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第18列車 降格。


翌朝、私たちの見込み通り台風は未明に駿河湾から静岡県に再上陸。

速度そのままで関東地方に台風の眼を通す形で接近していた。


東海道新幹線の全区間と山陽新幹線の広島~新大阪駅間、東京を発着する同じ新幹線、東北・上越新幹線と秋田・北陸長野・山形新幹線は始発から運転を見合わせている。

九州新幹線は、架線に飛来物が付着。断線が発生しこちらも始発から全区間で運転が取りやめになるい様な状況となっていた。



…仮眠室窓がガタガタと大きな音を立て、時々石ころでもあたったかのような大きな雨粒の音が部屋の中を貫いていく。


午前6時。

アラームとともにベッドの起床装置が膨らむ。

湾曲する身体にすぐ苦しくなり、嫌な感じで皐月は目を覚ました。

「うぅ…ん…。」

アラームの停止ボタンを手探りで壁伝いに探し、起床装置を停めてやっと目が覚めた。


「んんっ…はぁ…」

背伸びをして、深呼吸をする。この場面のみを切り取るならばただの一人暮らしの女性にしか見えない。

昨日は特に激務だったせいか、今日呼び出しを食らっているのにも関わらずぐっすりと深い眠りについていたようだった。

「…はっ!そうだ、若菜が…」

ふと、悪事を思い出すかのように彼女の名前が脳裏に上がってくる。


嫌気がさしながらも隣の若菜の仮眠室へと向かって、扉を開ければ…

案の定、ベットから転がり落ちて床で爆睡していた。


「はぁぁ~…これじゃ起床装置も役に立たないってわけね…こら、若菜!わ~か~なっ!」

「―…ぐがっ…んにゃ?」

「朝の6時。お呼び出しの時間だぞっ」

「むにゃあぁ~…ウチは西にほぉんの雇者だがぁらカンケーなぁいしぃ~~…」

「…ほら、宇宙語喋ってないで、とっととシャワー浴びるよ!」



===       ===       ===       ===



結局、私たち二人は運輸課や新幹線総合指令だけでなく会社からも大目玉を食らう羽目になった。

特に西日本が車両を管轄している500系新幹線(しかも東海道新幹線ではもう走らないと宣告された車両)を無理やり臨時運行に出した若菜とそれを承諾した西日本会社は社内全体でも賛否両論の大問題となっていた。


「えぇ。…でも、反省はしてまへん。」


私と同じくして運輸・指令長から厳重注意を受けている若菜は、ずっと乗客思いで「反省はしてません」の頑固な一点張りだった。


「あんた方社員は、会社とお客さん…どっちが大事なんや?」


雰囲気的には火に油…ではなく大火災に燃料を大量に注ぐような発言だったが、''お偉いさん''もそれを口に出されると何も口を開けなくなり、沈黙の時間が続くばっかりだった。



―私は東海会社の元処分が下されることになった。

2週間。地上業務への降格。

若菜は天候が回復し次第最速で西日本会社へ戻され、その場で厳重注意が下されることになった。

私もこればかりは「現代社会の闇だなぁ…」と思ったが決して口には出さなかった。

しかし、会社がなんと言おうとお客様を到着地まで運ぶのが私たちの義務なのだから、それ以上何も私は反論しなかった。

X-RAYは、私が運転業務に復帰するまでは再び試運転列車のみ運行とされ、再度客室に測定機器を搭載して事実上放置されることとなった(勿論、積んだからにはしばらく試運転業務になっちゃんだろうけど)。


≪―…続きまして鉄道の情報です。東京駅を発着する新幹線は、午前8時現在 全区間上下線で運転を見合わせています。≫

≪―東海道新幹線は始発の列車から先日の予告通り全ての運転を取りやめており、直通する山陽新幹線は新大阪~広島駅間の上下線で…≫


「大阪が心配やなぁ…」

そう不安げにテレビを見つめて話す若菜に

「大丈夫だよ、きっと。」

と私は背中を押した。






台風。


彼は後に、私たちの住むこの土地だけでなく、私たちにも明らかな被害を与えていた。



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