愚者の力
胸が真紅に染まったタイシは何が起きたのか理解していなかった。そして、その目に今、答えが映った時にはもう手遅れだった。
「銃痕・・・!? バカな、銃声が無かったぞ・・・何
故だ・・・」
後ろから撃たれた事に気付いたタイシは、振り返ろうとするも身体を思うように動かせず、振り向くと同時に倒れ込んだ。射撃した2階の手摺から飛び降りた俺を、這いつくばるタイシは困惑の表情で見つめている。
「音を・・・奪った」
「何・・・音を消しただと!?」
「そうだ」
「何言ってんだ? お前は"特典”でそんなしょうもない力を貰ったっていうのか? ・・・有り得ないな・・・笑えるよ・・・」
「特典・・・だと?」
「ああ・・・そうか。お前はアウターなのか。こんなクソに負けるなんて・・・俺とした事が・・・」
「特典とはなんだ!? いいから答えろ!」
タイシに怒鳴り付けるものの、ヤツの周りに魔法陣が浮かび上がった。
「リーダー。時間です。そこから離れて下さい」
エスカがそう忠告してきた。
「クソッ! 仕方がない」
「最後に一つだけ・・・。俺はなぜ負けたんだ?」
諦めた顔のタイシは半笑いしながら問いかけてきた。
「お前は力を使っていたのでは無く、力に使われていた。自分の弱点を克服しようとしなかったことだ。」
「弱点・・・だと?」
「動体視力がいくらあろうと、攻撃が当たって初めて攻撃された事に気付くようなら、回避は不可能だと言う事だ」
「ハハッ・・・そうか・・・」
そう言ったタイシは、魔法陣の光に包まれて消えていった。
「・・・帰るか」
「了解!」
明るさを取り戻したカムイが、意気揚々と帰り支度を始める。ナタリアとエスカも帰ろうと入口の窓に向かって歩き出した。
「今回のターゲットは大した事無かったな」
「アンタは何もやってないからでしょ」
「カムイは立っていただけですからね」
「うわぁきっついなぁ」
カムイのぼやきを2人が冷たくあしらう。
「でもあの動体視力は正面から戦っても勝てやしないなぁ。まぁ転移連中相手に正面から勝てたらわざわざこんな仕事なんてしなくていいんだけどよ」
話ている3人の後ろでショウイチは1人苦い顔をしていた。
「今回もめぼしい情報は無しか・・・ 必ずお前たちの謎を解き・・・父さん・・・」
「おーい! ショウイチ、行こうぜ!」
「分かったよ」
後を追いかけようとするショウイチは、ふと立ち止まった。
「あぁそれと・・・もうこれは要らないな」
パァァン!
そう言って手を開いた瞬間、"銃声”が鳴り響き、虚空の空に消えていった。