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聖剣教会の《異端者》#3

 駆ける俺の前方に異端審問官、二名。すでに敵の剣は振りかぶられている。


 片割れが振るう横薙ぎを、体勢を低くして回避。

 残った一人は突きを繰り出してくるが、これは右手の剣で強めに弾く。


 剣の慣性を利用して切り払い――はせず、剣を避けられ体勢を崩している一名の後頭部を柄で打ち、反転しつつ後ろへ蹴りを放つ。

 確かな手応えが、足を伝って腰に届く。


 白い衣装の男たちはその場で倒れ伏し、気を失った。


「まさに一瞬、しかも血を流さずに無力化なんて……剣王様、さすがです! もう、もう、もう! ますます格好良くなるんですから!」と、俺に抱えられながらきゃいきゃいとはしゃぐ相棒。

「無駄口はいい。それよりアレをなんとかしてくれ」


 俺たちが走ってきた道に、異端審問官四名の追ってくる姿が見える。

 距離はまだあるが、この間合いなら相棒に任せられる。


「合点です! 私の火炎魔法で骨も残さず――」

「森が火事になるし、殺すのはまずい。何とか無力化してくれ」

「むう……いっそひと思いにやった方が痛みを感じずに済むので優しいと思うんですが」


 追われている状況で、この余裕。

 自分が強者であると確信していなければ出てこない台詞だ。


 その後、相棒の竜巻魔法で異端審問官たちは四方八方へ、木の葉みたいに吹き飛んでいった。おそらくは、森の中に落っこちたのだろう。よほど運が悪くなければ生きているはずだ。


 その場でしばらく待ってみたが、続く追手の姿は見えない。

 ……ひとまず打ち止めといったところか。


 相棒を左腕から解放して、立たせる。

 一瞬不満そうな声が聞こえたが、聞かなかったことにする。


「これからどうします、剣王様。聖剣教会を潰しに行きましょうか? 今なら向こうの戦力も大分減ったはずですし、好機では」

「……冗談でもそういうことを言うな」


 怒ってるのはわかる。俺も同じ気持ちだ。

 だが、聖都を戦場にするわけにもいかない。何せ街中が聖剣教会の信徒だらけ。あそこは敵地同然なのだから。


「とりあえず、見つからないように聖都の宿屋に戻ろう。荷物も置いてきたし、それに……オリーも心配だ」

「あの、言いにくいですけど、あの子も追われているかと。やっぱり連れて来なかったほうが……数日間あの子一人で留守番させられない、という剣王様のお考えは理解できますし、私も反対しなかったですけど」

「……連中、狙ってくるにしても、もう少し穏やかだと思ってたんだがな」

「全くです」と相棒が同意した。


 今回の依頼、聖都に行くのだから聖女に接触する機会も作れるだろうと、オリーを連れてきてしまっていた。あわよくば彼女を聖女のもとに帰すつもりでいたが、教会に狙われているこの状況ではそれどころではない。


 この調子だと、俺たちが聖都にやってきてからの動向まで聖剣教会に筒抜けで、宿屋を突き止められている可能性もある。そして、オリーは教会に連れていかれているかも。


 もはや手遅れかもしれないが――そうではないかもしれない。


 本来、勇者であるオリーは教会側の人間だが、こちらに弁を立てる余地も与えず剣を突き付けてくる連中に、彼女を渡すつもりはない。

 奴らにオリーをやるぐらいなら、俺は彼女を引き取る。


「宿に行くぞ。静かに素早く、あと目立たずに」

「承知です。遮音と認識阻害の魔法なら任せてください」

「……お前、なんでそれをさっき使わなかった」

「それはもちろん剣王様の腕の中が幸せで――いえ、繊細な魔法なので逃げながら使うのが難しいからです」

「それが嘘だったら、いつもの冒険者ギルドに着くまで全部ハンドサインでやりとりするぞ」

「――嘘ですごめんなさい! 剣王様の腕に包まれているのが嬉しかったからもっとあのままで居たくて! でも魔法を使ったら上手く逃げおおせてしまって、たぶんこの時間が減ってしまうから言わないでおこうとか考えてました!」

「……よし、正直に言ったから聖都の宿につくまでハンドサインで済ませてやる」

「ご無体!」


 なにはともあれ。

 今は迅速に行動すべきだ。

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