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【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢なので、溺愛なんていりません!  作者: 美依
第三章

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9月30日 明日、綾瀬先生によるコミカライズ1巻発売です!


小説の方は10月2日発売ですが、早く並ぶところもあるのかな?と。

合わせて手に取ってもらえたら嬉しいです。


 立ち去るぴんと伸びた背を、ルイジはぐっと拳を握りしめて見送る。胸の中には、苦々しい気持ちが広がっていた。


 宣言通りにアレクシアは、ジェフリーの方へまったく関心を示さない。前だけを真っ直ぐに向き、やがて上級生の校舎の中へ消えた。


(意地を張っただけだ)


 断じてすぐに、本当に? とルイジは自信がなくなる。ジェフリーと行動を共にしていれば必然的に目にしたアレクシアの姿を、最近では見なくなっていた。


 そのことに違和感を覚えたのはいつだろうかとルイジは記憶を探ってみるが、確信は持てない。いつの間にか朝の挨拶に現れなくなり、昼食の誘いもなくなり、ジェフリーの周囲に集まる女生徒を牽制する声を聞かなくなった。


 いつだったか、ステファノにこぼしたことがある。そのときは、そうか? と首を傾げ、なんか心境の変化があったんじゃね? と興味なさそうな軽い声が返ってきた。


 それからしばらくして、アレクシアとステファノが一緒にいるところを見かけるようになり、ルイジは『なぜロシェット嬢と関わるんだ』と疑問をぶつけた。


 考えるよりも感じろ、で本能に忠実なステファノは、アレクシアを避けていたはずだった。それが突如、積極的に交流している。冷静に分析し、ジェフリーの周囲から懐柔していく手法に変えたのだとルイジは察して、軽く注意を促した。


『なんでそんなにロシェット嬢警戒してんの?』


 けれどステファノから返ってきたのは、そんな台詞だ。

 忠告を聞き入れる気がないのは、すぐにわかった。


 ステファノの言葉は深読みしなくてもいいのだろうが、関係ないルイジが気にする必要はない、無駄だ、と言われた気がした。


『殿下を煩わせているからだ』


 それくらい察しろ、そんな気持ちが声にこもった。

 神出鬼没にアレクシアは現れて、たいした用もないのにジェフリーに絡んできた。傍らにいるルイジたちはいない者として扱われれば、心証がいいはずがない。


『ジェフリーは何も言ってないだろ』

『だが、側近候補として警戒すべきだろう』

『なんで?』


 本当にわからない、そんな眼差しをステファノはルイジに向けた。

 一瞬、言葉に詰まった。


『なんでとは?』

『訊き返されても困るんだけどさ。んーっと、ロシェット嬢はさ、ジェフリーの婚約者候補筆頭だろ。何を警戒すんの?』

『だが』


 素行が悪い。けれどぱっと浮かんだアレクシアの行動は、すべてジェフリーだけに向けられるものであり、その点を除いてしまえば成績は優秀であり、淑女として非の打ち所がなかった。


『だが、何? ロシェット嬢はジェフリーに害を及ぼすことはしないだろ。他の女生徒を牽制はしてたけど裏で虐めることもしないし、俺らは無視されることはあっても迷惑かけられてねぇだろ』


 正しい言い分だった。脳筋と思っていたステファノに言い負かされた悔しさから、そのときのやりとりすべてをルイジは記憶の奥底へと沈めていた。


 ――優秀と自負される頭脳は、学問以外には発揮されませんのね。


 耳に、アレクシアの冷ややかな声が甦る。珍しく婉曲でない嫌味だ。それだけ、高位貴族の子息としての資質を疑われたのだろう、きっと。


 成績は常に上位に名をつらねているのに、揶揄された通りに反論の言葉がルイジには見付からなかった。


 正しく言えば、反論などできるはずがない。アレクシアに告げられたことすべてが的確な指摘だったからだ。

 耳が痛いどころではない。向けられた台詞たちに、胸をえぐられたようだった。


(浮かんだのは、みっともない言い訳ばかりだ)


 それらを口にしないプライドはルイジにはある。愚かだ、と馬鹿にしている者たちと同じにはなりたくなかった。自然とこぼれたため息は深い。


(性格は最悪だが最善だ)


 公爵家と高い身分の家柄だけでなく、成績はアレクシアが本気を出せばルイジが勝てないくらいには優秀であり、周囲を手懐ける手腕も見事だ。


 結局のところ、誰から見てもアレクシアが最有力候補だった。


 もっと勉学に真摯に向き合い切磋琢磨できる性格だったら――ふっと浮かんだ考えに、ルイジは愕然とする。高位貴族の子女が恋に溺れるなど愚かだと嘲り、けれどその愚かな者にさえ成績で勝てない劣等感を抱えていたのだと自覚した。


(くそっ)


 悪態をつくが、心はまったく晴れない。


 ざっくりとえぐられた胸が、じくじくと疼く不快さを感じる。国の将来を担う者として、甘えと驕り、劣等感さえも捨てる決意をルイジは固めた。


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