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あなたと出会い、私の見る世界の風景は(とても)変わった。
「いおり。大好き」
とにっこりと笑ってゆずきは言った。
結局、ゆずきはいおりのことを好きだと言った。
勘違いではないと言う。
いおりは困ってしまった。ゆずきのことは好きだけど、友達として好きなのだ。恋人としてではない。
「恋は人を強くする。でも同時に恋は自分を内側から傷つける。恋は甘いだけではない。ときには血を流すことだってある」
「それでも人は恋をする。恋はそれほどに強い力を持っている」
いおりとゆずきはそっと手をにぎる。
それは仲直りのふれあいだった。
「折れた木の枝の台本。いい台本だったね。どこから着想をもらったの?」いおりはいう。
その言葉を聞いてゆずきはほほえむ。
やっぱりいおりは覚えてないのだ。私たちのはじめての出会いのことを。いおりが私の上におこっちて来たときのことを。(まあ、どうせいおりのことだから忘れていると思っていたから、別にいいんだけど)
「教えてあげない」
ゆずきはいう。
「あ、でも私とお付き合いしてくれたら教えてあげる」と明るい顔をしてゆずきはいう。
「なら、いいや」と笑いながらいおりはいう。
旅人がいるの。
旅人が旅に出ようと思った理由はなんだろう?
恋をしたから。
ゆずきはすぐにそういった。
人は愛を見失うと迷子になる。
帰ってこれなくなる。
もう一度、愛を見つけるまで。