無人島
呪われた無人島に行くことになった。ギャグ。
仕事で無人島を視察することになった。
俺の会社は主にリゾートビジネスを手掛けている。
その無人島を開発して新しいリゾート地にしようというのだ。
まずは近くの萬村に話を聞きに行った。
俺のような余所者は珍しいらしく、村人からは不審な目で見られ、何かこそこそと話し合っているようだ。
結局、俺は村長の家に連れて行かれ、話を賜わうことになる。
* * *
正座して待っていると、村長らしき腰の曲がった老婆がよたよたとやって来た。
「――あの島は呪われておる。絶対に入ってはならぬ」
俺だって仕事だ。行かないわけにいかない。
気にせずに無人島に向かうことにした。
これが、大変な後悔になろうとは――
――とならないために、俺は本社に電話を掛けた。
「すみません、営業の佐藤ですが。本田部長に代わってもらえます?」
「俺だ、佐藤か。どうした」
「なんか、萬村の村長が、呪われてるからあの島には入るなって言うんですけど」
「そうか。まぁ何かしら言い伝えには過去の天災なんかが絡んでるもんだ。何があったのか、小さなことでもいいからまずは細かくヒアリングしとけ」
「承知しました」
俺は携帯を切ると、村長に向き直った。
「すいません、過去に実際どんなことがあったのかお聞かせ願えないでしょうか」
村長は俺を睨みつけるように目を見開くと、重々しく答えた。
「言ってはならぬ。見てはならぬ。聞いてはならぬ。それを口にした者には死が訪れるじゃろう」
俺はまた携帯を手に取った。
「あ、部長? なんか、ヒアリングしたんですけど、言うと死ぬから言えないって言うんですけど」
「そうか。まぁ社内事情を言えない理由なんていくらでもあるからな」
「社内じゃなくて村内ですけど」
「まぁ商談ではよくある話ってことだよ。村民が島の所有権持ってるんだろ? 金額の上乗せでなんとかならないか交渉してみろ。2割増までならいけるから」
「承知しました」
俺は携帯を切ると、村長に向き直った。
「お金についてなんですけど、事前にお伝えした金額の2割上乗せでいかがでしょうか?」
村長はまた俺を睨みつけるように目を見開くと、重々しく答えた。
「俗物めが。呪いを軽く扱うでない」
俺はなんだか面倒くさくなってきたので、また携帯を手に取った。
「部長」
「今度はなんだ、呪いだから駄目だってか」
「はい」
「じゃあ万全の準備をして向かえ。もう電話しなくてもいいよ。お前に任せるから」
部長も面倒くさくなってきたらしい。
「承知しました」
俺は電話を切って、そのままamaz●nで防災リュック一式と、念のため御札としめ縄とお清めの塩、それから一応、聖水も注文した。
もちろん経費で通るだろう。
amaz●nから届くのは明日なので、俺はいったん本社に戻ることにした。
村長が目を見開いたまま、昼寝の時間だと言って奥に引っ込んだ。
村長までもが面倒くさくなってきたらしい。
* * *
結局その日のうちに天災系を色々調べて、地震が多く地盤が緩い島だと分かったので、リゾート地開発はやめることになった。
そんなことだろうと思った。先に村長にヒアリングしておいて良かった。
amaz●nは無事、発送前に無料キャンセルができた。
amaz●nってすごーい!
―了―