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乳がんになる

 クリスとりさはすごく穏やかに幸せを感じて生活をしていた。


少し前までは、クリスには一人で寂しいハワイ生活が2年間あり、

りさは不誠実な元恋人に嫌気がさして別れていた。


ほとんど毎日クリスは仕事が終るとりさの家に帰り、夕食を食べシャワーを浴びて

りさのベッドで愛し合った。


りさにマモグラム、乳がん定期検査の知らせが来た。


一定の年齢を超すとアメリカではほとんどの保険なら女性には毎年検査をするように通知が来て、

保険もほぼ全額カバーしてくれる。


去年初めて受けて本当に痛かった。

何が痛いかって、小さなこの胸を無理矢理レントゲンの機械に挟みこんで撮すのだ。

胸の大きい人は胸をつぶす痛さ、無い人は、脇からのお肉まで引っ張り出して、なんとかガラスの板の上に乗せて挟む。


りさの家系は癌系統ではなかったから今年はサボろうと思った。

向こうから指定してきた日がちょうど仕事がオフだった。

じゃあ行っておくかな。と、検診に出向いた。


りさは6年前に離婚してから少しでもリーゾナブル料金が魅力で、カイザー病院に加入していた。


カイザーは保険会社と病院と連結している。


サウスキングストリートとペンサコーラストリートの角にあるカイザーホノルル病院へは車で5分。

検査に行った。


案の定、脇からの肉や皮を引っ張って胸をガラス板の上に乗せて、ここまでやるの?

と思うくらいにキューッと肉を集めて胸を挟む。

レントゲン医師がベテランでないとうまく挟まらない。


みかけはベテランそうだったのだが、何回もやり直しをして、他の部屋にいる医師にチェックしに行っていた。その待ち時間もかかった。


すると、またやり直し。これを3回繰り返して、なんとウルトラサウンドをすると言われた。

(えっやばいのかな)と思った。


終ってから医師に言われた。腫瘍の疑いがあります、再検査をすると思いますので通知を待っていてくださいと。


数日経ってから産婦人科の先生に呼ばれた。

「細胞を採ってみなければ分かりませんので、検査をします、いつが良いですか?」


りさは答えた。

「1週間後から10日間日本に行くことにしているのですが、その後でも良いですか?」


医者は言った

「大丈夫でしょう」


それほど気にしていなかったが、日本から帰って細胞を採った。

すると陽性だった。


「陽性ですが、ゼロステージです、血管から出て異な状態なので心配しないで」

と先生に言われた。


ゼロステージというのがあるのも知らなかったが、初期の癌だと言われても、癌を宣告されるとやはり覚悟はする。

がっかりもする。


先生の話を電話で聞きながら

(私の何がいけなかったのかな)

と自分の人生の汚点を見直した。


そんなに悪いことはしていないけど、多少の小さい嘘はついたことはもちろんある。


先生の話が続いていて

「で、予定はいつが良いですか?木曜日はどうですか?」と聞かれた。


りさは聞いた

「今週の木曜日ですか?」


今日が月曜日であさってのことだ。何をするのだろう。

「空いていますが検査ですか?」

と聞いた。


「癌摘出の手術です」

と言われた。


(早い!癌宣告から3日後に手術、私はなんて幸運なんだろう)

と思った。


こんなに早く手術してくれるなんて。カイザーホスピタルのことを悪く言う人もいるが、総合病院の良い事はこういう連結だ。


もう大丈夫だと思った、ゼロステージだから深刻になる必要は無いのだろうけど。

(これは神様からの忠告なんだ)

と切実に思った。


 乳の下方を少し切除してその後、お勧めすると言われた放射線治療にも行った。


一ヶ月毎日病院に通わなくてはいけない。

放射線治療の後は気分が悪くなったり、だるくなったりすることがあると言われた。


サイドエフェクトは殆どなかったが、クリスに時間が取れる日はいつもクリスが連れて行ってくれた。


ある日クリスが言った。

「あんなおじさんと不倫しているからこんな病気になったのだよ」

そんなことがあるのかなと思ったが、あえて口答えもしなかった。

送り迎えをしてくれているし、心配をかけたから。


後にいろいろ勉強して思ったことだが、クリスが行った事は無くもない話かもしれない。

彼がどうのではなくて、彼の奥さんからの生き霊の仕業かもしれない。

生き霊なんて迷信だと言い切ってしまえば、そんなものは無いとも言えるのだが。

だってそれも自分が作ってる創造、幻影だから。


生き霊と聞くと怖いが、マイナスの強いエネルギーが襲ってくるとして、

細胞が負けてしまうようなことだろう。


意識には時間差がなくて、光よりも早い。


別れたから終ったと思っていたが、災難は忘れた頃にやってくる的な。


奥さんには別れたことが分かっていないのかもしれない。


私の後には元彼には詐欺の若い女性にからまれていたのだから、家に帰るのは遅いだろう。


 いろいろあって、クリスはこの時は私を支えてくれた、感謝している。


 りさにとってこの病気は幸せの絶頂期に起ったし、過去の清算とこれからの自分の体への注意だと認識したら、淡々と日々を過ごして放射線治療期間も終ると、1つの出来事としか思わなかった。



 起ることは起る。


それを大きく捕らえるか、長く捕らえるか、小さく捕らえるか、それをきっかけに継ぎへのステップと考えるか。



この出来事はカルマとしてもりさはクリアーしたのだと思った。


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