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あの日見た満天の星空を見に  作者: 滝山雅文
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 5


「来なければよかった」

 はいはい、分かってましたよ。人生いいことばかりじゃない。同じくらい、或いはそれ以上に嫌なことがあってバランスは取られてるんだって。

 ……嘘です。柄にもなくうっきうきで集合場所に行きました。それも前ノリで。

 祭りを共に楽しむメンツは何も池崎だけではなかった。池崎と仲の良いクラスメイト2人も一緒だった。確か名前は岡崎と藤本。

 ヤダ、黒歴史に出てくる人の名前は忘れない。

 私の海馬ってばステキだなぁ。

 3人と合流して最初のうちは池崎が俺と2人との間を取り持ってくれていた。しかし俺は持ち前の陰キャと緊張しいを遺憾なく発揮。会話が途切れ、気まずい空気になるのにそう時間はかからなかった。そのうち、3人が前を行き、俺が後を尾けるという構図が出来上がったーー俺、学生からストーカーにジョブチェンジ。

 暫く何とか俺と彼らとの会話を繋げようとしてくれていた池崎も、次第に祭りのテンションに当てられ、的当てが終わった辺りからは俺の存在を忘れてしまった。今では始めから俺を誘っていなかったかのように2人と楽しくお喋りをしている。

 ーー本当に、来なければ良かった。

 そういえば朝の天気予報では今日の深夜から午前中にかけて台風が来るらしいのだが、それこそ前ノリで少し早めに来て頂くことはできないだろうか。

 そうすれば帰る口実もできる。

 ……それとももういっそはぐれたフリしてもう1人で楽しもうかな、と思案しながらも今ひとつ度胸が持てず、彼らの後を追うため髭男並みに手刀で人混みを切り込むこと10分。

 俺は何処かで見たような金魚すくいの出店を通り過ぎる。


「フッフッフ!3対2で私の勝ちだね!」


 その瞬間、釣果を俺に見せびらかせ、楽しげな彼女の記憶が再生された。

 あ、これは駄目だ。

 そう思った時にはもう遅いーー俺は。

 なんだか……。


 ……何もかもが嫌になってしまった。


 祭りの思い出は彼女との楽しい思い出で終わらせておけば、こんな嫌な気分にも。

 彼女に今すぐ会いたいと思うこともなかったのに。


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