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あの日見た満天の星空を見に  作者: 滝山雅文
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 テントで書いた短冊は笹に結びつけて川に流すのがこの祭りでの通例だ。ただ俺は、他の人に内容を見られるのが恥ずかしいのと、川に流すとこの想いを水に流すような気がして、短冊を笹に結びつけなかった。栞代わりにしていたヘアピンをそれに挟んで再び読みかけのページに挟む。

 うん、しっくりくる。

 テントから出ると人混みはだいぶ解消されていた。この分なら家まで10分もかからないだろう。

 今度こそ帰るか。

 俺は家路である橋に出る。そこからは祭りの灯も少なくなって来ているので本を読みながら帰ることは出来そうにない。俺は本を鞄に戻すため、橋を渡りながらもう一度栞の位置を微調節しようと左手にそれを取ろうとしてーー

 ヒュオッ。

 一瞬だった。

 その音は急に強く吹いた一陣の風の音だったが、俺にはそれが自分の心臓が急激に谷底へ落ちる音のように聞こえたーーそれは、俺の手よりも先に本に挟んでいた栞を奪い去った。

 反射的に栞を片腕で追いながら、今日の夜から明日にかけて台風ですと、朝に無意識に聞いていた天気予報士の声をぼんやりと思い出す。

 その間にも栞はーー

 橋から落ち、川へと舞い落ちようとしていた。


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