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第17話 壮大に恋は始まらない

「ルイス様ぁ」


「この格好をしている時にその名で呼ばないでくれ。……何だい?」


「《《恋》》って、何なんですかね」


 聞いた途端、隣から盛大に咳き込む声が聞こえた。


「大丈夫ですか?汗が冷えちゃいましたかね」


「誰のせいだと!?……君ね、あんなに散々シャーロットに愛を叫んだり、後2年でライアン殿下以外の婚約者を見つけてみせると豪語して置きながら今更そこを聞くのかい?」 


「だって私恋したことないですもん!」


「ーっ!?嘘、だろ…………?」


 何故か胸を押さえて絶句したルイス様を他所に私は考える。


 今、目の前で恋に堕ちて現在進行形でイチャイチャしているブレイズとミシェルを見て痛感した。私は確かにシャーロット様が大好きだ。でも、それは素敵な同性への憧れだ。

 また、ライアン王子やブレイズにミシェル、まだ会ってはないけど他のゲームキャラの皆も好きだ。でもそれはあくまでオタク的な……要はファン心理であって、さっきブレイズがミシェルに言ったみたいな『ずっと一緒に居たい』的な情熱的な感情じゃないのだ。

 そこから導き出される答えは唯ひとつ。


(あれ?私、乙女ゲームのヒロインとしてってか、女のコとして終わってない?)


 と、言うことである。


「…………君が女性として終わっているのなんて実に今更な事だろう」


「うわぁぁぁんっ!辛辣!!毒舌!ルイス様の腹黒!!!乙女ゲームの中性的な追加キャラは大抵腹黒って相場が決まってるんだ!!!」


 何故かさっきまでより格段に冷たい眼差しになったルイス様に冷ややかに言い切られてその場にしゃがみ込む。『行儀が……』と言いかけてからため息をついたルイス様が、目の前にしゃがみ込む気配がした。


「つまりミーシャ嬢は、女性として男性に心を揺さぶられる心理がわからないと?」


 呆れを滲ませたその問いに頷く。思えばこう、ドキドキしたりヤキモチ妬いたり、あとキュンって胸が痛くなったり?したこと生まれてこの方無いもんな。


 素直に頷いた途端、ルイス様の綺麗な手が私の頬に触れた。そのまま顔を上げさせられて、数cmの距離で見つめ合う形になる。


「ーー……どう?」


「いや、女装したままこんな事をされましても……」


「……っ、そうだ。今《《シャーロット》》なんだった……!」


「あ、でも本物のシャーロット様だったらあまりの美しさにドキドキしたかも知れませんね!あいたぁっ!」


 グッと親指を立てた私の額をルイス様の平手がパシーンっと叩いた。


「もーっ、何するんですか!私顔しか取り柄ないのに!!」


「自分でそれを言うのか……」


 呆れた様にため息を零すその横顔を間近で覗き込む。うん、綺麗だな、とか、格好いいなとは思うけど。


「ルイス様にドキドキする事は今の所無さげかなー……」


「ーっ!?」


 シャーロット様が前に男装してくれたときはあんなにときめいたのにな。顔は同じなのに、不思議。


「あ、私協力してくれた皆にブレイズ様とミシェル様の婚約が決まったこと報告しなきゃなんで先帰りますね!今夜は向こうに泊めて貰うのでルイス様はあの部屋ゆっくり使ってください!じゃあおやすみなさーいっ!」


 今回の騒ぎは初恋すら知らない癖に自分の利害で他の人を巻き込もうとしたのが悪かったのだ。ルイス様のお陰で丸く収まったとは言え反省しなきゃ。とりあえず、今後は他の攻略キャラにもアプローチはせず、ライアン王子に考え直して貰うか本気で好きになれる相手を探すことにしよう。

 まぁあれだ、恋はするより墜ちるものってやつですな!きっと焦らずともこれからご縁があるよね!!









「こちらが下手に出ていれば、随分と言いたい放題言ってくれるじゃないか…………!」 


 ぐしゃりと乱雑にかき上げた髪からリボンを引き抜けば、金糸の髪が月明かりの下ふわりと舞った。が、その主は幻想的な雰囲気に似つかわしくないどす黒いオーラを放ち今しがたミーシャが走り去っていった方角を見据えている。


「見てろよ、あの女。こうなったら絶対堕としてやる…………!」


 ブレイズとミシェルは完全に二人の世界に入っており、更に止める間もなくミーシャが走り去った後。一人取り残されたルイスは、女装しているのも忘れ地声で呟いた。


 そう、この男、実は生まれてこの方女装で生きてきた為に女性へのアプローチのし方にも、自分自身の恋愛感情にも尋常じゃなく鈍いのである。


 斯くして、図らずも隠しキャラ・ルイス対おこちゃまポンコツヒロイン・ミーシャによる恋の駆け引きが、壮大に始まったり始まらなかったりするのだった。










「……シャーロット様は何をお一人で燃えていらっしゃるんだ?決闘の際はあんなにも冷静沈着であらせられたのに」


「ふむ、見ている方角からしてまたミーシャ嬢に振り回されていると見た!だが俺からして見るとシャーロット嬢は振り回される事も含めミーシャ嬢と過ごす事を楽しんでいるように見えるがな!」


「そうか?私にはそうは見えんが……」


 ミシェルはそう苦笑し、身なりを整えシャーロットに声をかける。


「シャーロット様、お時間よろしいだろうか?」


「ーっ!えぇ、構いませんわ。いかがなさいまして?」


 一瞬で気を取り直し“シャーロット”になったルイスに、ミシェルとブレイズは改めて深く深く頭を垂れる。話を聞くに、此度の彼等からシャーロットへの数々の無礼の謝罪の意として両家が保有している宝具の中から好きなものを献上したいと言う。

 最上位と言っていい身分の令嬢に対してあれだけ好き放題したのだ、いくら当人が気にしていなくともお咎めなしには出来ないだろう。そう判断して彼等の提案を飲んだルイスは、魔法付与された短剣とチョーカーを貰い受け二人と別れたのだった。


「……おや?」


「どうした?ブレイズ」


「いや、帳簿の記載と実際の在庫が少々合わなくてな」


「何だと?」


 両親へ何をシャーロットに贈ったのか報告すべく管理帳簿に目を通していたブレイズの発見にミシェルも眉を潜めその表を覗き込んだ。ずれているのはどうやら宝具ではなく、学園に有志で貸し出したりしている価値が高くない武器類の欄の様だ。


「いかんせん数の多い取引だし、破損や欠品でズレが起こっても不思議はないのかも知れないが……」


 とは言え、こんなことは今回が初めてだ。何とも言えない違和感を抱えた二人は顔を見合わせ、報告の為にライアン宛に文を認めるのだった。



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