剣王から見た《聖剣教会》
聖剣教会、という団体がある。
俺自身がそこの内部の人間じゃないので実態は語れないが、外側だけ見て述べるなら宗教団体ということになる。
信仰の対象となっているのは聖剣である。
《魔を断つ聖剣》のおとぎ話に登場するヤツだ。
魔王を倒し世界を救った勇者ではなく、なぜ聖剣の方が持ち上げられるかというと、勇者は代替わりしても聖剣は代替わりせずに人間を守護し続けているから、という理由らしい。
まあ、一理あるといえばある。
あのおとぎ話の勇者はすべからく聖剣から力を与えられている。
すなわち、聖剣の力を得ていなければ、勇者は魔王を倒せなかったということだ。
具体的には語られていないが、お話のテーマ的に『勇者が聖剣を手にしなかった場合の展開』なんてものを描くはずがない。
おとぎ話は伝わりやすいよう短く作るものだ。
余計な描写に文字を割く余裕なんて無い。
俺自身が特定の何かを信仰していない人間なので、宗教団体の信者が揃いも揃って教義や規律を守って生活する姿を敬遠しているのだが、聖剣教会に限っては特別だ。
敬遠するどころか、敬遠していることを意識せずに済むほど距離を置きたい。
なぜ俺が件の団体だけを特別に避けているかというと、あそこがまともじゃないとわかるからだ。
本能的にそう感じられるし、加えて、具体的な理由もある。
冒険者ならず正気を疑うだろう――生け捕りにした凶暴な魔物を、教会が金を出して引き取るなんて。
聖剣教会を避けることを心がけ、実際にそうしてきたというのに、冒険者ギルドである依頼を受けたことをきっかけに、俺は気がついたら一枚噛むという表現では済まないほど深入りし、絡むことになったのだ。
そのきっかけの依頼というのが、『魔物を聖剣教会本部へ運ぶ馬車の護衛』というものだった。
あの子と出会ったのも、この時だった。
この時代の勇者にして、聖剣の所有者に選ばれた人間。
勇者オリー。
いや、この時はまだ正式な勇者ではなかったのか。
聖剣教会の《聖剣預託の儀》を受けていなかったから。
後になって思い返してみると、あの儀式は無理やりにでも受けさせなければよかった――と思う反面、後々に起こる戦いのことを考えるとあれは正解だった、という見方もできてしまう。
色々とスッキリしないが――何にせよ、この依頼をきっかけに俺とオリーは出会えた。
そのことには感謝している。
早くに親をなくして天涯孤独の身の上、さらに伴侶も居ない俺に、『家族と過ごす喜び』というものを教えてくれたのは、彼女なのだから。




