11、激突
ユン、ユン、もう直ぐだ
リーンは、自分の馬を必至で走らせた、ユンの居る村へ。
村に近づくと、黒い煙が上がっていた。
「いったい、何があった まだ、獣人族は来ていないはずだが」
リーンが村に着くと、村は燃えており、何かの襲撃があった跡だった。
リーンは、無我夢中で、村中を探し回った。
だが、人は誰も倒れていない、誰ひとりとして居なかった。
「これだけ燃えているということは、まだ、そんなに時間は経っていないはずだ、なのに、何故、誰も居ない ユンは、ユンはどこだ」
リーンは、燃えているユンの家の前で、唯一人、立ち尽くしていた。
リーンの後ろに、黒い靄が現れると、そこにローブを纏ったルブラムが現れた。
「お前はそこで何をしている? その服は西の砦のものだな」
リーンは、振り返り、
「貴方は、誰ですか?」
「確かに私は、西の砦の者でした、だが、もう砦はないでしょう」
「それより、この村の者たち、ユンはどうなったんですか?」
「何か知っていますか? ユンは、俺の婚約者だ」
「危険を知らせに来たのに、何故、誰も居ないのですか」
ルブラムは、
「そうか、お前はこの村の出身か」
「ここは、獣人族の鳥人達に襲われたようだな」
「たぶん、村の人間は誰も生きていまい、誰もな」
「獣人たちは、食料として人を喰らうのだよ」
「そんな・・食料だって・・そんな馬鹿な話があるか」
リーンは、叫びながらその場にうずくまった。
何故だ、何故だ、俺は同僚を殺し、伝えるべき村を見捨てて、ここまで来たんだぞ。
それが、獣人の食料だと。
「ふざけるな!!」
リーンは、涙を流しながら、絶叫した。
くそ、殺してやる、殺してやる、殺してやる、獣人ども、俺のユンを喰らっただと
俺も、お前たちを喰らってやる、ふざけるな、ふざけるな・・
リーンの身体に黒い靄が、纏わりつきだした。
それを見ていたルブラムは、
ほお~、これは拾い物かもしれぬ。この黒の瘴気、これなら混合できるな。
「お前、名をなんと言う 己が望むなら、復讐できる力を与えることができるぞ、但し、人ではなくなるがな」
リーンは、ルブラムを凝視すると、
「もう、俺には何もない 力をくれるというのなら、人だろうが、人でなかろうが、
どうでもいい 俺の名はリーンと言った」
「リーンよ、私の名は、ルブラム マルーン宰相の側近だ 我について参れ」
そう言うと、ルブラムは、リーンの横に行き、
そのマントで、リーンを覆い、呪文を唱えた。
ルブラムとリーンは、2人とも黒い靄となって、その場から消え去った。
ここは、首都マグナから西へ100kほどにある、大平原。
そこに、マグナ第1部隊長 バニタス率いる人族の軍が、布陣していた。
陣形は、歩兵は、陣形は魚燐形、最前線には、その漢バニスタ率いる精鋭10,000、その後ろには、予備兵20,000
両側には、それぞれ騎馬隊2,000ずつが、遊軍として、馬を走らせている。
「グリセオ、予備兵は当てにするな、我が兵とは、精度がちがう」
バニスタは、副官のグリセオに呟いた。
「隊長、分かっております 後方支援にすべて配置しております
しかし、何故、マルーン宰相殿は、隊長の部隊だけの出陣を認めなかったのでしょうか?」
「我が部隊だけの方が、機動性も良く戦えると思うのですが・・更に、魔術兵も加わっておりません」
「グリセオ、何も言うな 我々、兵士は、与えられた事で、最善を尽くすのみ」
「は、仰せのままに」
その時、物見の兵が戻ってきた。
「ただ今、偵察より戻りました 獣人族は、およそ30,000程かと、ダイヤモンド陣形で向かって来ております。先頭は狼族、その後ろが、馬族、熊族など、ほぼ全ての獣人族が行進しております」
「グリセオ、先頭は私と、精鋭部隊300で当たる」
「後ろの指揮は任せたぞ 騎馬隊は、とにかく動き回れ、機動性がすべてだ」
バニスタは、そう言うと、自分の大剣を抜いた。
前方より、地響きと獣の声が聞こえてきた。
先頭は狼族たち、少し遅れて、馬族や熊族達が続いていた。
「よし、いくぞ」
バニスタ率いる精鋭300の騎馬が、狼族に向かって走り出す。
副官グリセオは、
歩兵はそのまま押し出すぞ、盾3陣と、長槍の準備。
予備兵は、盾に3人で当たれ、押し返されるなよ。
騎馬隊は、動き回りながら、敵を搖動しろ。
後方部隊に、適切な指示をだしていた。
狼族とバニスタ精鋭300は、激突した。
バニスタの大剣は、一振りするごとに、狼族を葬っていく。
精鋭300も良く善戦はしていたが、バニスタ程の力はなく、その数を減らしていった。
後方の馬、熊、虎、豹族などが、この戦いに加わる。
もちろん、バニスタ軍歩兵10,000も加わり、大激突となった。
当初は互角であっても、その身体能力の差は大きく、
徐々に兵力を減らしていくバニスタ軍。
バニスタは、
「俺に付いてこい この奥に族長がいるはずだ それを倒すしかない」
そう言いながら、馬を獣人族達の奥へ向けて走らせ始めた。
「隊長をお守りしろ」
そう言いながら、その数100程となった、精鋭部隊は、バニスタの盾となり、
その命を散らしていった。
狼族を蹴散らした後、獣人族の中程に、ポッカリと空いた空間、そこに奴はいた。
獣人族の王、豹人のパラダス。
四角い輿の上に、真っ赤なREX(茨の冠)を被り、腕を組み、座っていた。
カッと目を開けると、バニスタに向かって、
「人族の割には良くやるが、まあ、ここまでたどり着いたということで、
我が相手をしてやろう」
「私は、人族の街 マグナの1番隊隊長 バニスタ!」
そう言うと、バニスタは、馬から降り、バラダスの前に立った。
バラダスは、サッと輿から飛び降り、バニスタの前に立った。
2人の周りには、バニスタ精鋭隊の生き残り数人と、多種多様な獣人たちが、
丸い円となって取り囲んだ。
バニスタは、大剣を自分の前で上段に構えた。
バラダスは、バニスタの前から、少しづつゆっくりと近づいていく。
1歩1歩、ゆっくりと・・
ある一線を越えた時、バニスタは予備動作なく大剣を振り、力強く踏み込んだ。
2Mの巨躯でありながら、大剣を持ちながらのこの速さ
普通の者であれば、反応出来ないほどの速さ
赤い稲妻と呼ばれるのは、このバニスタの大剣の速さ故であった。
だが、バラダスは普通の者ではない、獣人であり、しかも、REXによって力の底上げまでされていた。
バラダスは、その大剣を紙一重でかわすと、爪が刀のように伸びた腕で、バラダスの胸を貫いた。真っ赤な血しぶきがあがり、更に、バラダスは、背が2mはあろうかというバニスタの首に飛びつき、首ごと噛み千切った。
そこには、首がなく、胸に穴の開いた、バニスタだった物が居た。
バラダスの目は爛々と輝き、バニスタの頭を租借した。
「やはり、人族か この程度とは」
「進撃を開始せよ」
バラダスの言葉と共に、獣人族達は進撃を開始した。
予備兵2万は、ほぼ何もせずに、敗走した。
副官グリセオは良く戦ったが、身体能力、数の差はどうしようもなく、自分を犠牲にして、バニスタ騎馬隊2,000を逃がすのがやっとだった。
ここに、赤い稲妻と呼ばれた、マグナ第1守備隊は消滅した。
俺は、今、必至に逃げてる。
バルチャーム姫を両手で抱えながら、姫の左肩には矢が刺さったままだ。
何故、こうなったかというと、帰還している東の守備隊の兵に見つかったからだ。
いきなり矢の大群が降ってきた、ルトが土壁で防いだが、その内の1本が姫さんに当たってしまった。しかも、毒矢っぽいんだ、刺さったところが、紫色になってきている。
もう少し行くと森林だ、森林に入ってしまえば、なんとかなる。
しかし、追いかけてくる馬の足音は大きくなっている、このままだと森林に入る前に、
追いつかれそうだ。
「ルト、なんか攻撃魔法ってないのか、このままじゃ追いつかれる」
俺たちの上を飛んでいる、ルトは、セレティスを見た。
セレティスは頷いた。
「シュウ、セレティスが火と風の魔法使えるけど、使った後3日は寝たままだよ、それでもよいなら放てるよ」
「わかった、寝たら、俺が担いでやるよ」
「とにかく、あの騎馬隊をどうにかしないと、姫さんの治療もできないだろう」
「わかった、シュウ セレティスお願い」
セレティスは、その場で方向転換し、迫ってくる騎馬隊の方に向かい両手を突き出した。
セレティスの目は、金色に輝き、風が渦を巻き、そして、炎が起こり、風と一緒に、
大きなうねりとして、騎馬隊の方へ向かっていった。
嵐の様な風がおさまった時、そこは焼け野原となっていた。
「これ、絶対、森の中でやっちゃダメなやつだな」
シュウはそう呟いた。
その時、セレティスがひらひらと落ちてきた。
「シュウ、お願い」
俺は慌てて、セレティスの下へ行き、受け止めた。
セレティスは、目を閉じ、すうすうと寝息を立てていた。
「本当に寝てる、よっぽど力を使い果たしたんだな、ありがとよ、セレティス」
「シュウ、早く森に入って、バルチャーム姫の治療をしなきゃ」
「そうだな、だが、そう上手くはいかないかもな」
「ルト、あの空を飛んでくる奴らはなんだ?」
「え、あれは、獣人の鳥人族だと思うよ」
中々休ませてはくれないもんだな、
「とにかく森の中へ入ろう」
俺たちは、急いで、森の中へと走り出した。
読んで下さり有難うございます・




