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はい、という訳ではぐれました。
金魚すくいの屋台に移していた視線を前方に向け直した時には、もう彼らの姿は人混みの中に消えてしまっていたのだ。
俺はひとつ溜め息を吐くーーマジでやっちゃったよ。
でもちょっとほっとしている自分もいる。
俺は少し考えて、
「帰るか」
罪悪感と1人でいることの安心感、色々な意味の諦観を混ぜてその言葉を吐き出す。
彼女のいない祭りに、楽しさを見出す事は、もう出来そうもなかった。
俺は人混みの中、今度は帰路につくためにやはり手刀を切り込み始めた。