正義の魔弾
ショウイチは、治安維持部隊を退職して、ジンと共に革命ギルド「ジェダス」を再び立ち上げた。ジンの顔の広さを活かして、ジェダスは徐々に拡大していった。今も仲間を徐々に増やしつつ、悪に手を染める者を暗殺し、今に至る。因みにジンはショウイチの事を"愚者”と呼ぶが、それは異世界から持ち込まれたアルカナの物語に由来する。愚者は、アルカナの番号順に1度は死をも経験して最後は世界を手に入れる、ヤツにはその素質があるからと言った思いがこもっている。
「・・・と、俺が知っているのは大体こんな所だな」
「へぇ〜」
「リーダーにそのような過去があったなんて知りませんでした」
「アイツが元治安維持部隊だったなんて、通りで強い訳だよ」
カムイとエスカはショウイチの過去に驚きを見せている。
「でもなぁ、ショウはアキラの影響を強く受けてきたはずなんだが、どうして暗殺なんてやるのかは未だに分からないんだよなぁ。」
「まぁ・・・それは本人に聞かないと分からないんじゃないですかねぇ」
「・・・そうですね」
カムイとエスカは絞り出すように答えた。
「ん、なんだ?」
「お待ちどうさま、カツドン3つ」
料理が出来たので届けに行くと、3人はどうやら話込んでいる様子だ。
「ジンさん、何を話していたんですか?」
「ん?あぁ、それは昔のお前についてだな」
「昔の話はもういいですよ、勘弁して下さい」
「そういやショウ、お前は何で暗殺なんて始めたんだ?親父のせがれなら、殺しなんていかにも嫌いだと思ったんだが?」
ジンは不思議そうにこちらを見る。
「まぁ・・・それは仇討ちみたいなもの・・・ですかね」
「あぁ、そういうことね」
ジンさんに"魔弾”を知られる訳にはいかない。あれがバレたらギルド崩壊の恐れすらある物だ。俺の"正義”は万人受けするものなんて思っていない。とりあえず、ここは適当にあしらうしかないな。
「まぁ冷めないうちに食べて下さいよ」
「では、頂くとするか!」
3人は黙々とカツドンにかじりつく。
「美味いなぁこれ!」
どうやらジンさんもカツドンを気に入ったようだ。父さん曰く、カツドンはニホンの司法機構の十八番らしいが、正直聞いていて意味が分からなかった。
こうして暗殺者たちの平和な1日が過ぎてゆくが、次なる戦いは彼らへと静かに近づいていた。