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1、召喚

50歳のおっさん・海斗修 娘に会うために、異世界転移を決意する。

おっさんでも、冒険は出来るはず・・

今日も1日が終わった、ただ、生きているだけ・・

1年前のあの日で、俺の時は止まったままだな。

俺の名前は、海斗修(カイト シュウ) 50歳のおっさんだ、

1年前までは、どこにでもいる普通のサラリーマンだった。

あの日が来るまでは・・


俺には娘がいた、香織という名前だった。

1年前、俺は、娘を死なせてしまった・・

香織の母親・由貴は香織を生む時に出産の無理がたたって死んだ。

大学の同級生で、大学時に学生結婚し、14年目に出来た子供だった。

病弱な由貴にやっと出来た子供だった。俺は心配で、生むのを諦めるように言ったけど、

由貴は、「貴方との子供よ、大丈夫心配しないで、絶対生むわ」

だけど、由貴は逝ってしまった。

香織を残して・・


無我夢中で育てた18年間。

高校を卒業し、お祝いに2人で、フレンチの美味しいレストランに行った。

嬉しくて、ワインを2人で飲んだ。

何故、車を運転したんだ・・いつもなら飲んだらしないのに。

ふっと意識が飛んだ時、気が付くと病院のベッドの上だった。

「ここは何処だ? 香織は?」

俺のせいで、娘は死んだ・・かけがえのない娘を。

なぜ、俺が生き残って、香織なんだ。


葬儀の時、俺は泣かなかった。本当に悲しいと涙って出ないものなんだな。

時間が戻せるのなら、戻したい

あれから、俺は何度も死のうと思ったけど、死ねなかった。

死ぬのが怖いのか、娘を殺したくせに、本当、身勝手な奴だな。

それも今日で終わりだ、香織が死んだこの日、俺も逝くよ。

ごめんな、こんな弱い親で・・俺は用意していた睡眠薬を飲んだ。

会えたらいいな・・香織・・由貴・・・

俺の意識は、混沌の中へと沈み込んだ。


「ここは、何処だ?」

ふと気が付くと、真っ暗な世界、何も見えない、聴こえない。

「俺は死んだのか?」

「ここは死後の世界なのか?」

身体に実感が無い、フワフワとしていて、重みが感じられない。

まるで、幽体分離しているみたいだ。

すると、遠くの方に、一筋の光が見えた。ゆっくりとこちらに近づいてくる。

光の中から出てきた姿は、香織だった。

「香織なのか、俺は香織に会えたのか?」

香織と思った人影は、こう言った。


「異世界より来られし異邦人よ、私の名は、ジュウェルの神・テネブリス、

今、汝が見る姿は、汝が強く思う者の姿なり」


「意味が分からないのだが、ここは、何処だ、香織ではないのか? あの世ではないのか?」


「ここは、海人修が居た世界と我が世界を繋ぐ回廊の狭間だ」


「テネブリスと言ったが、なぜ、俺の名前を知っている?」


「私が貴方を召喚した時、貴方の全てが、私の中に入って来た」

「貴方が死のうとした理由も分かっている」


「お前は香織ではないのだな、俺は死んでいるのか?」


「貴方は、まだ死んでいない。死ぬ前に、私に召喚されたのだ。 精神体としてだが」


「精神体?なんだそれは」


「貴方の身体は、地球と言うのか、そちらにまだある。貴方の精神体だけを召喚したのだよ」

「そして、貴方に提案がある、私の願いを聞いてくれるなら、再び、娘と会うことが叶うかもしれない。海斗修よ、汝は我の願いを聞き届けるか?」


「・・もし、それが本当ならば、俺は何でもするよ、香織に会えるのなら、何だってやってやる、神と言ったが、それは、本当なのか?俺は、香織に会えるのか?」


「海斗修よ落ち着け、確実ではないが、それでも望みはあるのだよ」

「私・テネブリスとアマールは、ジュウェルの守護神なり、ある日、アマールが突然、姿を消した、海斗修よ、私の半身・アマールを探して欲しいのだ」


「テネブリスと言ったな、何故、貴方は自分で探さないのか?」


「アマールが居ない今、私は、このジュウェルを支えるので精一杯なのだ」

「もしアマールを見つけてくれたなら、貴方を元の世界の悔やんでいた時間に戻してあげることが出来るのだよ」


「本当に、そんな事ができるのか?」


「出来る、私とアマールが一緒ならばね、時の宝珠という神木を使用すれば可能だよ」


「分かった、俺はどうすればいい」


「ジュウェルには、4つの国がある。」

「エルフの国・メディオクリス」

「魔物の国・ルピティス」

「人族の国・チャオ」

「暗黒の国・スペロ」

「この4つの国には、神に祈りを捧げる祭壇があった。

だが、アマールが居ない今、民達は、信仰を忘れ、祭壇も消えている。

きっと、アマールは、この祭壇のどこかにいるはずだ。

海斗修よ、アマールを探しておくれ、時間はあまりない、貴方にもね。」


「それはどういう意味なんだ?」


「ジュウェルに召喚されるのは、精神体だよ、身体は以前と同じように他からは見えるが、

時間が経つにつれて、精神がジュウェルに吸着されていき、実体化してしまう。

そうなれば、貴方は、もう、地球には帰れなくなる」


「本当に香織に会えるのなら、だが、俺は普通のおっさんだぞ、出来るのか?」


「貴方には、私の神木 コンフェシオの一部を与えよう」

「コンフェシオは、自分が思っているものに変化できる、剣や弓、好きなものにね」

「精神体である貴方は、ジュウェルの法則に左右されない、飛ぶことはできないが、

地球に居た時よりは、動けるはずだよ」

「それと、貴方には旅の仲間を与えよう」

「まず、最初に、エルフの国 メディオクリスに行くのだ、

 そこには、ミスセンテスのルトとセレティスという妖精がいる」

「その者達と、旅をするのだ。祭壇へと導いてくれるだろう」

「もう時間がない、最後にもう一度問う、海斗修よ、アマールを見つけてくれるか?」


「テネブリスと言ったな、貴方が神であろうが、そうでなかろうが、そんなことはどうでもいいんだ」

「香織に、本当に会えるのなら、俺はやるよ。嘘じゃないんだな」


「私は神だ、嘘はつかない。」

「アマールが見つかれば、約束しよう」

「時間が来たようだ、海斗修・・頼んだぞ」


そう言うと、香織だった人影は姿を消し、俺の意識も薄れていった。


「海斗修よ、私は神だ。嘘は言わない、だが、真実も言わない。

 私は、ただ、アマールに会いたいのだよ」


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