2 恋は盲目である。
恋は盲目である。
「いおり。ごめん。ごめんなさいってば」
突然不意打ちでキスをしてから、いおりは怒ってしまってゆずきと口を聞いてくれなくなった。(今もいおりはほほを膨らませて、廊下を歩いて、ゆずきと目を合わせてくれなかった)
いおりの背中を追いかけていると、ふいにいおりが立ち止まって、ゆずきはその背中にぶつかってしまった。
「いた!」ゆずきが自分の顔をおさえながら言った。
いおりはうしろを振り向いてゆずきをみる。その顔は、……まだ、怒っていた。
いおりは無言。ゆずきも(鼻をおさえながら)無言。
時折、ほかの生徒たちがなにをしているんだろう? という顔をして廊下で向き合っている二人の横を通り過ぎていく。
「ゆずき。どうしてあんなことしたの?」いおりはいう。
「あんなことって、キスしたこと?」
「声が大きい!」といおりは慌てて、ゆずきの口をふさいだ。(距離はあるけど、周りに生徒が誰もいないわけではないのだ)
口が自由になると今度は小さな声(いおりにだけ聞こえるような)で「いおりのことが好きだから」と顔を真っ赤にしながらゆずきは言った。そのゆずきの言葉を聞いていおりの顔も真っ赤になった。