。



 マービー国が宿舎にしているのは古いホテルだ。毎年、ここを定宿としているらしい。信二が戻ってくると、ブライアンが話しかけてきた。


「どこに行ったたんだ?」

「コースの下見さ。歩いてみてきた」

「歩いたのか? それはご苦労なことだ。それより彼女が呼んでいるぜ。下のガレージで」


 ブライアンは冷やかした。メアリーに何かあったかと思ってすぐにガレージに行った。そこにはレース用のマシンが置いてある。


「シンジ! 見て!」


 ガレージに入ってきた信二を見てメアリーが大きな声で言った。そこにはもう1台、新しいマシンがあった。ガソリンタンクにMB4と書かれている。


「私も4気筒に乗れるのよ! やったあ!」


 メアリーはうれしくなって信二に抱きついた。


「それはよかった。前回は君もがんばったからな」


 メアリーの手を放しながら信二は言った。


「これで4気筒の2台体制だ。だが今回は他のチームがマークしてくる」


 ボウラン監督は険しい顔をしている。


「それは当然でしょう。もう逃げきりは許してくれない」

「それだけじゃない。セカンドライダーだ。周回遅れになってブロックしてくる・・・」


 前の世界では周回遅れのマシンは邪魔をしないのがマナーとなっていた。だがこのシェラドンレースは違う。妨害が許されているのだ。


「それにこのコースだ。ブロックされたらどうにもならないだろう」

「それなら大丈夫! 逆に私がブロックしてやるわ! シンジを援護する」


 ボウラン監督の懸念にメアリーはそう言った。


「メアリー。無理はしないでくれ。俺は何とかする」


 信二はメアリーのテクニックでは危ないと見たのだ。ブロックするには相手を見ながらマシンを操作しなければならない。高度なテクニックが要求される。それがメアリーにあるのか・・・。一つ間違えば転倒して命が危ない。


「大丈夫よ。私に任せて!」


 メアリーは自信満々だった。


 ◇


 イリアGPの予選が始まった。シンジの見るところボンド国のマイケルは気合が入っている。今度は優勝を狙っている。だがマシンは前回のままだ。


(逃げ切りは許してくれないが何とかなりそうだ)


 一方、ヤマン国のショウもやる気満々だ。ラップタイムをかなり縮めている。前回は信二と激しいデッドヒートを演じた。今回も同じことが起こるかもしれない。


 だが一番不気味なのはスーツカ国のロッドマンだ。前回は4位に入った。ライディングに派手さはないが堅実さはナンバーワンだ。この難コースで他のチームがミスをしたり、転倒したりしてつぶし合ったなら、彼が優勝するかもしれない。


 信二もコースを走った。カーブだらけで直線は少ない。それに道幅が狭いから走りにくい。だがそこはテクニックでカバーできそうだった。転倒しないように気をつけながらリーンインスタイルでスムーズに曲がっていく。

 一応、トップのタイムを出してその日の走行をやめる。すると時間ギリギリにショウが飛ばし始めた。信二から見ると無茶なコーナーリングでタイムを縮めていく。信二への対抗意識なのかもしれない。


 結局、ポールポジションはショウだ。信二は2番手になった。その後ろにマイケルとロッドマンが控える。チームメイトのメアリーはこの難コースが合わなかったのか、13位だった。だが彼女はこの結果にめげていない


「これで心置きなく援護ができるわ!」


 などと言っていた。とにかく本選は厳しい戦いになるが、ベストを尽くすだけ・・・信二は気合を入れていた。


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