ヌーメソ
午前2時。真っ黒い人型のナニかが、ユラリユラリと歩いている。
「ヌーメソ~。ヌ~メソ~。ヌーメソはいらんかね~」
ヌーメソ?ヌーメソとは何であろうか?ヌーっとしたメソ?ヌー?メソ?
ヌーメソという不思議な響きに、まるで蛾が灯りに引き寄せられるかの様にふらふらと人型の黒いモノへと近づいた。
近くに行って見るとそいつは2メートル以上の高さで、街灯の光を浴びてなお真っ黒だった。
「ヌ~メソ~、ヌ~メソはいらんかね~」
「失礼。ヌーメソというのは、どんなモノですか?」
「ヌヌッ、ヌーメソを知らんのかね?」
真っ黒なヒトガタは、ぶるぶると震えながら恐るべきはやさで巨大化した。
「ヌーメソとは、何でせう?」
「こここ、これだ」
私は二百三十八円支払い、ヌーメソを購入した。ヒトガタは真っ黒なまま東京タワーほどの高さになり、山の方へと歩み去った。
もはやヌーメソ無しでは、生きてゆけない様に思う。