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果ての町の【アウロランダ】  作者: みはらはつ
2/2

少女ノル

刹那。

音が鳴る。

その音は心臓向けて放たれる。

聴いている客を殺すほどの勢い。

オーボエやクラリネットから奏でられる音は、それは煌びやかなものであった。

しかし、舞台の上にいる15人の演者は軍人の様は鋭い眼光をしている。

私もその1人だ。

目の前のあるのはティンパニ。

この演目での私の武器。

この武器の音で客を刺す。

何度も。

何度も何度も。

その様にして曲は完成する。

これが、楽団【アウロランダ】の仕事なのだ。


全ての演目が終わり、幕が閉じる。

演者達も舞台裏に移動。

張り詰めた空気も無くなる。

あたしはすぐ舞台用の赤いジャケットから普段着に着替えようとし、更衣室に向かった。

ジャケットを脱ぎ、シャツを着たところで、ふと姿見に自分が写っているのが見えた。

栗色の短髪、150cm程度の身長、腑抜けた顔の19歳の女。

これが私、ノルだ。

こんな人間がここにいる事に疑問だ。

なんて事を思っていると、更衣室に誰かが入ってくる。

「あ、ノルちゃん。お疲れ」

凛とした空気感を漂わせる女性の姿が目に入る。

「クリーズさん!お疲れ様です!」

その女性は先輩でもあり、あたしをこの楽団に誘ったクリーズさんだった。

クリーズさんも着替えを始めながら会話を続ける。

「今日の公演はどうだった?」

いつもクリーズさんはこのようなことをあたしに聞く。

「はい。思った通りの音が出せましたし、完成度は高かったと思います。あと…」

「そういうことじゃなくて、楽しかった?」

「えっ…」

いつもと違う会話の流れで思わず驚く声が出てしまった。

あたしはあの戦場を楽しいとは思えず、あやふやな返事をしてしまった。

「ふふ、ノルちゃんは気を張りすぎるところがあるからね。今日もそうだったでしょ?」

演奏中のことか、その他のことか、ともかくこの人にはバレていた。

「大丈夫だよ。いつか慣れる時が来るから」

クリーズさんは着替えを終え、更衣室を出ようとする。

「その時はあなたをもっと良い舞台で観れるかもね」

そう言い残していった。

もっと良い舞台…。

この【アウロランダ】に入る人はきっと上を目指し続けるのだろう。

そしてクリーズさんもあたしにそうなって欲しいと思っているのだろう。

しかし、そんな事出来ないであろう。

そう思いながらあたしも更衣室を出た。

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