表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/36

剣王と《自然災害》#2

 クエスト失敗。


 それ自体は冒険者として活動するうえで避けるべきではあるが、依頼を受ける時点で覚悟しておくべきリスクでもある。


 どれだけ難易度の低い、易しいクエストだったとしても、状況によっては達成困難になることはままある。


 突然体調が悪化することもあるだろう。


 闘いの騒ぎを聞きつけたり、餌のにおいをかぎつけたりした強力な魔物が闖入してくることもあるだろう。


 そういった不確定要素を計算に入れたうえで冒険者は依頼を受けて、達成しなければならない。


 駆け出しの冒険者だった頃に、俺は何度かクエストに失敗したことがある。


 その理由というのが、討伐対象の魔物の強さと、自分の実力の差を見誤ったことだ。


 だが、そのような見誤りは往々にして経験を積むことで修正できるようになる。


 俺もその例に漏れなかった。

 年数を重ねるごとに、「この程度の相手までなら倒せる」という判断が下せるようになった。


 その経験を経ておきながら、俺はとある魔物を相手に敗北し、依頼未達成に終わったことがある。


 いくつになっても、痛みと共に苦い記憶を思い出す。


 俺は魔物に敗北し、重傷を負わされ――――冒険者仲間を一人失った。

 俺が、準備を怠ったせいで。


* * *


 ドラゴーヌという魔物がいる。


 魔物の中でも際立って強力で、知能が高く、人間と争いを起こしにくいと云われるドラゴン――の亜種がそれだ。


 正しく分類すると亜種だが、劣化版ドラゴンと表現したほうがより分かりやすい。


 ドラゴンほど強くはない。それに知能も低い。


 急所は喉元と頸椎。

 奴らは短時間に二つの急所を潰されると絶命するから、討伐ではそこを狙うのが定石。


 生態的特徴として、自らの生活圏をいたずらに拡げようとする。

 そのため人間と対峙することが稀に起こる。


 俺の受けた依頼の討伐対象となった個体もそれに当てはまる。


 街同士を結ぶ街道からそう遠くない森の中で、単独で活動するドラゴーヌが発見されたのだ。


 放っておいたらこのまま街へ接近する可能性があるとされ、討伐対象となった。


 ドラゴーヌと一口に言っても色々いるのだが、俺が相手をしたのは二足歩行する大型のトカゲみたいな個体だった。


 空を飛ばず、鈍足で動きも遅い、しかしそれらの欠点を補うべく高い膂力を持つ、という特徴を持っていた。


 武器や防具、地形を利用したトラップの設置、あと仲間の確保。


 それらを然るべき水準で整えていれば勝てる相手だ。


 踏んづけたら作動する爆弾で動けなくした後に、俺ともう一人の仲間が、ドラゴーヌの急所とされる喉元と頸椎に剣を突き立てて仕留める、という作戦だった。


 それは途中まで上手く運んだ。


 戦いの場に選んだのは森の中にある開けた空間、挑発に誘われてやってきたヤツをトラップを誘導。


 見事に爆弾は炸裂し、ドラゴーヌの機動力を奪った。


 すぐさま、前と後ろから俺たちは襲いかかり――そこで、想定にない事態が起こった。


 爆発の規模の割に、発生した煙が濃過ぎたのだ。


 さらに量も多かった。討伐対象どころか、俺と仲間の姿まで飲み込んでしまうほどに。


 視界を煙幕に覆われて相手を見失った俺は、ヤツの苦痛の悲鳴を頼りにじりじりと接近した。


 程なくして、俺はドラゴーヌの急所、喉元の見える間合いへとたどり着いた。


 ここでまた、想定外が起こった。

 仲間の剣士が、なんと左隣にいたのだ。


「バカ、同時に同じ急所を攻撃してどうする」と俺は言いかけた。


 仲間が、何か言おうと口を開いているのが見えた。


 アイツも、俺と同じことを言いかけたのか。

 それとも――逃げろ、と言おうとしたのか。


 次の瞬間に起こることに、先に気付いて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ