その2
ゴゴゴゴ…
重い音をたて、玉座へ続く大扉がゆっくりと開きます。
その大扉の向こう。
逆光の中に、それはそれは美しい隣国の王子がナチュラルにたたずんでいました。
煌びやかな甲冑を身にまとい、王族の紋章がついた兜を脇に携え、甲冑よりキラキラと光る金髪をなびかせ、真紅の絨毯を堂々と踏みつつ、王様と王妃様の元へまっすぐに進んで来ます。
「おお、王子。よく来てくれた。」
さっきまで嫁にブツブツ言ってた様子はどこへやら。
王様は堂々と、王族らしい風格を漂わせつつ王子をねぎらいます。
王子は玉座の手前まで来ると頭を少しだけ下げ、王と王妃に形式的な挨拶をしました。
「本日はお招きいただき光栄です」とか「今日は我々の未来を指し示すかのような素晴らしい天気で」とかそういうのです。
一通り挨拶が終わり、頃合を見計らって王が言いました。
「えー…。では、姫を呼ぼう。」
王は側近に目配せし、姫を呼んで来るように促しました。
***
姫は、黒くてゴワゴワした長い髪を何とか美しくまとめあげ、金のティアラと白い花を飾りました。
「さ!姫様、完璧です!いってらっしゃいまし!」
姫様は完璧でした。
完璧にアメリカバイソンの頭にティアラがちんまり乗っているようにしか見えませんでした。
しかし、メイドはウットリと姫様を見ています。
メイドに励まされ、姫の顔に気合が入りました。
「…行ってくるわ…!」
「はい!姫様!」
姫はメイドに見送られ、王族と側近のみが通れる長い廊下を歩き、玉座へ出ました。
***
「姫様の、おなーりー!」
近衛が時代劇がかった大きな声で告げました。
ラッパが鳴ります。
パッパラ パッパッ パーン!
玉座のすそにある緞帳みたいな真紅のカーテンがジャー!っとひかれ、姫が登場しました。
………
奇妙な空気。
静かなる、間。
王子は今まで、このように妙な生き物を見たことがありませんでした。
まず、全体のシルエットが妙でした。
その生き物は、王族らしい…洗練された質素なデザインではあるが、素材や装飾は超一級品な…ドレスを身にまとっています。
しかしバランスが変なのです。
おそらく胴がとても長いのでしょう、胸の位置とウエストのバランスがちぐはぐです。
また、腕も短い気がしました。
そして何より、頭が大きい気がしました。
なんとなく見るのを避けていた顔らしき部分に、ゆっくりと目をやると、そこには…
「こっ、これは…!!」
王子は絶句しました。
一瞬
「これは何の余興ですか?街へサーカス団が来たのですか?」
と言いそうになりましたが我慢できました。
万が一「これ」が姫だった場合、迂闊な一言のせいで戦争になってしまうかもしれません。
王子は王族として、メンタル面もよく鍛えられておりました。
「ああ、姫。こちらが隣国の王子だ」
王は横目で王子の反応をチラ見しつつ、姫を促します。
「さあ、ご挨拶をおし」
姫はモジモジと王子に近寄り、名乗りました。
王子は何とも言えない、微妙な表情をしています。
変な“間”を置いて王子は一歩、足を踏み出しました。
***
つづく