剣王と《自然災害》#1
俺と相棒の関係を表現するなら、人と自然災害に例えるのがしっくりくると俺は思っている。
人は自然の脅威に無力だ。できることが限られている。
魔法使いならある程度対抗できるという意見もあるが、大抵の魔法使いはそこまで強力な力を持ち合わせていない。
今の例でいうと、俺が人間、相棒が自然災害だ。
しかし相棒曰く、どうやらそれは心外であるらしい。
「私と剣王様――いえ、剣王様と私の関係はそのようなものではありません! 愛に溢れ、輝きに満ち、炎よりも熱く、それでいて静かな水面のように穏やかで、洗練された関係です! いえ、確かに私の魔法でその……少しばかり剣王様を傷つけてしまったことはありますけど、それも愛なんです」
それが歪んだ愛であると教育できなかったのは俺の落ち度なのかもしれないが、そもそも俺が愛を語れるはずもなく、相棒は俺にとっては脅威であり続けた。
一体、何が脅威だったのか。
それは彼女の放つ攻撃魔法である。
しわしわのジジイになった今でも目立つ、額の左側にある少し大きめの傷。
不覚にもこれを負ったその理由は、他でもない相棒の攻撃魔法の余波だったりする。
* * *
俺が正式に相棒の身元引受人となったことで、彼女は身寄りのない子供でなくなった。
そのため、相棒を預かっている間に冒険者ギルドから出ていた金銭的手当は打ち切りとなった。
実質、一人分の負担が増えた形となったが、その分だけ相棒は魔法を活かして働いてくれた。
どのような面で役に立ってくれたかというと、戦闘面ではなく、主に生活面だ。魔物討伐の仕事でなくても、魔法はおおいに役に立つ。
道具が無くても火が出せる。
川や井戸まで行かなくても水にありつける。
お湯を沸かすことも簡単だから、浴槽にお湯を張るのに苦労しない。
魔法の明かりがあれば、夜でも昼間のように活動可能。
空気中の熱を操ることで、暑さ寒さを避けることができる。
魔法使いが世間に重宝されるわけだ――これは便利すぎる。
相棒と出会ってから四年が経つころには、俺の生活にはだいぶ余裕というものができていた。
彼女の支援もあって生活の質が上がり、俺のクエスト達成の成功率も、達成までの速度も大きく上がった。
ギルドでの評価も上がり、だんだん難しい仕事をこなすようになったが、俺の実力もそれに比例して上昇を続けていた。
自分の家を持つまでには至らないが、相棒に魔法の勉強をさせるために宿では二人部屋を借りられるようになった。
* * *
この時を振り返ると、物事がうまく行きすぎていた、と自分でも思う。
後になって、ようやく理解できるようになった。
いつの間にか、俺の心に慢心が生まれていたのだと。




