閑話④ 草仁先生の脱力会話集
前回のSS『恋ですらなく』で我らが草仁先生(笑)が、花のような女子大生たちに囲まれながらも天然発言をかまして脱力させた……という内容、書きましたが。
一体、どんな感じの発言をかましたのでしょうか?
『恋ですらなく』を書いていた時は、私にも漠然としか見えなかったのですけど(オイ)、ちょっとフォーカスを合わせてみましたら……。
草仁先生。
天然というか、変人ですね(笑)。
眺めているうち、先生の(天然・変人)発言をいくつか書いてみたくなりました。
よろしければ、お暇つぶしにどうぞ。
《ある日》
質問があります、と、講義の最後に寄ってゆくとある学生A。
以下、会話の一部を抜粋。
A 「(質問が終わって)ありがとうございました、先生」
草仁 「いえいえ。またいつでも聞いて下さい」
A 「えーと。ほんならもう一つ、質問いいですか?(上目遣い気味でそれとなく近付きながら)」
草仁 「ああ、どうぞ」
A 「この後お昼ですけど、草仁先生、いつもお昼はどうされているんですか?」
草仁 「昼飯ですか?(何故そんなことを訊くのか、彼は内心首をひねる)昼飯は弁当作って持って来てますんで(ここでA嬢、ややひるむ。弁当男子はヒトによってはポイント高いが、A嬢はメンドウに思うタイプ)、控え室でそれ食って、コチラの教授と打ち合わせ済んだら自分の大学へ帰る予定です。ああ、コチラでは書道の講師を務めてますけど、本来ボクは恵杏大のバイオ科に籍、置いてますからね」
A 「えー!草仁先生、恵杏大でバイオの研究員やってらっしゃるんですかぁ?すごーい!」
草仁 「いえいえ。今のところは樹木医目指してる、しがないオーバードクターですよ」
A 「(は?ジュモク、イ?バイオじゃないの?)えーと、主に何の研究なさってるんですかぁ?」
草仁 「(よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりの目になり)ボクは今、主に土の団粒構造について……そこで陽イオン交換容量を高める為に……(専門的になり過ぎ、Aをはじめ国文学科の学生にはちんぷんかんぷんな話を始める)」
A 「(引きつりつつ)そ、そうなんですかぁ。ナンかすご過ぎて、よくわからないですぅ……」
A嬢、退散。
《ある日》
Aとは別の学生Bが出来上がった課題を手に、それとなく草仁に近付く。
B 「先生、出来ました」
草仁 「お預かりしましょう。……そう言えばBさん、いつもいい香りですけど、つけてはる香水とかコロンとか、何です?」
B 「(高い声になり)いやあ、センセイ。そんなコト訊いてどないしはるんです?彼女さんにプレゼントとかですかァ?」
草仁 「ああいや、スミマセン。この香りに近い香水で、アレルギー起こしてかぶれた知人がいるんです(B嬢、微妙な顔になる)。まあこういうのんはヒトによりますし、その時の体調にもよりますからナンともいえませんけど。でも、こういうのん使う場合はパッチテストしはってから使う方がエエとは思いますよ。紫外線当たったらかぶれる場合もありますから、ようよう気ィ付けはった方が……」
B 「あ……はあ」(思い切り引いている)
《ある日》
AやBとは違うタイプの、世話焼き女子風の学生Cが、課題の添削をしてもらった後、軽い雑談。
C 「……そうや。先生、料理お好きなんですか?お昼はいつもご自分でお弁当作ってるって噂、聞きましたけど」
(C嬢から、私も料理けっこう好きなんですよ、気が合いますよね♪オーラが出ている)
草仁 「うええっ。そんなウワサが流れてるんですかァ?いやあ、好きとかナントカゆうんやなくて、まあ必要にかられてって感じですけどねえ。そもそもビンボーですから自炊せんと。書道の方の仕事で何とか食っていってますけど、赤貧ってヤツです」
C 「えー。いつもオシャレなお弁当だって聞きましたよ?」
草仁 「そうですか?普通の弁当ですよ」
C 「ちなみに今日のお弁当は?」
草仁 「あー、適当ですよ。強いて言うたらクレープのラップサンドってヤツですか?」
C 「……え?」
草仁 「いや米買い忘れて切らしましてね。小麦粉とたまご、牛乳はあったんで。朝飯と昼飯用にクレープ焼いて、具になるモン、野菜とかツナ缶とか適当にチャチャッと用意して包むだけですから、適当もエエとこです。昨日の晩飯の鶏肉の照り焼きも残ってたんで、ソレも包んで。まあそんな感じですから、オシャレもへったくれもない、適当料理です」
C 「いやそれ……サラッとクレープ焼くとかレベル高いですよ、先生(それに、晩ごはんに鶏の照り焼き?ア、市販のお惣菜かも?ウンウンきっとそう)」
草仁 「うーん、クレープって言うたらナンカ大層ですけど。要は小麦粉で皮、作って。それでオカズになるモン適当に巻くだけですからねえ。一番メンドくさいのは皮を焼く時だけで。ゆっくり焼かんと焦げますし」
C 「……はあ。やっぱり先生、料理男子ですね」
(C嬢はソコソコ料理に自信があったので、胃袋をつかむ戦略を考えていた。マサカ若い男性が、日常でサラッと、手慣れた感じでクレープを焼いているとまでは思っていなかったので、若干引いている)
草仁 「うー、よんどころなくですけど。料理男子っちゅうような、優雅なモンやないですよ」
(C嬢、それなら『教えを乞う』スタンスへ作戦変更しようかと目論み始める。しかし草仁は飄々とこう続ける)
草仁 「要するに、食材無駄にしたらカネがもったいないんで、なんとか使い回そうとしてるうちにレパートリー増えてきたっちゅうか。主婦の方とおんなじようなモンです」
C 「あ……ソウナンデスカ」
(C嬢、『主婦』というワードに毒気を抜かれ、カタコトっぽくなる)
その他にも、なんとなくボディタッチの多い学生に
『◎さん、コッチに体、もたれ気味ですけど。ひょっとして体調悪いんですか?』
と、真顔で心配したり。
好きな女性のタイプを訊かれ
『う~ん、あんまり考えたことないですねえ。好きになったヒトがタイプです』
と、あしらう為に誤魔化して言っているのでなく、芯からマジメに、真顔でそう答えて脱力させたり。
いろいろ、やらかして?います(笑)。
まあ、こんな調子ですから。
教え子の学生とヤヤコシイことを起こすタイプではないので、ある意味安心・安全な講師のにーさんです(笑)。
阿佐田さんのように恋する乙女の目で見れば、そのボケっぷりも可愛かったり孤高の樹のように気高く感じたり……でしょうが。
一般的に言うのなら、馬鹿、な男ですよね(笑)。




