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クリスお手製スパゲティ

今度スパゲティを作るから食べに来ないかと誘ってくれた。


マノアの滝のウォーキングの後にキスをしてりさの中では付き合っている感じになっていた。


だが、なかなか連絡がなかった、じらされると気持ちが燃える。


後でクリスが言ったのだが、それも作戦だったようだ。

(なんて奴だ、田舎っぽい顔なのに)


りさもそこは年期が入っている。恋愛の駆け引きは心得ている。


その頃には何度となく苦しんだ経験から、食いつかない。

こちらから連絡は絶対にしない。


ようやくクリスから

「今週の金曜日に夕食をしに僕の家に来ない?」

と連絡が入った。


りさは

「仕事が8時に終わるからその後になっちゃうけど良い?」


「大丈夫だよ、待っているね」とクリス


初めて行く、教会の敷地内のクリスの家。


ハワイによくある木の板がそのまま縦につながっているのが見える壁、移民が住むような簡素な家だ。

見た目は粗末だが、中はさすがにアメリカで、意外に広いしペンキが塗り直してあるからこぎれいに見える。

一戸建てだからコンドミニアムと比べれば収納場所も多い。


前に友人が住んでいた家を思い出した。

彼女はセンスも良かったから、赤のチェックのテーブルクロスを敷いたりして、木の木目を生かしてオールドアメリカンな住まいにしていた。


ドアを開けたらすぐリビングルームの、玄関がない簡単な造りのその家の前に立ち止まったら、ドアが開いた。


クリスは車の音で用意していたのだ。


「いらっしゃい、こんばんは」クリスが笑顔で迎えてくれた。


りさは恥ずかしさを抑えてポーカーフェイスで笑顔を作ってソファーに腰を下ろした。


なんと言っても独身男性の1度キスした男の家に訪れるのである、ある覚悟を持って来るのだから。


「ごめんなさいね、こんな時間になっちゃって」


ハワイでは、ほとんどの家が日本の良い習慣を受け継いで、靴は入り口で脱ぐ家庭が多い。


日本のように段差はないが、玄関マットがおいてあり、その辺りにほかの靴が散らばっているから大体靴を脱ぐ家かどうかがわかる。


アメリカ本土から来たアメリカ人の家では、靴を脱ぐ人と脱がない人が混じりあい、靴を履いている人と裸足の人がリビングルームで一緒に過ごしたりもする。

きれい好き日本人にはカルチャーショックを受ける。


クリスの家は外に靴を置いて中に入るとすぐにリビングルームで変に立派な茶色のソファーが二つあり、そこに座って食べるようだ。


小さなダイニングテーブルには物がたくさん乗っている。

ソファーに座ってコーヒーテーブルで食べる。


少し食べにくい感じ。


すぐにクリスはパスタを湯で始めて、アパタイザーの生ハムとハワイ島の北部で採れるグルメ完熟トマトのハマクアトマトの輪切りとフレッシュバジルを添えたお皿を出してくれた。


クリスは白ワインを注いでくれた。

キャップがくるくる回る安物の白ワインだった。


「乾杯!来てくれてありがとう、今日は大変だったの?」クリスが言った。


「そうでもないけど、教会のコワイヤーの指揮者が完全主義者で、楽譜が読めないようなバスの人をしつこく練習させるので、聞いてるだけでストレスになっちゃうのよね」


とか、どうでも良い近況を話しながら、クリスは前菜にヴァージンオリーブオイルをたっぷりかけた。


「そろそろパスタが茹で上がったかな」


クリスはレンジに向かい、ゆで汁を越してトマトソースをかけた。

とてもシンプルなポモドーロスパゲティだった。


 クリスが席に着き、りさが言った。


「美味しそう、頂きます」


本当に丁寧に作ったポモドーロはすごくおいしかった。

お料理ができるのねと、りさは感心した。


後で知ったが、料理はイタリアンのパスタ料理3種類しか彼は作れなかった。


 食べ終わってデザートはアイスクリームを頂いて話をした。


家族の事とかフランスの留学時代の話とか。

彼の留学先はツーロンと言うパリから電車で4時間弱かかる郊外だから、パリに住むのとは違って少しのんびりしている。クリスの性格に合っていた。


それでもフランス人は自分たちが一番偉くて洗練されていると思っているから、

日本人とのハーフの若者は、ただのアジア人と思われてしまっただろう。

顔が田舎っぽいし。


話が途切れた、りさはこの瞬間にどうするかを心得ていた。

相手が勇気を出して行動に移せるように、笑顔で待つ。


期待通りキスをしてきた。初めての長いキスをした。りさは抵抗しなかった。


クリスはりさを押し倒し、キスは続いた。

このまま先に進むのだろうかと、二人とも思いながら寝室へと向かった。

ベッドに横になり、キスをしながら胸をまさぐられた。その後、クリスが言った。


「ごめん、僕は結構まじめで、これ以上は今日はできない。こうなるとは思っていなかったから用意していない」と言った。


「えっ、何?」りさが言った。


「コンドームがない」クリスが答えた。


途中でやめるとか、相手だけ気持ちよくさせるとかあるだろうにと少し思ったが、まあいいやとして、

隣同士でまどろんだ。ワインを飲んでいたせいで。


 この日は30分くらい横になって、りさは家に帰った。


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